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第00話『自己紹介も兼ねての序章』

 ロックブラスト。

 行商人泣かせで有名な街である。海と山に挟まれた大地に位置するこの街には、ありふれた食物から世にも珍しい金品に至るまで、ありとあらゆるものが存在する。人によっては一種の閉鎖世界とも、盗品類の最終着地点とも言い表している。何しろ独自の通貨を用いる上に、貨幣価値が高いため容易に両替ができないのだ。故に、旅人や行商人にとっては、売るも買うも一苦労という有様である。

 さてこの街の一角、工房や工場が立ち並ぶ作業区画に存在する工房が、今回の物語の中心となる場所である。

 その名は『マテリアル』。

 そこに住む住人とその仲間達が織りなす奇妙かつ碌でもない日常が、今始ま……っていいのかな? 正直執筆するよりもやることが大量にありすぎて困ってるんだけど。

『いやいややろうよ。折角書いたんだし!』

 今声を掛けてきた少女は、天よりあの工房を見守っているストーカー幽霊ことレオナ=グランドロスだ。工房に住む幼馴染が初恋の相手だが、もうくたばってるのでどうでもいいと諦めて見守ることにした、若干アグレッシブな女幽霊である。ちなみに幼少時に死去したので、精神はともかく身体はぎりぎりロリコン御用達仕様だ。

『くたばれーっ!!』

 るっせぇよ。小○生と○学生の間くらいでくたばった馬鹿にかける言葉はない。

『……いつか殺されるわよ。あんた』

 望むところだ。むしろウェルカム。

 ……まあいい。さて始めるか。今回はマテリアルに届いた一つの依頼……のために出かけた先で起きた災難の話だ。

『では皆様ごゆっくりどうぞ~』

 ……やっぱやめよっかなぁ。




第00話『自己紹介も兼ねての序章』




「以上で担当説明を終わります。各自、完成予定を今日中に把握し、我々に報告してください」

 ロックブラスト総合組合寄合所。商業や製造、傭兵ギルドといった生活に関わるあらゆる組合(ギルド)を一括統制するために建造された館にて、ある建造物の依頼についての会議が開かれていた。参加しているのは各ギルドの重鎮や熟練の職人、そして要所要所を請け負うギルド構成員である。普段ならお目にかかることすらかなわないというのに、それほど重大な案件なのだろう。

「では……どっかの馬鹿な金持ちの自己主張の塊を作成するために、皆さん頑張りましょう」

 総合組合長の鶴の一声で、この場にいた全員が脱力した。

 今回議題に挙がったのが、新しくこの街に住むことになった人間の住居の建築なのだが、困ったことが二つある。一つはこの街でも通用するくらいの金持ち。もう一つはあほみたいな自己顕示欲の塊であること。

 明らかに場違いな経済力に、どこぞの国の没落王族ではないかと疑われている程だ。しかし、仕事は仕事である。陰口位は認めて欲しいものである。

「メル坊、そっちはどうよ?」

 製造ギルドの重鎮である、髭面の男が隣に座っていた青年に話しかけた。錆びれた銀髪を乱雑に伸ばし、首辺りで纏めてある。地味目の作業着を纏った腰に剣を差し、眠たげな眼差しを頬杖をついたまま向けてきた。

「材料から調達しないときつい、かな。……おやっさんとこの回せない?」

「こっちもギリギリだ。おまけに数が多いから並行して調達しないと駄目だな、こりゃ」

「何処も世知辛いな」

 慣れた調子で互いの在庫を確認した後、メル坊と呼ばれた銀髪の青年は、後ろ頭を掻きつつ背を向けた。

「先に調達するかな。……じゃあまた」

「おう、またな」

 総合組合寄合所から出た青年の名はメルト=ブレイス。鍛造をメインとした鍛冶職人であり、工房『マテリアル』の若き経営者である。とはいえ師匠は死去、弟子も身寄りのない自分だけだからついで当然という話でもあるが。まあ腕は本物なので、今回も量産できない主要部品の製造を割り当てられている。

 寄合所から少し離れた工房区画を慣れた調子で進むと、荷馬車を置くために他の工房より少し開けた印象になっている建物に着いた。おまけに今は荷馬車を使う用事もなく、手前のスペースを開けて作り置きの商品を並べて露天売りしていた。

「おや、帰ってきおったか」

 その露天売りのスペースには二人の女性が降り、うち工房の壁にもたれかかっていた方が声を掛けてきたのだ。

 彼女の名はアトラ=カーディナル。赤い長髪の女性で、腰に刀を差している。服は旅人用だが髪と同色に纏め、肘から手首までを革製の籠手で覆っていた。ちなみに胸は薄ぶっ!?

『ここは健全小説、セクハラ禁止っ!!』

 ちょっ、どこから出したそのナイフ危ないなっ!!

「……私が貸した。そしてメルトおかえり」

「……貸したって、何を?」

 最後に商品を並べた陳列棚を挟んで、適当な木箱を椅子代わりにして腰掛けている女性が(普通の人からは)電波に聞こえることを口走っていた。

 名前はシャーリー=ロア。嘗てはとある一族の末裔だとかで、常に背中に差している宝剣(見た目はどう見ても魔剣)を今は木箱に立てかけている。黒の長髪で同じく同色の上着とワンピース姿だ。おまけにこちら、というかレオナの姿が見えるらしく、電波発言の殆どはそこの幽霊との会話だったりする。

「……ナイフ。今返って来た」

「まあなくしたわけじゃないならいいが……売れたか?」

「……全然」

 メルトは溜息を吐いてから、目の前にいる居候共に向かい合った。

 彼女達は元々旅人だったのだが、紆余曲折合って今はこの工房の空いている部屋に住んでいる。まあ色気なんて皆無なので、お望みの方は娼館かノクターンにでも行ってください。

「じゃあもう畳め。出掛けるぞ」

「おやおや、何処へ行くのかや?」

 何が楽しいのか、腕を組んでにやついているアトラを尻目に、メルトはシャーリーの後方にある荷馬車、その裏に置いてある鉄屑入れを見つめた。こちらも普段、不要な鉄製品や壊れた装備を買い取っているのだが、その量もたかが知れている。

「大口の仕事が入ってな。これから鉱山へ買い出しに出る。……お前等も来い」

「それはよいが……他にも人手を呼ばぬとな」

「ん? 荷卸しはともかく、人手は足りてるだろ?」

 メルトは不思議そうに首を傾げた。

 確かに移動中は盗賊や野生のドラゴンに襲われる可能性は高いが、ここから鉱山に至るまでの道程はよく通っている上に、アトラに至っては『赤狼』、『赤き牙』等と他の旅人や傭兵から呼ばれている程の実力者だ。はっきり言ってそこらの雑魚ならば、相手にすらならないだろう。

 最も、他の連中もそこらの旅人なんかより明らかに手練れなのだが、この場では割愛する。というかリメイクだから知っててもおかしくないしな。

『新規読者に愛を!!』

 どっちにしても、すぐにわかるって。

「どうも厄介なのが転がり込んだらしくてのぅ、さっき覗きに来た知り合いが気をつけろと警告してくれたのじゃ」

 その言葉に、メルトは納得したのか一つ頷く。丁度片付け終えたシャーリーが背中に剣を差して来たので、このまま傭兵ギルドに向かってから鉱山に行くこととなった。

 荷馬車の横に繋いでいた馬のシュナイダー(命名者:シャーリー)を繋ぎ直してから、工房区画の馬車道を進んでいった。元々鍵はかけてある上に、突発的に出掛けることも多いから手慣れたものである。

「……ちなみにその知り合いはアトラに気が合ったけど、気付かれずにあっさり撃沈」

「ほんと色気ないよな、あいつ」

 御者台と荷台の端にそれぞれ腰掛けた状態で、メルトとシャーリーは揃って嘆息した。アトラが荷台の後方で暢気に刀を手入れしているのを見て、更に溜息を吐くことに。




 傭兵ギルドと言っても、いつも戦争に駆り出しているわけではない。基本的に護衛や討伐、危険な場所への採取任務等、腕っぷしが強くないとできない仕事をメインに取り扱っているだけの、ただの仕事斡旋所である。しかしそれだけでは経営が成り立たないので、3階建ての建物の1階を酒場にして、傭兵の確保と利益の拡大を狙っているのだ。2階の掲示板に仕事を張り出して、傭兵が選ぶのが基本だが、厄介な依頼を受けたり、手続きの省略や後ろめたい仕事を任せたい時とかは1階の酒場で勧誘することもあるのだ。その場合はトラブルが起きてもギルドは助けてくれないので、自己責任になるが。

 普段は騒がしい酒場も、今はある人間達で強引な静けさを得ていた。一方は屈強な傭兵集団。おそらく戦士の類だろう。武器は剣から槍、戦斧からメイスに至るまで、ある意味武器の見本市だ。

 対して向かい合うようにテーブル席に腰掛けている男と、それらを背に立ちふさがる女が一人ずつ。

 一人はこの辺りでは珍しい顔立ちをしている旅人風の男で、包帯に巻かれた左手に刀を一本携えている。女の方も同じく旅装だが、武器は背中に背負っている刀大の巨大鉄扇(ハリセンもどき)と珍しいものだが、注目はむしろその首に集まっている。

「……で、何だって?」

 男の名前はユイ=ミクラ。はるか遠方から来た旅人で、最近連れの女性とこの街に来て以来、ずっと滞在していた。左手で持った刀を弄ぶように、鍔の部分で肩を叩いている。

「だから、お前の奴隷を俺にも味見させろって言ってんだよ」

「……ああ、こいつのことか」

 事実そうだ。ここにいる女はユイの奴隷である。

 その奴隷はミクサ=エシュリー。元々はある国の王宮巫女という出世頭だったのだがユイに捕まって以来、奴隷として暮らしている。ただし強引にではなく若干自分から志願してきた職業奴隷のようなものだが。蒼銀色の髪の端を黒いリボンで纏め、奴隷の証なのか自作の首輪を填めている。

 今更だが長髪の登場人物多いな。狙っているわけでもないし、長髪属性はないはずだが・・・・・・はて?

「生憎と性奴隷の類じゃないから無理だ。というかただで貸すとかありえん。他当たれ」

「・・・・・・ずいぶん舐めた口きくじゃねえか、ああ」

 喧嘩っ早いことこの上ない連中にユイは呆れてテーブルに載せていた足を降ろした。

 仕方ないとばかりに立ち上がって向かい合おうとした刹那、突然メイスが飛んできた。どうやら気が短いらしく、突発的に手が出たと言ったところだろう。

 突然襲いかかってくる凶器に晒されながらも、ユイは冷静に・・・・・・ミクサの首根っこを掴んで盾にした。


「奴隷バリア~」

 ゴチンッ!!

「ミギャッ!!」


 余りにも凄惨な光景である。男が寄ってくる程度には顔立ちが整っているミクサは、今メイスで顔面をぶん殴られて鼻が折れて血塗れになっていた。

 これを見て傭兵達は呆然と立ち尽くしていたが、ユイは冷静にミクサをテーブルの上に投げ捨てた。

「・・・・・・危ないじゃないか」

『おまえの思考の方が危ないわっ!!』

 強姦紛いのことを考えていたとはいえ、流石にそこまで残酷ではなかったのか、傭兵達は口を揃えてツッコんだ。しかしユイは肩を竦めるだけで、懐から取り出した小瓶の中の液体をミクサに掛けている。

 おそらく回復薬だろうと立場を忘れて安堵する傭兵達だが、掛けられたミクサの様子が変貌した。

「アギャガガガギギギギギ・・・・・・!!」

「あ、間違えた。これ濃硫酸だった」

『何故持ってる!!』

 そもそもこの世界に濃硫酸なんてあったのか? というかすごいいい笑顔だな、間違えといて(誰とは言わんが)。

 流石に見てられなくなったのか、傭兵の一人、槍を担いでいた奴が慌てて自分の回復薬を取り出してミクサに掛けた。他はボロボロの顔にプラスケロイドが加わって化け物じみた顔と化したミクサを見て、目を覆っている。メイスをぶん回した奴に至ってはゲロゲロ吐いている程だ。

「おいっ、嬢ちゃん!! 大丈夫かよおいっ!?」

 あ、『おいっ』って二回重複している。・・・・・・ま、いっかただの呼びかけだし。

「あああ・・・・・・ユイ様からの暴力じゃなかったからいまいち気持ちよくないと言うか、やっぱり薬品は駄目だわ」

「変態だぁ!!」

 修復されて元の顔に戻ったミクサから後ずさり、傭兵達は肩を震わせていた。

 ここで一つ追記、奴隷状態のミクサちゃんはユイ限定の『ドM』である。

「で、どうしますユイ様。・・・・・・殺しますか?」

 そう言ってテーブルから飛び降りたミクサは、背中から巨大鉄扇を引き抜いて構えた。その様子を一歩下がった状態で、ユイは呆れて見ていた。

「・・・・・・一応こいつら命の恩人じゃねえの? お前にとっては」

「喧嘩売ってきたのはこいつ等な上に、相手が恩人であっても、敵ならユイ様は普通に攻撃してますよね?」

 シンキングタイム1秒。

「・・・・・・それもそうだな」

『いやもっと説得してご主人様っ!!』

 ご主人様もご主人様だが、奴隷も奴隷だな。・・・・・・何言ってるか分からないって、安心しろ俺もだ。

 さて、そろそろ締めるか。丁度視点変更のために置いてきた幽霊も来たことだし。

「ではふぎぇっ!?」

「待て、ミクサ。予定変更だ」

 飛び掛かろうとした瞬間、ミクサの背中を蹴り飛ばして傭兵達の手前に転がせるユイ。彼は既に気を今しがた入ってきた顔見知り達に向けていた。

「……どうやら仕事らしい。行くぞ」

「ふ、ふぁい……」

 割のいい仕事を求めて、ユイは奴隷のミクサを伴って顔見知り達のほうへと足を向けた。怯えている傭兵集団はガン無視で。

次回予告兼反省会

 次回の『ロックブラストの奇妙な日々』は~作者です。前々から考えていた『(旧)鍛冶屋の日々』と『(旧)勇者と奴隷の珍道中』、その他諸々のスターシステムごちゃまぜオリジナル仕様の物語『ロックブラストの奇妙な日々』が書けてうれしく思います。最近はやることがあほみたいに多いうえに、何かをやめようとすると逆に倍以上のタスクを抱え込む毎日で気晴らしに書いてどうにか0話目が書き終わりました。これからもリハビリと称してゆっくり書いていきますので、皆さんは思い出した頃に読みに来てくださいね。後感想は歓迎ですが、催促に関しては男作者からの罵倒が大好きなドM女性読者限定でお願いしますね。M男読者はノーサンキューです。ノーマル感想は誰でもいいですけどね。

『なんて自分勝手な……』

「……元々こいつは自称『読者を敵に回して高笑う男』だから、これでもまだ丁寧」

 というわけで次回『他にも登場人物がいるがストーリー優先で』をお楽しみに~。

「……年明け更新に銀貨1枚」

『……年末更新にイカサマ手引き1回でお願い』

 二次創作はアットノベルズ様へGO!!

 ……そっちも大分掛かるがな!!

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