第02話『取り敢えず鉱山回だけど、どこまで進むかは未定』
前回のあらすじ。ユイのカミングアウトそっちのけで終わったけど、ドラゴンとかフリントロックライフルとか、なんで他では重く見ている分野をあっさり切り捨てるように話すかな、俺。
『他所は他所以前に、新規読者にやさしくないからじゃないの?』
……読んでも読まなくても分からないと思うけど。ストーリー的に。
『文章的には?』
……もう少し説明増やします。というわけで第02話、どうぞ!!
第02話『取り敢えず鉱山回だけど、どこまで進むかは未定』
そう言えば盗賊のこと忘れてたけど、コクローチドラゴンを振り切った時点で、向こうは既に気力がなくなっているので追いかけてこなくなったのだ。だから気にしなくてよし。
そうこうしている内に昼前にはどうにか鉱山の麓にある分領街ガニメデに到着し、そのまま好物の売買を商っている商会へと荷馬車を向けた。
「序でに余っている武器も持ってくれば良かったな。多少は金になるのに」
「蓄えがある癖に、しみったれとるのぅ」
「備え有れば憂いなし。金は有りすぎても困らないからな」
軽口をたたいていると、コクローチドラゴンを振り切ってから昼寝していたシャーリーが目を覚まし、あくびをしながら身体を伸ばしていた。ミクサももう息が整っており、黒色火薬の材料である木炭を粉末状にすりつぶしている。
「・・・・・・ようやく着いたか」
一行が辿り着いたのは、街の中でも一際大きい、いや一際目立っている商会だった。というかイルミネーションなんてどっから持ってきたんだ? クリスマスじゃあるまいに。
『ところでクリスマスの予定は?』
・・・・・・聞くなっ(涙)!!
「ずいぶん派手な商会だな・・・・・・」
「だから儲かってるんだよ。おかげで多少は色も付けてくれるしな」
荷馬車用の通用口を通り、そのまま中へと入る面々。彼らを商会の荷揚げ係が迎え入れて奥へと案内してくれる。
奥の商業スペースに荷馬車を付けると、メルトをはじめとして全員が降りた。そこに交渉担当が駆け寄ってくる。
「これはこれはミスタ・ブレイス。今回はどのような御用向きで?」
「鉄鋼石の買い付けだ。安ければ鉄屑も売ってもらいたい」
そのまま大量買い付け用の売場へ案内されていった。
「先に昼飯食ってきてくれ。1時間後にここへ集合な」
メルトだけ交渉担当について言ってから、残りの面々は互いに顔を合わせた。
「じゃあ序でに買い物してきていいか? 欲しい物があるんだ」
「かまいんせん。わっちは飯を食いにいきんす。主等は?」
シャーリーはアトラに、ミクサはユイについていくことで話がまとまり、この場で解散となった。
さてこの流れで場面展開だけどどれが面白そうかな?
1.メルト
2.アトラ&シャーリー
3.ユイ&ミクサ
さてどこへ行こうか? はいレオナっ!
『えっ? えっと・・・・・・』
はい時間切れ。じゃあ面白展開を望むために2番でっ!!
『・・・・・・だったら最初から聞くなっ!!』
ということでアトラとシャーリーの二人は、商会近くにある食堂に足を向けていた。ここにくる度に来ている通い付けなので、勝手知ったる店と中へと入っていく。昼前なので客足は多いが、辛うじて残っていた席に着くことができ、そのままメニューに目を通した。
「相変わらずじゃのぅ。・・・・・・シャーリー、主はどうするのかや?」
「・・・・・・これ」
シャーリーが指差した品目は『メガモリピッグドラゴン丼 ~食べ切れたら賞金銀10枚~』と書いてある。無論、失敗したら銀貨1枚と法外な値段がかかる。まあ店側も、こうしないと利益が上がらないからしているのだろうが。
ちなみにピッグドラゴンとは名前の通り豚の竜で、食用に養殖されている比較的おとなしい生物だ。・・・・・・他のに比べたら。だって小さいのでも腹減ったら例外なく共食いしてる連中だしな。
「・・・・・・まあ良いが、払いは別じゃぞ」
そこで注文を取ろうとして、何か揉めている声が聞こえてきた。柄の悪い連中が新米だろう、若い旅人をいたぶっているのが見える。流石に行き過ぎなのか、店員が外にいる自警団に助けを呼びに行くのも見えた。
「・・・・・・助ける?」
「ま、腹ごなしには・・・・・・」
しかし、二人が動く前に助けはきた。いや、柄の悪い連中が呼んでしまったのだ。
新米の胸倉を掴んで投げ飛ばした先でテーブルがひっくり返り、そこで食事をしていた女性の丼を床に落としたのだ。というか、さっきシャーリーが注文しようとしていた奴だぞそれ。最近女のフードファイトでも流行ってんのかね。
「おっと悪いな姉ちゃん」
「ちょっと新入りにヤキ入れてたんだよ。なんなら、お詫びに今夜ヨガらせてやろうか?」
げらげらと下品に笑う連中を後目に、その女性は座っていた椅子から立ち上がった。
灰色の髪と同色のワンピース、そして地味な格好を補って余りある巨大な胸。彼女は軽く指を曲げ延ばししてから・・・・・・一瞬の間もなく男の一人を掴み上げた。しかも片手で。
「なっ!?」
「・・・・・・覚えとけ雑魚共」
灰色の女性はそのまま男を連中の中に放り込み、全員を巻き込む形で薙ぎ倒してから間髪入れずに蹴りとばした。
「人の食事を邪魔する奴は・・・・・・たとえ神だろうがブチ殺されても文句は言えねぇんだよ」
『絶対嘘だっ!!』
今のがレオナの発言なのか連中が重ねて言ったのかは知らないが、どうも余計な人物を怒らせてしまったらしい。
「ったく、連れが遅いから先に飯食ってたのに・・・・・・予定変更だ、おい小僧!」
「はっ、はいっ!?」
女性はテーブルに転がっていた(メルトから見たら安物の)バトルアックスを担いでから振り返った。
「私はもう行くから代わりに支払っとけ。食い逃げするとあいつウルサいんだよな・・・・・・」
ブツブツと不満を口にしながら、彼女は店を出た。
(・・・・・・ん、あれはまさか)
視界の端に移ったアトラとシャーリーに一瞬気を取られかけながら。
「・・・・・・おっかねぇ」
「中身は絶対鬼だぜ」
「・・・・・・姐さん」
ぎょっ、と柄の悪い連中はさっきまでいたぶっていた新米に視線を集めた。どうやら助けられて惚れたらしい。
「いや、お前・・・・・・」
「あれは流石にやめとけ・・・・・・多分死ぬぞ」
「というかいつ殺されてもおかしくなかったからな」
もうさっきまでの殺伐ムードは完全に霧散した。アトラ達もようやく来た自警団達に連れられていく面々を見ながら、どうにか注文を通した程だ。
「・・・・・・殆ど無くなっていた。負けられない」
「変な意地ははらんでよい」
メガモリピッグドラゴン丼をがっつくシャーリーを眺めながら内心、だから『無駄飯ぐらい』と呼ばれるんだと考えつつも、ピッグドラゴンステーキ定食を黙って頬張るアトラであった。
後さっきの展開が某漫画と同じじゃね、って思った諸兄方・・・・・・仕方なかったんだよ!! どう膨らませようか悩んでたらこんな展開しか浮かばなかったんだよ!!
『いやどうでもいい。ところでさっきの人・・・・・・』
・・・・・・ん、ああ。確かに見てたな。シャーリーの背中の剣を。実際どうなるのかは知らんが。
『おい、作者』
おっとここではしがない道化さ。はっはっは・・・・・・
『・・・・・・あちこちから繋げやがって』
それより、食事は終わってもう集合しているようだぞ。
先に用事を終えているメルト達に遅れるように合流したアトラとシャーリー。一行は荷馬車に乗り込むが、積載量が増えたので空いているスペースに分かれて腰掛けている。具体的にはメルトとシャーリー、釘止めされた木箱の上にアトラ、後ろ端に腰掛けたユイ、そして首に縄を掛けられたミクサ、って行きと同じ構図だな。
「だから帰りが遅くなるからやめてくれ」
『・・・・・・ちっ』
あれ、今舌打ちが二回聞こえなかった? もう一度繰り返すぞ、二回聞こえなかったか?
『どうでもいい。あと重声と私の台詞、いいかげん同じこれー>『』はもうやめて別にしてよ』
それは検討中だ。今後に期待しないでくれ。
『させてよっ!!』
というわけでミクサはユイの隣に腰掛けることで落ち着いてから、一行は鉱山を後にした。まあ積載量が増えた分、行軍速度も落ちるから実質は行きのミクサ連行状態とそう変わらないんだけどな。
「そういえば主等、さっきは何を買いに行ったのかや?」
「ん? 硫黄と硝石だ。買い置きが尽きたからな」
言われてみれば、ミクサが持っている荷袋からは温泉特有の硫黄臭が臭ってくる。というか容赦ないな。奴隷とはいえ女を腐った温泉卵みたいな臭いに近づけるなんて。
『・・・・・・全部黒色火薬の材料じゃない』
作り置きは大切だぞ。ほっとくとすぐになくなるんだからな。
さて一行が進んでいると、ふと目の前から行きで見かけたの盗賊がやってくるのが見えた。少しは懲りればいいのにな。
「どうする、またぶっ放すか?」
「ドラゴンが出たら、にしよう。それに一発撃ったら、しばらく使い物にならないし」
それでも一応ライフルを取り出して発射準備を整えるユイ。他の面々(シャーリー以外)も武器に手をかけている。
油断無く見ていると向こうも気づいたらしく、ひっきりなしに怒声を浴びせてくる。
「おら動くな!! テメエ等よくも俺のコーネリアをこけにしてくれたな!!」
・・・・・・ん? コーネリア?
『誰、それ(そやつは)?』
「テメエ等が殺したドラゴンの名前だっ!!」
え、あれ死んだの?
『それはいつか死ぬでしょう。流石に頭吹っ飛ばされたら』
・・・・・・そういえばそうだった。
「というかコーネリアって・・・・・・」
「同名他者が聞いたらブチ切れそうだな・・・・・・知り合いにいなくてよかった」
全員頷いてるな。まあ、その名前自体珍しいから、居なくても不思議はないか。だってアメリカの地名だし。
「もう許さねぇ!! ……見せてやるよ。これが俺のとっておきだ!!」
すると盗賊のリーダーが右手を、その手首に着けている腕輪を操作した。どうやらあれが魔道具らしい。つまり、またドラゴンが来るということだ。
「……今度は群れだったりして」
「おいおい……」
シャーリーの戯言が冗談に聞こえない。けれどもその予想は、別の意味で裏切られることになる。盗賊達の背中にある雑木林から、何かが蠢く気配がする。それこそ最初に襲ってきたコクローチドラゴンすら簡単に上回る気配、いや大きさだ。
「あの腕輪、どんだけの大きさの奴を操れるんだよ……」
「弱ったのぅ。流石にB級以上ではないと思いんすが」
種類に関わらず、ドラゴンの危険度に応じてランクが決められる。最初に襲ってきたコクローチドラゴン位ならばC級と、装備さえ整えれば対処可能なクラスだが、B級になると軍規模、A級は国一つが総出で掛からなければ対処不可能なレベルとなる。S級等もはや伝説だ。遭遇することすら奇跡に近い。
そして巨大な害竜は、木々の狭間からその姿を晒した。
「……俺地元だけど、この辺りに生息するって聞いたことがないんだが」
「……確かあれ、センチピートドラゴンだっけ?」
その名の如き、無数の足と硬い鱗に覆われた、胴体が異常に長い竜が牙を向けてきた。……あれ、盗賊の方に向いてないか?
『……あ、予想できた』
「はっはっは~っ!! 行けセリア、コーネリアの敵を討つんだっ!!」
『あ、被った』
とうとう被ったな。メルトの幼馴染の親友のセリア=マートンに。
『……思いっきり脇役じゃない』
一応は準レギュラー格だぞ。というか妹分の親友に酷いな、お前。
『間接的な人付き合いなんてそんなものでしょ。・・・・・・ってそれより!!』
どげしっ!!
『ぎゃあっ!?』
尾の一振りで吹き飛ばされる盗賊達。メルト達は呆れつつも、次に攻撃されるのが自分達だと気づいて全員荷馬車から飛び降りた。
「B?」
「いや、ぎりぎりCだろ。手持ちでどうなるかは知らんが」
そのまま荷馬車から距離をとっている。センチピートドラゴンは最初、荷馬車を襲おうとしていたが、
ダンッ!! ガキィン!!
「げっ、結構堅いぞあいつ!!」
ユイの放ったフリントロックライフルの弾丸が装甲に阻まれ、弾かれてしまう。しかし気を引くことには成功したらしく、センチピートドラゴンは荷馬車から標的を変えた。
「さてどうするかな・・・・・・」
全員逃げつつも、手持ちを互いに見せあって使える手はないかと考えている。
ちなみにメルトは剣、シャーリーは魔剣、ミクサは巨大鉄扇を一本ずつ。アトラは刀と弓矢を持参しているが矢は殆ど残っていない。ユイに至っては武器が豊富だが、それも刀とフリントロックライフル、後は劇薬や飛び道具等対人間用、おそらく後ろの竜には届かないだろう。
「・・・・・・本当に退屈しない」
シャーリーさん、そんな暢気に言ってていいのかね?
このままだと全滅して打ち切りの嬉々、いや危機だから。
『・・・・・・ねえ、まさかこのまま?』
いやそれはない。現時点で少し詰まらなくなってきたから早めに切り上げて次話に行きたいだけ。というわけで待て次回!!
次回予告兼反省会
次回の『ロックブラストの奇妙な日々』は~作者です。今日ブレーカーが落ちて、レポートを書き直す羽目になりました。色々開いていると若干重くなるからMicrosoftWordじゃなくてTeraPadを使ってるのに、バックアップとれずに裏目に出た瞬間です。今度からこまめに保存しようと思いました、って作文?
『いいから次回予告』
はいはい、というわけで次回『人は伝説を目標程度にしか見ていない』をお楽しみに~。
「……ちなみにメガモリピッグドラゴン丼は食い切りました。ブイ」