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本能異常  作者: 伽藍の空
5/7

精神侵食05

テストが終わって、テンション上がっていたのに、次の日に渡されたのが、課題。その課題のせいでテンションが一気に下がりました。

そんな日常を過ごしています。どうも、伽藍の空です。


精神侵食も、いよいよ終盤に差し掛かりました。次でこの回は終わるかな?


では第5話始まり〜

***


闇…。

私が目を開くと、目の前に広がるのは漆黒の闇だった。何処までも続く闇…。

しかし、しばらくしてその闇は晴れて、段々風景が浮かび上がった。

「ここは、林道…?」

今目にしているのは、病院と私達の街をつなぐ一本道の林道。そこを私はひたすらに走っている。でも、ここで私は違和感を覚える。走っている感覚が無いのだ。いや、それだけでなく、体全体の感覚が無い。しかし、私の体は走ることを止めない。

しばらくして、目の前に人影が見えてくる。あれは…「刀耶!」

刀耶が私の前を走っている。何かから逃げるように…。

…多分今私は刀耶を追いかけ、刀耶は私から逃げているのだろう。まぁ、無理も無いか…。あんなことをしてしまったんだ。そんな相手から逃げない方がおかしい。

…でも、誤解は解いておきたい。あれは私が望んだことではないと…。

多分私は今それを伝える為に、刀耶を追いかけている、んだと思う…。

段々刀耶との距離が縮んで、もう目の前だ。私は、刀耶に話かけようと口を開こうとする。しかし、その刹那…

『うっ!』

刀耶がうめき声を上げて、前に吹っ飛ぶ。その理由はすぐに分かった。

また、私が刀耶に手を出したのだ。

「なんでまた…。どうしてっ!?」

そう呟いた瞬間、また目の前が闇に覆われる。

「見えた?今の風景」

「っ!?」

闇に覆われたと思ったら、突然頭に声が響いた。

…これは、私の声……?

「誰だ、お前…」

私はその声に問う。

「私は、坂神沙恵よ」

「何言ってるんだ!坂神沙恵は私だ!」

「ああ、言葉足らずだったわね。正確には、『本来の』坂神沙恵」

「…どういう意味だ、それ……?」

「簡単に言うと、生まれながらに持った『本能』、それに対する執着心が増幅した沙恵、かな?」

「まさか、『病魔』…?」「そうね、私は『病魔』のおかげで、この(うつわ)の所有権を手に入れた。そして、今までその所有権を握っていたあなたは消えてしまう。厳密に言えば、あなたの存在は死ぬの」

フフフ、と『本来』の私が冷たく笑う。

「…ふざけるな……」

「ん〜、何?」

「ふざけるな!私はこの体からもこの世からも消えるつもりはない!」

私は、『本来』の私を怒鳴り付ける。

「そんなの無理よ。あなたはここで死ぬ。これはもう決定事項、覆されない未来なのよ」

「何度も言わせるな!私は消えるつもりは……っ!」急に目眩が襲う。そして、少しずつ意識が遠退くのを感じる。

「ほら、そろそろ限界みたいね」

「…わ…私、は、消えたく…ない……!」

「さっきも言ったでしょ。これはもう決定事項なの。あなたがどう願ったって、この事実は変わらないの。…冥土のお土産にいいもの見せてあげる」

『本来』の私がそう言い放った瞬間、また目の前の闇が晴れ、風景が広がる。

私が目にしたのは、倒れ込む刀耶にまたがる私の姿。その手には、サバイバルナイフが。まさか…

「…や、止めろ……」

「愛しい(ひと)の最期を見れるなんて最高でしょ」「…止めろ……、止めろ!」

「止めないわ。私は、私の『本能』に従うだけ…。

…さようなら。

愛しい(ひと)…」

「止めろおぉぉぉぉ!!」…私はこんな未来なんて望まない。私が望むのは…。



この時、私の『何か』が目を覚ました。

















◆◆◆


「…さようなら。

愛しい(ひと)…」

『個体』は、僕の首を目がけて、ナイフを振り下ろした。が…

「なっ!?」

首に刺さる一歩手前でナイフが静止する。

僕は、すかさず『個体』の腹を蹴り上げ、後ろに後退し距離をとる。

一体どうしたのだろうか…。僕が疑問に思っていると、『個体』が何かを呟く。「か、体が言うことを聞かない…!?

それに、なんであなた、まだ消えてないのっ!」

『あなた』…?もしかして、沙恵の事なのか?

「なんで!体の所有権は、私が握っているのに、なんであなたが、体を自由に動かせられるの!」

『それは、な…、この体が私の、物、だからだ…!』「!!」

…今の声……。紛れもない、『本当』の沙恵の声だ。『刀耶退がれ!ここからは私の戦いだ!』

…私の戦い。それは、『病魔』との戦いをしめしているのだろう。

沙恵に出来るだろうか。いや、出来る。今僕が出来ることは、沙恵を信じることだ。

僕は無言で頷いた。

「何故!あなたの魂は、もうこの(うつわ)には、存在出来ないはずなのにっ!」

『言っただろう。私は、この体から消えるつもりはないって』

「だからって、あなたにそれができるわけがない!だって、あなたの精神は『病魔』に侵食されて、自我さえ保てない状態のはずなのに!」

『ああ、そうだ。あのまま精神を「病魔」に完全に侵食されていたら、今私は、こうしてお前を抑えつけることは出来ない。だが、その「病魔」を、逆に、侵食してやったとしたら…』

「そんなの出来るわけないでしょ!佑希の言ってたこと忘れたの?『病魔』は、不治の精神の病だってこと」

『知ってるさ。だけど、理屈はどうあれ私には、それが出来たんだ。

さぁ次は…

お前を侵食する番だ』

そう沙恵が言い放った瞬間、沙恵の手からナイフが落ち、その場に跪いた。

「こ、こんなことをしても、無駄よ…。『本能』がある限り、私は何度でも蘇る」

『ふぅん、そうか。でも、それも無理な話だ。私は、「侵食」するだけでなく、「本能」を「書き換え」もするからな』

「どういう意味なの…?」『つまりだ、お前という存在を「侵食」することで削除し、その上から私が望む「本能」き「書き換える」ということ。

「止めなさい…、止めなさいよ!!」

『そんなこと、聞く義理はない。

…じゃあな、「虚偽」の私…』

「止メテ止メテ止メテ止メテ止メテ止メテ!」

『虚偽』の沙恵の口調が、また聞き取りずらいものになる。

『私の「本能」、私が望むのは、「大切なモノを壊す」ことじゃなく、「大切なモノを壊す者を消す」ことだ!!』

『本当の』沙恵がそう言った瞬間、沙恵は悲鳴を上げて天を仰ぎ、その場に倒れた。

「沙恵!」

僕は、急いで沙恵の元へ駆け寄る。

「沙恵!大丈夫!?」

僕は、沙恵の体を揺する。早く『本当の』沙恵が無事であるか知りたい。

「ねぇ、沙恵!起きてよ!」

何度も呼び掛ける。すると…

「うるさい…」

沙恵が声を発する。紛れもない、『本当の』沙恵の声で…。

「沙恵!!」

僕は、思わず抱きしめる。「お、おい刀耶!」

「…よかった…本当によかった……」

あまりの嬉しさに涙が出てくる。僕は本能的に、沙恵を抱く腕の力を強めた。

「……なぁ、刀耶」

「ん、何?」

「そろそろ離してくれないか」

「どうして?沙恵って、こういうの嫌いだっけ?」

「…別に嫌いじゃない。ただ、苦しいし、何より…」沙恵は、少しの間を置き、顔を赤らめながら、こう言った。

「嬉しいけど、恥ずかしいんだよ。察しろよ、バカ……」



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