プロローグ1 普通が嫌い
行き当たりばったりになるので物語の矛盾はあまり突かないでくださるとありがたいです。
――『普通』
黒髪黒目の特に特徴のない、強いて言うなら童顔かなと思うくらいのそんな地味な高1の少年――一ノ瀬博希はその言葉が大嫌いだ。
『普通』は国、地域、家族、もっと言えば人それぞれ違う。
そうであるはずなのにそれぞれがそれぞれの『普通』を押し通そうとする。
しかもその押しつけがましい『普通』は、そうでないものを疎外し侮蔑する。
例えば、体育の授業でバレーボールをやったとしよう。
とあるチームには運動が苦手な子がいて、結果としてその子が足を引っ張てしまうことが多くなるのは自明の理だろう。
そんな状況でチーム内、あるいはそれを見ているチーム外からなんであんな『普通』なことも出来ないの? などと言われてしまうことがあったとしよう。
あまりに理不尽だとは思わないだろうか?
博希は思うふざけるなと。
博希は思う。なにが『普通』だ。結局、俺たち人は『普通』という名の常に都合のいいように変化する基準を他人を見下して自身の自尊心とかプライドなんかを守るために作っているだけじゃないかと。
だから博希は『普通』が大嫌いだ。できるなら『特別』になりたいなと思う。
――とまあ御託を並べるのはこれくらいにしておこう。
なぜなら博希がこんな厨二と屁理屈をこじらせてしまったような思想を持っているのは、ひとえに自分が通っている学校内で、全校生徒から無視されるという間接的ないじめを受けているからだ。
しかもその理由が博希が学校に多量のエロゲやエロ同人誌を持ち込んだと言われていることゆえに全校生徒から蔑まれているからなので、ただの八つ当たりだ。
まあ、真実は全く違うので八つ当たりではないのだが。それでも自分はその理不尽を受け入れてしまったので、博希自身が八つ当たりに過ぎないと断じてしまっているのでどうしようもない。
そして、毎日毎日授業を聞き流しながらここまでの思考をループさせ続ける博希はぼそりとこのくだらない状況から逃げ出したくて呟いた。
「『普通』なんて……ぶっ壊れちまえ」
そしてそのつぶやきに答えるように世界が渦巻いて、
――博希を含めたクラス全員が忽然と姿を消した。
すぐに次も出します。