FILE1:招待状
FILE1:招待状
桜庭翔大は何か強い衝撃が来たことによって目を覚ました。
「んっ!何すんだよ!」
起きて自分の上を見ると、たっぷり中身の詰まっていそうな旅行用のバッグが置いてあった。
衝撃の正体はこれの様だ。そしてバッグを投げたのは我が憎き兄、直希だ。
「今から出かけるぞ。お前の分まで荷造りしといたんだから感謝しろよ!」
「はっ?出かける?そんなの聞いてねえよ。」
時計を見たらまだAM4:00である。
「うるさい!さっさと着替えろ。」
「はぁ〜。」
こうなったら兄は聞く耳を持たない。
「・・・・・そういえば父さん、母さんは?」
「俺たちとは別の旅行だ。しかも10泊11日。」
なんと身勝手な両親だ。いくらなんでも息子に何も言わず旅行に行くか?
「ほれっ、さっさと着替えろ。」
「うぃ〜っす。」
「そういえば兄貴、どこ行くんだ?」
着替え終わって今は移動中。車の中である。
「無生人島の死見館だ。」
「生きる人のいない島の死を見る館か。グロいな。何でそんな所行くんだよ?」
「招待状が来たんだ。高校の小説研究会に。しかも名前指定で、10枚。」
そういうと兄貴は招待状を見せてくれた。封筒には“小説研究会 桜庭直希様へ”と書かれている。
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招待状
桜庭 直希様へ
この度は突然こんな招待状をお送り、申し訳ございません。
あなたは覚えておいででしょうか?2年前のあの事を。覚えていないなら残念です。
あなたは彼女のことを忘れているのだから。
私はあなたを許さない。絶対に。朱璃の敵は私が討つ。
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短い文でそう書いてあった。
「ねぇ、この朱璃って誰?」
「丹波朱璃は小説研究会の元部長だ。」
「元?」
「あぁ。亡くなったんだ。部室でな。首を吊っての窒息死だった。」
「自殺ってこと?」
「多分な。だけど、あれは俺たちが殺したようなもんなんだ・・・・・・・・・・。」
それっきり兄貴は黙りこくってしまった。見ると運転はしているものの、顔色は悪く若干下を向いている。俺はそれ以上は聞かないことにした。
沈黙が続き数十分。兄貴がようやく口を開いた。
「着いたぞ。」
そこは港だった。兄貴は地図のような紙を見ながら、一つの船に向かって、歩いていく。
「兄貴、無生人島に行ったことあんの?」
「あぁ・・・・・一度な・・・・・・・・・。」
「まぁ、過去の話は終わりにして行こうか。名前と違って、結構快適だぞ。死見館は。」
そうして俺たちは出発した。
殺人劇の幕が上がった。