プロローグ
ここは機械都市国家アトリスの中腹であり工業生活地帯から数十キロメートル離れた場所にある古都市エウロパである。
時間帯は夜。辺りには戒厳令が敷かれており誰もいない。そのエウロパの路地裏を一機のアーマードが走っていた、
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
男は犯罪者だった。
彼はこのアーマードを使い、強姦殺人、強盗殺人を繰り返し指名手配されていた。
五分前、この男はいつもの手口で、若い女に目をつけアーマードで強引に連れ去り、事に及ぼうとした。
女が細い路地に入るのを確認し、自らも路地に入った時、そこに女の姿はなかった。
「消えた…?」
次の瞬間、アーマードの右腕が斬り落とされた。
「なに!?」
慌てて後ろを振り向く。
そこには先ほどの路地に入ったはずの女が立っていた。
男は女を注視した。
女の手に獲物は…ない。
にも関わらず、アーマードの右腕が斬り落とされているのだ。
「こいつは…ヤバい!」
男は警鐘をならす自らの本能に従いあっさりと逃亡した。
そして今に至るのだった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
物陰に入り辺りを窺う。
女の追跡の気配まなく、レーダーにも反応はない。
男が安堵したその瞬間何かが落下し、防弾ガラスでコーティングされたアーマードのキャノピーにヒビを入れた。
「ひぃ!」
男はアーマードを動かそうとしたが何者かが落下したが衝撃によりエネルギー供給機関が壊れたようだった。
「クソ!このポンコツめ!」
男は声を漏らす。
男は落下したものを視認した。
先ほどの女だ。同様に獲物を持っている様子はない。
キャノピー内にいる限り安全だろうと思った矢先、女は貫手の構えをとった。
男の中の何かが大音量で危険を告げている。
「やめろ…やめろ、やめろぉぉぉっおっ」
女が振り抜いた瞬間、キャノピーを貫通し中は血飛沫が飛び散る。
血糊のついた右手をは既に乾き始めていた。
女はアーマードを見つめて独りごちる。
「お前は…旧世代のブルアーマードか…お前はこんな事の為に生まれてきたのでは無かったのにな。せめて安らかに眠っておくれ…」
女は立ち去る。
その日の夜は全てを覆い隠すように深く暗く更けていくのだった。