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プロローグ

新年あけましておめでとうございます


息抜きで書いた作品です

ある程度は書きためをしていますが、ネタで書いているので徐々に不定期更新になると思います

これから、よろしくお願いします

 目が覚めると少年は真っ白な空間にいた。


「…… ここはどこだ?」


 少年は体を起こして辺りを見渡すが、地平の先までただひたすら白い空間が広がっていた。物体らしきものは何も見当たらない。呆然とした顔で辺りを見ていると、突然声をかけられる。


『目が覚めましたか?』


「! 誰だ!」


 少し高めの機械じみた抑揚のない声が何もない空間に響き渡る。声の主の姿を探すが、どこにも見当たらない。


「姿を現せ!」


『どうやら、どこにも異常がないようで何よりです』


「聞こえなかったのか! 姿を現せと言っているんだ!」


『しかし、精神面には以前(・・)と変化が見られる点がある。残念です』


 少年の叫びを無視して、言葉を紡いでいく声に少年は苛立ちを覚える。唇を噛んで虚空を睨みつけるが、一向に声の主は見当たらない。そのことにますます不信感を募らせていく。

 そんな少年の心情を知ってか知らずか、声の主が少しトーンを下げて話しかけてくる。


『ああ。申し訳ありません。なにぶん、今回が(わたくし)めにとって初めての仕事でございまして。至らない点が多々あると思いますが、なにとぞよろしくお願いします』


 少年は声の主が話した内容を頭の中で反芻しながら言葉を返す。


「そうだな。顔を見せない時点で、もうすでに仕事人失格だ」


 強い不信感を感じさせる声で、声の主を責める。声の主は手厳しいと苦笑いをする。


「ここまで出てこないということは、なにか顔を見せられない理由があるのかもしれないが、せめて名前くらい名乗ったらどうだ?」


『これは大変失礼いたしました。(わたくし)としたことが、名も名乗らないとは……。初仕事だからといって甘えは厳禁ですね。以後気をつけます』


 声の主は謝罪をした上で言葉を続ける。


(わたくし)案内人(ガイド)と申します。諸事情で姿をお見せできずに申し訳ありませんが、誠心誠意屋敷(やしき)(たけし)様のお支えをさせていただきます』


 案内人(ガイド)と名乗った声の主に少年――屋敷(やしき)(たけし)は少し考え込む様子を見せる。いくらか時間が経ったことで、なんとか多少の冷静さを取り戻した武は案内人(ガイド)に疑問をぶつける。


「俺を支えると言ったな。それは一体どういう意味だ?」


 猜疑心の満ちた目で虚空を見つめる。声の主は今までと同じ平淡な声で答える。


『これから武様には異世界へと転生していただきます』


「異世界…… だと?」


『左様でございます。これから武様が降り立つ世界は醜悪な闇が蔓延る狂いきった世界でございます。常識的な神経の持ち主では到底持ちこたえられないでしょう。ゆえに、(わたくし)が武様を微力ながら全身全霊でサポートさせていただきます』


「醜悪な闇が蔓延る狂いきった世界だと? ふざけているのか? そんなお伽噺に付き合ってやれるほど俺はお人好しじゃない。元の世界に返せ」


 どこぞの思春期の子供が好き好みそうな話を、武は嫌悪感を露わにして切り捨てる。


『それは出来かねます。現在、武様が元におられた世界に戻ることは不可能です』


「なぜだ?」


『その問いには答えかねます。ですが、これから武様が向かわれる異世界での働き次第では、元の世界に戻ることも不可能ではないとだけ申し上げておきます』


「どういうことだ?」


 武の問いに案内人(ガイド)は答えない。武は舌打ちをしたい衝動を抑えて、感情を押し殺した声で案内人(ガイド)に問い質す。


「これからの動き次第で元の世界に戻れると言ったな。そして、その異世界とやらで、お前は俺へのサポートを惜しむつもりはない。そうだな?」


『左様です』


「だが、百歩譲ってその異世界で何かをするとして、お前は信用するに値するのか? 姿を見せず、声を変え、明らかな偽名を使ってくる初対面の奴を信じるほど俺はおめでたくないぞ」


『おっしゃることはごもっともですが、こればかりは信用してくださいと申し上げることしか出来ません。それと、声を変え、偽名を使っているとおっしゃっていましたが、これが(わたくし)の声であり、案内人(ガイド)という名は、正真正銘私の本名でございます』


 案内人(ガイド)は、今までと違い、意志のこもった声でそう断言する。武は少しの間、虚空を睨みつけ、やがて諦めたように瞑目し、腕を組む。


「もういい。お前の好きにしろ」


 武はため息をつき、それ以上の追求を諦める。実際、相手の姿形が見えない上に、自分自身どこにいるのかも分かっていない以上、主導権は案内人(ガイド)の手に握られている。元の世界に戻りたいのはやまやまではあるが、対抗策が分からない以上どうすることも出来ない。とても信用は出来ないが、反抗するだけ時間の無駄だと判断し、流れに身をゆだねることにする。


『それでは、転生させていただきます。準備はよろしいですか?』


「ああ」


 案内人(ガイド)の確認に了承した瞬間、武の意識が遠のいていく。そして、武は新たな世界に新たな命として再び生を受けることとなった……。

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