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白の悪魔*黒の天使  作者: 新西らん
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新たな日常


「みんな!朝だよ起きといで!」


マチルダの大きな声でヨイチは目を覚ました。


昨日そのまま眠ってしまい、いつのまにか朝になっていたようだ。


ヨイチは起き上がり、顔を洗ってから真新しい制服に着替えて一階の食堂におりた。


するとそこには昨日は見かけなかった、たくさんの生徒が席に座って朝食をとっていた。


「あっ、あの!おはようございます!

ぼっ、僕これからここでお世話になることになった、ヨイチです…。よろしくお願いします!」


ヨイチが大きな声で皆に挨拶をしたその瞬間、にぎわっていた食堂が一気に静かになる。


(なんでだろう…?)


ヨイチは静かになった理由はわからなかったが、自分が受け入れられてないということは悟った。


「おはよう!ヨイチ。とりあえずここ座って食べな。」


どうすればいいかわからないヨイチに、マチルダが誰もいないテーブルに食事を置いて声をかけてくれた。


ヨイチはマチルダの気遣いに感謝し、朝食を食べ始めた。


しかし依然として食堂は静かなままだ。


時折、誰かが小声で話しているのは聞こえるが内容までは聞こえてこない。


ヨイチがいたたまれない雰囲気の中、黙々と食べ続けていると突然、


「おっはよう!マチルダさん!ちょっと寝坊しちゃった。」


と、この場の空気には似合わない明るい声が聞こえた。


ヨイチが声の方に視線を向けるとそこには、いたずらっ子のように笑っている短髪黒髪の美形の少年が立っていた。


「あれ?なんでみんなこんな静かなんだ?


まっ、いっか!それよりマチルダさん飯、飯!」


まわりの重苦しい空気をものともせず、

その少年はマチルダから食事を受け取ると、ヨイチの目の前の席に座った。


そして、


「お前もしかして新入りか?俺はヤーシャ・リンデンっていうんだ。よろしくな!」


と言って手を差し出してきた。


「よ、よろしくお願いします…。」


皆との対応の違いに驚きながらも、ヨイチはおずおずと手を握り返した。


「おうよ!それよりみんな飯、食わねーのか?早くしないと遅刻すっぞ?」


ヤーシャと名乗る少年が固まってこちらを見ていた生徒に声をかけると、

皆思い出したかのように食事を再開し、また元の賑やかな空気が戻った。


「あの、ありがとうございます。」


「何がだ?」


「色々と…。あと、話しかけてくれて。」


「なんだ!そんなことか。別に気にしなくていいって!」


ヨイチがお礼を言うと、ヤーシャは笑顔でそう返し、そして


「そういやまだ名前聞いてなかったな。何ていうんだ?」


と聞いてきた。


「ヨイチです。今日から魔法学校で勉強することになって…。」


「お前まさか、田舎からやってきた噂の天才魔法使いか!」


「天才ではないですけど…。田舎から来たのは本当です。」


「へえ~。あ~。そういうことか…。」


田舎から来たと聞いたヤーシャは妙に納得したようにうなずき、


「これでなんでみんながあんな雰囲気だったかわかったぞ。


ここの連中はどいつも侯爵家や伯爵家とか、

とにかくいいところの出身のやつばかりだからな。プライドも高い。


でも、お前はただ一人の田舎者。


しかし聞いたところによると、国王様の命を助けるほどの魔力を持っている異色の存在だ。

だからこそみんなお前に恐怖と軽蔑の意味をこめて遠巻きに見てたんだな。」


と教えてくれた。


(恐怖と軽蔑…?)


ヨイチはどこかで聞いたことあるフレーズだと思ったが、それよりも気になることがあったのでヤーシャに聞いてみることにした。


「じゃあなんであなたは僕に話しかけてくれたんですか?」


「俺はそういうのは興味ないし気にしないからな。それにお前絶対悪い奴じゃないし!


俺は人を見る目は確かなんだ。だからこれは断言できる!」


ヤーシャは笑顔でそう返した。


「ヤーシャさん…。ありがとうございます…。」


ヨイチが尊敬のまなざしを向けると、ヤーシャは


「やめろよ!それより早く食え!」


と照れたように言って食事をかきこんだ。




「ふぅー。おいしかった。」


「ここの飯うまいだろ、ヨイチ?」


いっぱいになったお腹をさすりながら、二人で談笑をしていると、


「あっ、いたいた!ヨイチ君おはよう!」


と言ってロイスが駆け寄ってきた。


「ロイス君おはよう!」


「約束通り迎えに来たよ。」


ロイスはヨイチに話しかけ、その向かい側にいるヤーシャの方に視線を移し、


「ヤーシャ殿、おはようございます。ご機嫌いかがでしょうか?」


と急にかしこまったふうに挨拶をした。


「やめろよ。毎回毎回。もっと気軽にな!」


「いや、しかし騎士団長のご子息に軽々しい態度をとるというのは…。」


「それを言うならお前だって魔法大臣の孫だろ?そしたら俺も、ロイス殿ごきげんよう、って言わなくちゃいけなくなるじゃねーか。」


「いや、そういう意味ではなく…。ロイス殿は年上ですし…。」


「だーかーらー。」


2人の関係が見えずヨイチが間でぽかんとしてると、それに気づいたヤーシャが、


「わりーな。こいつと俺は団長の息子と大臣の孫ってことで結構深い付き合いなんだ。


なのにこいついつまでたっても堅苦しい態度を崩しゃしねえ。」


と教えた。


「いや、僕にも言い分があって…。」


なおもロイスが話し続けようとすると、


「おっと、俺はもう行かなきゃな!」


話を切るようにヤーシャが言った。


そしてヨイチを見て、


「ヨイチ、今日からお前を俺の弟分にしてやる。


だから困ったときは俺を頼れ。遠慮はするな。


これから色々大変だと思うけど頑張れよ。じゃあな!」


と言って走り去っていった。




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