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沈黙の君【5】

 普通の魔法使い

 状態異常:暗闇

 効果:盲目となる。

    命中率と回避率が低下する。

    数分で元に戻る。


 セレスティナ

 状態異常:暗闇

 効果:盲目となる。

    命中率と回避率が著しく低下する。

    永続。



 と、いうことらしい。


 今、俺はセレス様の家でセレス様のお話を拝聴している。


 上半身は白のYシャツ。下半身は布を腰に巻いただけの格好。


 先ほどのオークとの戦いで、きっちり尿を漏らしビショビショになったボクサーパンツは、目の見えない俺の代わりにセレス様に洗っていただき天日干し中である。もうセレス様には頭が上がらない。お礼に、後でこっそりセレス様のおぱんてぃーも洗ってあげよう。


 いや、今打診してみるか。


 課長や部長に進言するときなんて、ちょっと声が震えて同期にからかわれることもしばしばの池田ですが、年下の女子供には結構強気で行けるというどうしようもないスキルを持っている。ただしヤンキーは論外。


 それにセレス様は何だかんだ許してくれそうだから。


 「セレスティナさん。私のパンツを洗っていただいたお礼に、セレスティナさんのおぱんてぃー様をこの卑しいわたくしめが洗浄いたしましょう」


 「…………………」


 「…………………」


 「…………………」


 「…………………」


 「……………………いらない」


 「はい」


 分かっていた。それに盲目状態で洗濯なんて出来ないしな。


 「…………そんなことより……ごめん」


 謝られるのはこれで3回目。抑揚の少ない声であるが、どこか申し訳なさを感じさせる。


 「いえ。何度も言っているように、セレスティナさんの忠告を無視して目を開けた私が悪いのです」


 「………違う。……お父さんに、味方の前では………やるなって言われてた」


 そりゃあ、敵味方問わず永続的に盲目にする魔法だからなぁ。特定通常兵器使用禁止制限条約に抵触してもおかしくない。だからこそ戦場では無限の活躍を秘めていそう。まず間違いなく、初見で避けることは困難であろう。


 「あのオークは、えーと、だ、ダークワールドを使用しなければならないほどの相手だったんですね」


 「……今思うと、他にやり方は、あった。少し……焦っちゃったかも。……ただ、普通のオークは…………ファイヤーボールで、倒れるから。雑魚……ではなかった」


 あれだわ。盲目状態が原因かもしれないが、少し焦ったの発言にキュンときた。可愛いじゃないの、セレス。それに今まで意識していなかったが、声も悪くない。ボソボソスタイルだが何故か聞きやすい。いるよな、人ごみの中でも異様に声が通る奴。それに近いかもしれない。


 「………それに……オークは普通…………集団で、行動する。……………恐らく、あれは、はぐれオーク」


 はぐれオーク。妙に耳に残る言葉だ。そこに強さの秘密があるのだろうか。


 ただ、あのオークも池田同様永続的に盲目になっているはず。再度エンカウントしたところでさほど脅威とはならないだろう。セレス様のな。


 「そうですか。運が悪かった、ということですね」


 お互いに。


 「…………人に教えるの、初めてだったから。よくよく……思い出すと、お父さんから教わったときは…………………個人で鍛えた後、実践だった。だからたぶん……やり方が、よろしくなかった」


 「それは、私からは何とも言えません。ですが様々にご迷惑をおかけしている上に鍛錬までお付き合い頂こうとは、虫の良い話でした。そんな私を見て、どこかの誰かが罰を下したのでしょう」


 「……………」


 「……………」


 「……………」


 「……………」


 「……………」


 「そ、それにしても、あのダークワールドという魔法はすごいですね。紅魔族は全員あの魔法が使えるのですか」


 「………………」


 「………………」


 「……あれは、トランス家にだけ伝わる………魔法。他の魔族は、使えない……………と、思う」


 おお、個人情報流出。


 トランス家の秘術ということか。つまりセレス様の家は闇魔法に特化しているのかもしれん。


 謎が増えるトランス家。だが焦って根掘り葉掘り聞いてはいけない。がっつく男は嫌われると、ギャルゲのビッチヒロインが言ってた。


 「…………でも、ダークワールドは………万能では、ない」


 味方にも影響を及ぼすからだろう。


 「…………………一定以上の、回復魔法で…………効果は、消える」


 !?


 お、おぉぉぉ。よかった。


 効果は永続であっても、しょせん状態異常だから元に戻るすべはあると思っていた。ただこんな早く解決策が見つかるとは。


 はー、よかった。


 うんうん。



 「…………」


 正直に言えば、もうずっと失明状態なんじゃないかという考えが脳を圧迫し、脂汗かいたりブルーになったりしていた。


 先ほどまでの俺の心中は、6割絶望4割おぱんてぃーだった。異世界でも現実逃避。


 「ということは、今すぐにこの盲目状態からおさらばできるということですね」

 

 「…………できない」


 「できない?」

 

 はて。


 「………」


 「………」


 「……………私は、回復魔法が……使えない」


 「おぉ……」


 考えてみればそうか。もし使えるのであれば、オークを撃退したあの場でホイホイと使用いただけたはずだ。


 と、すれば次の光明は。


 「ここから一番近い街であれば、どうでしょうか」


 「……………」 


 「……………」 


 「…………………無理、だと思う」


 なぜだ。嘘だと言ってよ。


 「なぜでしょう」


 「まず……前提として、この世界には、回復魔法を使える者が少ない……って、お父さんが言ってた。それを踏まえて、最寄りの街には……回復魔法の使い手は、いるかもしれない。でも………力が足りない」


 ん?んー、ん。


 そうか。さっき一定以上の回復魔法なら効果を打ち消せるとか言っていた。つまりここから一番近い街にいる術者では、実力不足の可能性大ということだろう。


 何ということだ。八方ふさがりではないか。


 「…………………………お父さんが言ってた」


 「え、あ、な、なんと?」


 「……………」 


 「……………」 


 「………………獣人国の首都にいる……治療師なら……………治せる、って」


 ここでまさかの新たな国出現。


 獣人国。けもののフレンズが俺を呼んでいる。なにか天文学的奇跡が起き俺に獣っ子が惚れてめでたくゴールインするかもしれん。ジェンダーフリーならぬレイスフリーだ。ワクワクが止まらない。


 これは行くしかないな。


 それにしてもセレス様のお父さんは何でも知っている。RPGでよく見かけるヒント屋のイメージだ。


 ただ、自分の魔法の治療手段は知っていても、というか知っていて当然かもしれないが。


 「ということは、獣人国の首都へ行くことが出来れば私の目は治るということですね」


 「…………うん。だから………………そこまでは、私が、護衛する」


 おお!なんだおい。優しすぎるだろセレス。電車で妊婦に席を譲る程度の優しさは秘めている。人見知りの池田には到達できない高みに彼女は立っている。


 これは本格的にあれだ。やさしさに包まれたなら目に見えぬ全てのことはメッセージと化している状態だな。 


 「ありがとうございます。今まで助けていただいたことも含めて、この恩は必ずお返しします」


 「………………」


 「………………」


 「………………」


 「………………」


 「……………………ただ、さっきのオークみたいに……イレギュラーは、ある。確実に………護り切れるとは……言えない。それに…………あなたは、盲目。動かない敵ほど…………仕留めやすいものは、ない。だから………………最低限の、力は……身につけてもらう」


 おお、今までで一番長い発言だ。


 違う、そこじゃない。


 発言せし旨はまごうことなき正論。しかし何をすればいいのだろう。


 「えー、具体的にどのような力を身につける必要があるでしょうか」


 「………………」


 「………………」


 「……2つ。1つは………1人で、歩けるように………なること。もう1つは…………私の指示通りに、動けるように……なること」


 本当に最低限、といったところだ。


 逆を言えば、俺が1人で歩けるようになり、セレス様の指示に従って行動できるようになれば、盲目男を護りながら敵を撃退できるということか。


 とてつもない自信だな。俺がセレス様なら家から出て数分で全滅する。


 まぁ、VSオークも俺が勝手な行動をしなければ、味方の損害なく撃退できていたわけだし。


 彼女の実力は確かだ。だったら、信じてついていくしかない。


 死んだら……まぁ、その時はその時だ。


 せめて焼死は避けたい。あれは、地獄だ。


 「分かりました。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします」


 「………………」


 「………………」


 「………………」


 よし、とにかくポジティブに。行こう。


 


 ☆☆


 

 俺は1人、家の中にいる。


 セレス様は家の裏にある畑で雑草を抜いている。


 この畑、一度拝見したが見たことのない野菜っぽいものが所狭しと実っていた。恐らく食事に出てくる野菜は畑の成果物なのだろう。


 さらにセレス様、畑の世話の他に、掃除洗濯炊事狩猟を1日のルーチンワークとしている。


 異世界に来て、ほぼ不自由なく暮らせているのはセレス様のお蔭である。セレス様には感謝の念しかない。


 これでもう少し愛想がよく、人との交流があればモテモテだっただろうに。


 「…………………」


 いや、それはそれで嫌だな。愛想がいいセレス様など見たくはないという気持ちがある。あ?なんだこの感情。謎の独占欲が働いている。


 あぁ、これは駄目だ。依存し過ぎている兆候だろう。


 「んー、やはり、これ以上甘えたくないな」


 セレス様のルーチンワークに、池田の介護と池田の自立支援が増える。


 まずい。


 頼り過ぎだ。


 日本時代、プライベート、仕事ともに極力自分の中で完結させ、他人に迷惑をかけない人生を心がけていた。


 だというのに異世界では頼りっぱなし。それが悪いという訳ではない。人とは互いに支え合って生きるモノ。我々は1人では生きてゆけないのだ。


 ただ、今回のケースは10対0で俺がセレス様に頼っている。むしろ背中から伸し掛かっている。チョークスリーパーさえ仕掛けられるおんぶにだっこ状態。


 多少仕方がない部分もあるが、やはりいただけない。


 セレス様ではなく逆に俺がストレスでやられる。たぶん10円ハゲができる。

 

 とは言っても、どうやってセレス様の負担を減らすのか。


 今の俺には何もない。ほんと何もない。


 何も。


 「…………」


 あ、ブルーになってきた。まずい。ポジティブに。ポジティブに。がんがんいこうぜ。


 「やっぱりなにかしら異世界生活の補助的なものがあってもいい気がするな」


 こう、人より力が強かったり、最初から魔法使えたり、学習速度が尋常じゃないとかさ。


 俺が読んできた異世界物の小説は全てウソつきだった。いや、あいつらフィクションだけどさ。それでもなお指標にはなるのだ、この世界では。


 でも。


 何もチートないよ。


 神様、今ならまだ許すから出てきてもいいよ。


 「……………………」


 ………………


 出てこない。


 ぬぅ。


 とりあえず、何か。何でもいいから欲しい。


 ステータスウインドウだけでもいいから。


 今の俺の状態を教えてくれ。


 ステータス。


 ステーーーーーーータス!


 ステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステータスステ










ピコン。











【パーソナル】

名前:池田貴志

職業:社内SE

種族:人間族


【ステータス】

レベル:1

HP:10/10 

MP:50/50

攻撃力:2

防御力:3

回避力:2

魔法力:4

抵抗力:4

器用:3

運:7


初期ステータスポイント:1000


【スキル】

ステータス:1


スキルポイント:99



 


 「…………………」


 きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!!!


 うおぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!


 いえぁぁぁぁぁああああああああ!!


 ぬぉあぁっぁぁおおおおあぁっぁぁああ!!!!!!


 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!」


 これで勝つる。何に勝つか分からないけど。


 よかったー。神様信じててよかった。


 信心深い仏教徒でよかったー。御盆のお墓参りかかさず行っててよかったー。


 「何でもこいやぁぁぁぁぁああああああ!!!」


 今のテンションなら無敵だ。誰が相手でも勝てる。


 「おらぁぁぁぁああ!!!」


 「……………………………」


 視線を感じた。


 「……………」


 「……………」


 「……………」


 「……………どうしたの」


 「あ、いえ、その……何でもないです」


 「……………」


 「……………」


 「…………………」


 視線とともに気配も消える。


 人の視線と気配って意外とわかるもんだな。盲目になったからか。


 いや、そうではなく。


 シャウトが裏庭まで聞こえたのだろう。結構恥ずかしい。小学校の学芸会で10回連続噛んだ時くらい恥ずかしい。今思ったけど俺、黒歴史あり過ぎだよな。


 「よし、落ち着こう。ふぅ」


 おっけ、落ち着いた。


 もう1度ステータスウィンドウ、確認。


 

【パーソナル】

名前:池田貴志

職業:社内SE

種族:人間族


【ステータス】

レベル:1

HP:10/10 

MP:50/50

攻撃力:2

防御力:3

回避力:2 

魔法力:4

抵抗力:4

器用:3

運:7


初期ステータスポイント:1000


【スキル】

ステータス:1


スキルポイント:99

 

 ブォンと。盲目のはずなのに、薄透明色のステータスウィンドウが現れる。なるほど、目で見ているわけでなく、頭が知覚しているということか。よく分からんがそういうことにしておこう。


 きてる。俺の時代きてる。


 しかも攻撃力とか防御力とか日本語で表示してくれてる。RPGゲームは少なくない数やったことはあるが、未だにVITとかAGIとかどういう意味か分からんからよかった。とりあえずSTR上げる精神。


 それにしても驚くほどステータス低い。やだ、私のステータス低すぎ。


 そしてスキル。


 おそらく、今俺が望んだゆえにスキルポイントを1消費しステータスのスキルが手に入ったってところだろう。


 初期ステータスポイントが用意されているということは、レベル1だがステータス、スキルともにアップさせられるのだろう。


 にゃるほど。にゃるほど。


 悩ましいな。


 恐らく、ここでポイントの振り方を失敗すると詰む。


 池田の大冒険GAMEOVERとなる。


 うーむ。


 まずは何が必要か。もちろん、情報だな。


 ポイントを振るための情報が欲しい。


 ということで、スキル:ステータスをもうちょっとだけ上げてみよう。


 はい!はい!ステータス、もうちょっと詳細に!はい!


 

 ピコン。



【パーソナル】

名前:池田貴志

職業:社内SE

種族:人間族

年齢:26歳

性別:男

性格:口下手、格上には緊張する、事なかれ主義、敬語使い、慎重ではあるが追いつめられると吹っ切れる


【ステータス】

レベル:1

HP:10/10 

MP:50/50

攻撃力:2

防御力:3

回避力:2 

魔法力:4

抵抗力:4

器用:3

運:7


初期ステータスポイント:1000


【スキル】

ステータス:4


スキルポイント:96

 


 ふむ。やはり強く願うことによってポイントを振ることが出来る模様。このあたりは結構大雑把である。


 しかし微妙。スキルポイント3消費して、パーソナルな部分しか追加されてない。


 しかも性格の欄ひどい。全部外れてないから何も言えませんけど。つか誰がどうやってここまで忠実に俺の性格を書き記すことが出来ようか。神か俺の二択だろう。であれば神ということになる。そう思うと、相手が神とはいえ少々恥ずかしい。


 しかしこの性格の奴にお嫁さんが来るかね。小物臭漂いすぎだろ。


 まぁいい。これからどうするか。


 もう少しステータススキルを上げてもいいが、ステータスポイントも使ってみたい。


 「…………」


 よし、使ってみよう。


 たぶん、HP・MP系とそれ以外系で数値の上昇数が違うだろうから、それぞれの系統に1つずつ振ってみよう。


 HPと攻撃力。HPと攻撃力。HPと攻撃力。HPと攻撃力。HPと攻撃力。HPと攻撃力。




 ピコン。



 

【パーソナル】

名前:池田貴志

職業:社内SE

種族:人間族

年齢:26歳

性別:男

性格:口下手、格上には緊張する、事なかれ主義、敬語使い、慎重ではあるが追いつめられると吹っ切れる


【ステータス】

レベル:1

HP:30/30 

MP:50/50

攻撃力:22

防御力:3

回避力:2 

魔法力:4

抵抗力:4

器用:3

運:7


初期ステータスポイント:996


【スキル】

ステータス:4


スキルポイント:96

 

 

 狙い通り、HPと攻撃力が上がった模様。


 でも同じだったわ。全て1ポイントにつき10ステータス上がるのね。


 しかしポイントの振り方難しいな。今も1ポイントずつ振ろうとしたのに、2ポイントずつ振っちゃったし。気を付けないと。


 さて、とりあえずポイント振りのチュートリアルはこんな感じだろう。


 ここからが本番だ。どのように余ったポイントを振るか。


 うむ。


 ちょっと悩もう。


 シンキングタイム。




 ☆☆



 2日後。


 よく優柔不断だと言われる私ですが、まさかシンキングに48時間も費やすとは思わなかった。でも、決めたわ。やっと決まったわ。


 とりあえず盲目状態を解消するスキルを手に入れる。


 この2日間辛かった。眼が見えないのがここまで辛いとは思わなかった。まず1人で何もできない。本当に。俺が何かしら行動するときは絶えずセレス様に介護をしてもらった。申し訳なさMAX。


 あとすごい不安になる。景色がずっと黒いから。セレス様がいなければおそらく発狂していた。先天性の人はどうか分からないが、少なくとも後天的に失明した人は、よく生活できていると思う。俺は限界。もうダメ。まずは視力を回復する。


 次に攻撃魔法系のスキルを手に入れる。


 セレス様の言動から察するに、この世界では魔物の存在が一般化している。つまりどの場所に行こうが戦いを避けることは難しいということ。それでなくても慣れない異世界。何時どんな危険が迫るか分からない。帰するに何らかの防衛手段は必要だろう。


 一瞬、近接戦闘も考えたが、やっぱりビビりなので魔法系のスキルで。


 必須スキルはこの2つ。もしスキルポイントが余ったら、後にとっておく。今は他に思い付かない。


 ステータスは防御力、魔法力、抵抗力を上げる。


 やはり死なないことが一番ということで防御力、抵抗力。そして魔法を使うので魔法力。安直ではあるが間違いではないだろう。めちゃめちゃ弱腰感が出てるのはご愛敬。


 こんな感じ。では、早速いってみよう。


 場所は変わらずセレス家。セレス様は狩猟に出ている。無手で狩りに行くとか時代は変わったよな。素晴らしきかな、魔法文明。


 さぁ、集中しよう。ポイント振りを間違えないように。


 くったくたの敷布団上で座禅を組み、頭をクリアにする。

 

 まず思い浮かべるは回復魔法。


 盲目を解消する魔法と言えばこれしかない。お前だけが頼りだ。


 行くぜ。


 「ふぅ…………」



 回復回復回復回復回復回復回復回復回復回復回復回復回復回復回復回復回復回復回復回復回復回復




 











 ピコン。





 

 

【パーソナル】

名前:池田貴志

職業:社内SE

種族:人間族

年齢:26歳

性別:男

性格:口下手、格上には緊張する、事なかれ主義、敬語使い、慎重ではあるが追いつめられると吹っ切れる


【ステータス】

レベル:1

HP:30/30 

MP:50/50

攻撃力:22

防御力:3

回避力:2 

魔法力:4

抵抗力:4

器用:3

運:7


初期ステータスポイント:996


【スキル】

ステータス:4

回復魔法:10


スキルポイント:86 

 

 


 「おお……」


 きたこれ。上等。


 注文通り回復魔法が誕生した。しかも10ポイントという絶妙な数字。3度目のステータス振りでこのバランス感覚、今ならイライラ棒も突破できるかもしれない。


 これなら盲目状態も解消できそうである。


 よし、早速使ってみるか。


 「…………」


 どのようにして使用するのだろう。ステータススキルのように強く想えばいいのだろうか。


 それしか思いつかんな。ほれ。


 「回復魔法ぅぅ!こい!」


 と叫んだ直後。ブオンという音と共に己が体に変化が現れた。


 ん?


 あ。


 なんか。


 目が見えないゆえどのようなエフェクトが形成されたか不明だが、俺に回復魔法かかったわ。


 身体の疲れが癒えた。


 セレス家の壁にぶつけて打撲した足の痛みが引いた。


 目が見えない。



 目が見えない。


 「…………………」


 10ポイントでは足りないというのか、ダークワールドよ。何という大食漢。


 これは厄介。どうする。


 回復魔法を1ずつ上げながら、盲目が解消するまで試し試しやってみようか。


 それが無難で確実な方法だろう、が。


 「……あ」


 待てよ。


 考え方を少し変えてみよう。


 もしかすると、盲目を解消できるのは回復魔法じゃないのかもしれない。ヒールじゃなくてリカバーみたいな。キュアとかディスペル的な。


 うん。


 その線が濃いな。


 よし。


 違う系統の回復魔法を手に入れよう。とすると、どんな感じのイメージを持てばいいのだ。


 身体の回復というよりは、状態の回復、か。


 状態の回復ってなんだ。口から入ってきた食べ物の栄養素を吸収して回復……なんか違うか。


 元に戻る。元気になる。こんなイメージ?


 「モリモリ食べて身体に吸収吸収!からだげんきっ!!」


 ………………


 えーうん、あー、吸収して元に戻る?いや、遠ざかった気がする。


 やばい。混乱してきた。


 状態ってなんだ。どういう意味だ。辞典が欲しい。


 駄目だ。分からん。


 「吸い取ってよぉ」


 この邪悪な状態異常を。


 






 ピコン。




 あれ。


 なんか音なったぞ。


 「……………」


 嫌な予感。


 恐る恐る、ステータスウインドを開く。


 














【パーソナル】

名前:池田貴志

職業:社内SE

種族:人間族

年齢:26歳

性別:男

性格:口下手、格上には緊張する、事なかれ主義、敬語使い、慎重ではあるが追いつめられると吹っ切れる


【ステータス】

レベル:1

HP:30/30 

MP:50/50

攻撃力:22

防御力:3

回避力:2 

魔法力:4

抵抗力:4

器用:3

運:7


初期ステータスポイント:996


【スキル】

ステータス:4

回復魔法:10

MP吸収:54


スキルポイント:32 

 



 なんでなんでなんでなんで。え、なにこれ。どうなってるの。


 MP吸収って。


 どこからどうなれば、そんなスキルになるの。


 しかも54て。


 絶対おかしい。神が操作した。なんて奴だこの野郎。ちくしょう、他人の墓の御供え物をパクッたからか。だから怒ったのか。あんな20年前くらいのことを覚えているとは。根が深すぎるぞ、お供え物窃盗事件。


 もう神なんて信じない。俺が信じるのはソースコードとセレス様だけだ。


 「おっけおっけ。想定内だよ」


 自分に暗示をかけてストレスを軽減する。まだ大丈夫。いけるいける。


 ただ、今みたいにドカッと入った結果ポイントが枯渇するのは怖い。つまりは盲目を解消する魔法よりも先に攻撃魔法をとっておこう。回復魔法とMP吸収のみとか、護衛ありきの能力だろ。単独行動をした暁には死が待っている。


 攻撃魔法と言えば、火魔法。セレス様が使ってたファイヤーボールが良い例だ。


 しかし、火には良い思い出が無い。そりゃあ死因ですから。セレス様には秘密だが、ファイヤーボールを初めて拝見した際はトラウマで吐きそうになった。ゲロゲロボール。


 それほど火は嫌い。だから火魔法は却下。むしろ敵が火魔法を使用した際、完全に打ち勝てる魔法を会得したい所存。


 すぐに思いつくのは、水。水魔法。火魔法には勝てると思う。


 だが、攻撃魔法としてはどうなのだろう。少しパンチが弱い気がする。


 水魔法使いのセレス様にも聞いてみたが、たしかに攻撃手段としてはあまり使用しないという。補助的な用途が多々らしい。


 セレス様が言うのだから間違いない。それに現状、他の人の話なんて聞けないし。だから水魔法は却下。


 ということで散々悩んだ結果、1つの答えにたどり着いた。


 氷魔法。


 火魔法に圧勝且殺傷能力も期待できる。必要十分条件を満たしていれば何も言うことはない。


 いくぜ氷魔法。やるぜ氷魔法。


 もう火だるまになるのは嫌だ、氷魔法。


 一面の銀世界を見せてくれ、氷魔法。


 真夏に食べるアイスは美味しい、氷魔法。


 俺に生きる力をくれ、氷魔法。


 氷魔法!!!

















 ピコン。















【パーソナル】

名前:池田貴志

職業:社内SE

種族:人間族

年齢:26歳

性別:男

性格:口下手、格上には緊張する、事なかれ主義、敬語使い、慎重ではあるが追いつめられると吹っ切れる


【ステータス】

レベル:1

HP:30/30 

MP:50/50

攻撃力:22

防御力:3

回避力:2 

魔法力:4

抵抗力:4

器用:3

運:7


初期ステータスポイント:996


【スキル】

ステータス:4

回復魔法:10

MP吸収:54

氷魔法:32


スキルポイント:0 








スキルポイント:0 



 「は?」


 なんでや。


 ワイがなにしたって言うんや。なんでスキルポイント0になっとるんや。


 盲目、盲目治せへんやん。オワコンやん。


 もうええ。おわたおわた。なんでもええ。


 好きにせぇ。


 













 ピコン。













【パーソナル】

名前:池田貴志

職業:社内SE

種族:人間族

年齢:26歳

性別:男

性格:口下手、格上には緊張する、事なかれ主義、敬語使い、慎重ではあるが追いつめられると吹っ切れる


【ステータス】

レベル:1

HP:30/30 

MP:4070/4070

攻撃力:22

防御力:3

回避力:2 

魔法力:5944

抵抗力:4

器用:3

運:7



【スキル】

ステータス:4

回復魔法:10

MP吸収:54

氷魔法:32


スキルポイント:0 





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