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穴を埋める仕事

作者: 砂鳥 二彦

 ある戦で負けた捕虜たちは、とある村に連れてこられてこう言われた。


「君たちには恩赦が与えられた。この村に住みといい。ただし、君たちには新しく川を作る工事をしてもらう。それと、この村より逃げ出した者は国の心遣いを無碍にした罪で処罰される」


 捕虜たちは喜んだ。国には帰れぬと言えど、処刑もされず、まっとうな暮らしを与えられたのだ。


 それから捕虜たちは村で暮らしつつ、渡された設計図を基に川を掘り始めた。軍にいた頃から陣地の構築、城の工事に従事してきた捕虜たちにとっては川を掘ることなぞ朝飯前であった。


 ところが、事態は変わる。


「おい、また出たらしいぞ」


「またか、これで十八度目だぞ。やっぱりここには何かがあるんだ」


 川の工事を始めてから一週間、土はよく掘れ、工事は進んだ。しかし、掘れば掘るたびに、出るのだ。


 土に埋もれた人骨が。


「これは、もしかすると」


 捕虜のリーダー格の男はあることに気がついた。


 それから数か月後、急に国の方から兵士の一団がやってきた。彼らは工事の様子を視察しに来たのだという。


「工事の調子はどうだ」


「ええ、まあ。工事の半分は終わりましたよ」


「うむ。順調だな。それでは工事の続きを始めるがいい」


 兵士たちは普通の国軍の格好であったが、不自然に弓矢を持つ兵士が多い。それに、兵士の中には緊張した面持ちをしている者が多数いた。


「… …」


「どうした。早く工事を始めんか!」


「いや、それはなしだ」


「何っ!」


 捕虜たちは治水のための道具や、道具の鉄を熔かして作った剣や槍の類を持ち。国の兵士に襲い掛かったのであった。


 戦いは数が多く、近接戦闘であったこともあり捕虜たちが勝利した。


「本当に、奴らは俺達を殺して掘った穴に埋めるつもりだったのか」


「今更疑問に思っても遅い。それよりも、早く作業に取り掛かるぞ」


「作業って?」


 生き残った捕虜たちは、殺した国の兵士と殺された捕虜達を治水のために掘った穴の中に放り込んだ。作業は数時間かかったが、夜になる前に終わった。


「これから、どうする?」


「逃げるしかないだろう。それからは、それからは―――」


 捕虜たちはどこに逃げるか、それから先をどうするか、考えていた。すると、村の隅からフードで顔を隠した怪しい男がやってきたのであった。


「誰だっ! 国の追手か!?」


「いやいや。私は国の者ですが、ただの使者です。私は貴方達に感謝しに来たのです」


「感謝だと?」


「実は彼らは国の兵士と言えども、懲罰隊。つまり罪を犯した軍人の集まりだったのです。貴方達が彼らを倒してくれたおかげで、彼らを処罰する手間が省けました。その功績により、あなた方を軍の部隊として養うことを保証しましょう」


「一介の使者であるお前がか? 信用ならん」


「御疑いでしたら、こちらに国王様の信任状があります。当然、王の押印もあります。何なら、あなた方が持てばいい。これさえあれば国のどこにでも行くことができる。不満ですか?」


「… …もしお前を殺して信任状を盗み、逃げ出すようなことがあればどうするつもりだ?」


「それはもったいない。ただ答えるとすれば、その時は懲罰隊か他の捕虜による軍隊があなた方を追いかけるだけです。そう、無残に軍人と使者を殺した罪人としてね」




 そして捕虜たちは軍人となり、働き始めた。その仕事の多くは戦場ではなく、同じ捕虜の働きを身に行く仕事だという。


 仕事の際、彼らはどうしてか、弓矢を多く身に着けていくのだという。

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