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プロローグ2

第二部『ワライ編』開始です

この第二部から主人公複数のタグが意味を持ちはじめます

 十年前。今よりも悪霊との戦いが苛烈だったころまで話は遡る。



 当時、人々には不満が溜まっていた。それはなぜか。その理由は祓い師たちが悪霊を殺す術を独占し、非祓い師である自分たちをあからさまに見下していたからだ。商品をタダ同然にまで値下げさせられ、男も女も問わずに彼らの性欲の発散対象にされ、祓い師の偉大さが分かっていないと題してストレス発散代わりに暴力を振るう。そんな祓い師たちに人々は嫌気が差していた。

 しかし、それを口にできる者はいなかった。そんなことを言えば、家族から友人知人まで親しくしている相手ごと皆殺しにされかれないからだ。友人知人はともかく血を分けた肉親を巻き込んでしまっては申し訳が立たない。人々は耐えるしかなかった。どんなに強く弾圧されたとしても堪えるしかなかった。



 そうしなければ、殺される。犯される。奪われる。壊される。



 そんなことに耐えられるほど人々の心は強くなかった。

 だから、黙っていた。八つ当たりで家族や友人が傷つけられているとしても黙って見ていることしかできなかった。自分の身が一番かわいいからだ。

 たまに、他人の方が大事だという風変わりな人間がいたが、そんな人間も結局は物言わぬ人形と成り果てた。

 救いなどどこにもなかったのだ。権力も治安も司法も全てが祓い師に握られていた。それも一つや二つの国ではない。五つの国全てが祓い師によって支配されていた。実質的に地球(この星)は祓い師の所有物と同義だった。

 そんな状態で誰が反逆などできようか。相手がただ単に権力を持っているだけの大物なら牙をむくこともできただろう。相手がただ単に軍事力を持っているだけの大物なら刃向かうこともできただろう。相手がただ単に司法を思うがままにしているだけなら言論という名の刃を向けることもできただろう。仮にその三つ全てを持っている独裁者が相手だったとしても革命で民衆の力を向けることもできただろう。

 だが、そのいずれもが祓い師(彼ら)の前では無意味だった。絶望的とも呼べる祓い師と非祓い師の実力差。その決定的な差は呪力を扱えるかどうかだった。

 呪力は何でもできる。もちろん人によって限界の上下はあるが、その言葉に偽りはない。つまり、呪力を扱う術のない非祓い師ではどんな手を使っても潰されてしまうということだ。

 武力も言論も謀略も意味を持たない。全て計画ごと潰される。そんなことは何の造作もないことだ。呪力は武力以外にもいくらでも使い道があるのだから。おまけに祓い師側には有能な人物がいくらでもいる。そんな者たち相手に力や計画で立ち向かったところで何の意味もない。それでもし万が一成功するとしたら、それは実行者が物語の主人公でもない限りありえないだろう。



 だからこそ、誰も思いもしなかった。こんな腐りきった現状をどうにかしてくれる救世主が現れようとしていることを。彼らが人々に益をもたらしたかどうかという問いに対する答えは人によって異なるだろう。

 しかし、彼らは紛れもなく救世主だったのだ。



 彼らは悪霊を祓うのではなく滅ぼすという信念を持って発起したことから人々からはこう呼ばれた。



 ――滅兵、と。

次回より第六章『滅兵爆誕』に入っていきます

この第二部は第一部の十年前の話を書いていく予定です

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