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第2話 指パッチン!

 異世界生活2日目。


 ぐぅ〜

 俺は腹が減っていた。


 公園のベンチにボーッと横になっている。

 木で出来ているこのベンチは心地良い。

 化学が発達しても、変わらない物もある。そう、木の温もりだ。


 あぁ、なんたる贅沢。ゴロ寝最高!


 蛇口を捻れば水は飲み放題、おまけにトイレもある。

 此処に居れば大抵のことは出来る。


 しかし腹は減る。唯一の問題は食料だ。どんぐりでもあれば食ってしまうのだが、ない。


 何故こんな生活なのか。

 無一文、身分証なし。


 記録上、俺はこの世界に存在していない事になっている。


 なんと言うか、とってもリアリティのある異世界生活です。

 いきなり現実を突き付けられる。普通、こうだよね。この世界の人間じゃないし。あはは


 一応情報収集も試みた。しかし完全なるペーパーレス。紙媒体の新聞も無ければ図書館すらない。


 そして、今に至る。


 俺は詰んでいた。


 金も情報もない。おまけに腹ペコ。



 俺はなんとなーく遠くに見える山を見つめ消えちまえと思いながら指パッチンした



 パチンッ




 ちゅどーーーーん!





 え、山消えちゃった……。




 ガクガクブルブルガクブル!!


 程度ってもんがあるだろ……

 いや、待て。今さっきの俺か? 俺なのか? 指パッチンしたから……?


 あのビルに移動出来ないかなー


 パチン!シュッ


 うおおお!テレポート成功だ!!

 なるほど。なるほど!



 ……腹ペコ。タダ飯食いてぇなぁ。


 パチン!シュッ。


 試食コーナー!!

「あ、すみません。」

 やばいやばい。突然現れたからみんなポカーンとしてるわ……。



 よぉーし!

 試食じゃないタダ飯!

 パチンッ!シュッ。



 こ、これは!! 炊き出しだ!!

 なんていい世界なんだ!! これがあるのか否かで大体の事はわかる。この世界は素晴らしい!!


 ぐぅ〜。

 腹ペコ腹ペコ!!俺はさっそく列に並ぶ。


「兄ちゃん、整理券あんのか?」

「はい?」

「無いなら、あっちの列だよ」


 ガーーーーン。ま、まぁ良い。食える事は確定しているんだ。焦るな。焦るなよ。



 俺はもう立派な27歳だが、この中に居ると少し目立つようだ。視線が痛い。



「はーい!本日の炊き出しはここまでー!!」


 ……う、嘘だろ……。



「うそでーす!もうちょっと待ってねぇ!順番守らないとダメだぞ〜!」


「よっ!みきちゃん相変わらず!」

「いつものじゃな!」


 一気に場の雰囲気が和む。



 お家芸かよ。俺の心臓はショックで止まり掛けたぞ。笑えない冗談言いやがって!


 でも偉いなぁあの子。しかも可愛い。腹ペコでイラついてたはずなのに、この和んだ空気は不思議と空腹を忘れさせてくれた。



 そして、ついに俺の順番が来る。カレーだ!カレーだ!


「あれ、お兄さん若ぁーい!初めてですよね?」


「あ、はい。は、初めてです!!」

なんかドキドキしちゃうなぁ。



「あはっ!頑張って下さいね!あと、これはおまけです♪」

 そう言うと、お肉だけすくって追加で入れてくれた。その手付きはすごい手慣れていて、ボランティア活動の長さが伺えた。


 天使だ……。いや、女神……。




「やっだ!お兄さん!涙出てますよ」

 ハンカチを差し出される。


「あ、あっ、、」

 安心……だろうか。無意識の涙。わからない。


「おーい早くしてくれー! 腹ペコじゃー!」


「す、すみません」

 俺は逃げるようにその場を去ってしまった。ハンカチも受け取らず、お礼も言えず……。



 はぁ。完全におかしな人じゃん俺。それでも腹は減る。まさに腹ペコの極!


 少し離れた木陰に座り、ガッついた。うめぇ、うめぇよ……。ポロポロと涙が出る。

 追加で入れてくれたお肉は最後まで残した。

 そして、遠くに見えるみきちゃんに頭を下げ、心の中で感謝を伝えながら食べた。




 あ、皿返さないとだ……。

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