表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本能異常  作者: 伽藍の空
4/7

精神侵食04

訂正とお詫び


紗恵×

沙恵○

次から気を付けます。


さぁ本編始まります。

◆◆◆


あれからどれだけ逃げただろう。僕は、病院から出て林道を走っている。街へ向かう道はこの林道一本しかない。

♪〜

不意に携帯の着信音がなる。見ると、佑希さんからメールが来ていた。

…多分紗恵を押さえ切れなかったのだろう。怪我をしていなければいいのだが…。

そう思いながら、メールの内容を確認する。

『さっき言おうとした沙恵を止めるただ一つの方法。それは、沙恵を殺すこと。…後は分かるわね。未来を決めるのはあなたよ』

衝撃的な内容に言葉を失う。簡潔な文面に込められた事の重さに手が震える。

…沙恵を殺す、それは沙恵という『個体の』存在を消すことを意味する。既に、『沙恵』という存在は失われた。だからあの『個体』を殺したとしても、何も問題はないのだ。このまま放っておけば、佑希さんのように自分の目的の邪魔する人間を傷つけ、最悪の場合殺してしまうかもしれない。だから今存在する『個体』は、殺すことが得策なのだ。だけど…

「僕に出来るだろうか…」あの『個体』は、容姿は沙恵だ。今まで親しく接してきた人間を殺せるはずがない。たとえ、僕の知ってる沙恵で無いとしても…。現に、佑希さんも方法が分かっていたのに、沙恵を止められなかった。多分僕と同じ理由からだと思う。


沙恵を殺したくない。でも、犠牲者も出したくない…。

葛藤が僕の頭を支配する。そう思案に暮れていたとき……

「うっ!!」

僕は、何者かの蹴を脇腹にくらって吹き飛んだ。態勢を整え、そちらを見る。

「見ツケタ…」

「沙恵!!」

見ると死んだような目で微笑んでいる沙恵が立っていた。

…なんで見つかったんだ?ここは木と木が入り組んでいる林道の最深部。そう簡単に見つかる訳が無い…。『病魔』は、索敵能力をも特化させるのか…?

そんな考えを頭の片隅に寄せ、沙恵に向き直る。また不意を突かれて攻撃されては大変だ。

沙恵の動きに集中する。すると沙恵は、懐から何かを取り出した。手には銀色に輝くサバイバルナイフ。それには見覚えがあった。

「それは、佑希さんの…!」

間違いない。佑希さんが自己防衛のために持ち歩いていたサバイバルナイフだ。それを沙恵が持っている。まさか……。

最悪の状況を想定してると沙恵が突然口を開いた。

「…大丈夫。彼女は死んでない。ちょっと痛い目に合わせただけ…。

これは戦闘の最中に掏った(すった)……」

「え……?あぁ、そう…」一先ず安心する。それと同時に、今の沙恵の様子に違和感を覚えた。

…沙恵の口調が変わった。今までのような聞き取りずらい喋り方ではなくなったのだ。

僕は沙恵という『個体』に疑問を投げ掛ける。

「どうして、口調が変わったんだ?」

「…これは、『もう一人の沙恵』である私の意識が、段々この(うつわ)に馴染んできた証拠」

「じゃあ沙恵の、『本当の』沙恵の意識はどうなったんだ!」

「…ん?まだ消えてないわよ。でもまぁもうすぐ完全に消えるけど。そしたら、私はこの(うつわ)を完全に支配できる」

フフフ…、と笑う。消えてしまう存在(沙恵)を尊ぼうともしない冷たい表情で。…こいつは沙恵じゃない。『本当の』沙恵は不器用だけど、優しくて、心に温かさを持つ女の子だ。こんな冷酷な奴が沙恵であるはずがない。

僕はそう確信した。そして決心した。目の前にいる存在を消す(ころす)決心を。上着の内ポケットからカッターナイフを取出し、目の前の『個体』に向ける。

「僕はお前に殺されるつもりはないし、他に犠牲者を出すつもりもない。だからここで消えてもらう」

そう言うと『個体』は笑いだした。

「何がおかしい!」

「あなたが私を殺す?そんなの出来るわけないわ」

と笑い続ける。

「やってやるさ!」

僕は『個体』に向かって走りだす。

「ふぅん…。じゃあこれでも?」

そう言うと『個体』は、哀しそうな表情を造りこう言った。

「…刀耶、私を殺すのか?」

「!?」

僕は、反射的にカッターナイフを引っ込める。その隙を狙い、『個体』が攻撃を仕掛けてくる。

「うわっ!」

突然の攻撃に驚く。少し肩を擦ったようだ。

今のは間違いなく沙恵の表情だった。でも、もう沙恵の意識に体を操る力は無いはずだ…。

「言ったでしょう?私はこの(うつわ)を支配するって。それは即ち、癖や記憶までも支配することが出来る。それを頼りに生活すれば、周りの人間からは、私が坂神沙恵と認識される。ただ一つ違うのは、私は、『本能』のままに行動すること……。

…だから、刀耶、消すね」そう言って沙恵は、僕の心臓目がけてナイフを突き出す。僕は、ひたすら防衛に徹することしかできない。僕の頭は目の前の『個体』を沙恵と認識してしまった以上、僕は、攻撃できない。それだけ、沙恵を大切な存在として認識している。「くそっ…!」

…このままでは殺される。僕は一度撤退することにした。『個体』に背を向け走りだす。しかし…

「…逃がさないっ!」

そう言うと『個体』は、一瞬で僕の目の前に回り込み、腹部に突きをかましてきた。

「ぐはぁっ!」

地面に吹き飛ばされる。激痛で立つことができない。そんな僕に、『個体』は、顔に笑みを浮かべながら近づいてくる。

「…今度こそ、あなたを、私の大切な存在を壊す…」『個体』は倒れこむ僕にまたがり、ナイフを振り上げる。

「さようなら…。

私の大切な(ひと)…」

そう言って、『個体』は、ナイフを振り下ろした。

次かその次で精神侵食は完結になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ