邪神な彼女と会う前の
ナイさん出る予定だったんですが、もう1話か2話かかりそうです。
完全なものは不完全でなくてはならない。
いきなり何を言い出すのかと思うかもしれないが、これが僕、青雷 進斗の信条だ。
何て言ってみても日常生活じゃこんな信念を持っていても全く関係ないし、披露する機会もない。 いくら叔父が世界的な英雄であったとはいえ、僕は単なる一高校生だし、その叔父の遺言でつぶれかけのの探偵部に所属していても毎週毎週事件を解決するような人間じゃない。人に言えない特技や秘密だっていくつか持っているけど、それを加味しても僕は人間だ。
だから、困るんだよ。本当に困るんだ。
密室殺人事件の捜査なんて頼まれても。
「2035年5月4日、午前7時、バスケットボール部の女子が部室の鍵を開けると、2年6組の次原 鈴音さんが首を裂かれて死亡しているのを発見。ただちに警察が捜査を開始したところ、ドア、窓、その全てに鍵がかかっていたことが判明。スペアキーを所持する2人にアリバイは有り。マスターキーを持っていた教師も犯行に及ぶにはほぼ不可能との事――――つまるところ、密室殺人事件だったってわけだね――――この事から現場は頭を悩ませている――――ということだって、青雷君」
うん。何が「ということだって」なのかさっぱりだけどね。
この三日間僕たちの高校を震撼させている事件の概要なんか話されてもだから何なんだって感じだよ。
朝から僕の机の前に立ってやけに度が過ぎる説明口調で話していたのは同じクラスの仲波 真帆さんだ。これといった目立つ特徴は無いし、僕がひそかに恋焦がれているなんてことも無い。つまり、モブキャラだ。
「青雷君?」
「あ、ごめん。ボーっとしてた。
で、あの事件がどうしたの?」
「はいそうです。さっきも言ったけど、現場が頭を悩ませているんですよなー」
「はぁ」
「と、言うわけでおにいちゃんの安眠のために事件の解決に貢献してください」
…………何言ってんだこの人は?探偵部とはいえ高校生探偵でもなんでも無い僕に事件の解決に手を貸してくれだって?そんなことできるわけないだ「うん、わかった。警察の人にもわからない事件なんて解決できるかわかんないけど出来る限り協力させてもらうことにするよ」何言ってんの僕はぁぁぁぁぁっっっ!!!!???
「ほんと!!??」いえ、無理です。
「あぁ。任せて。役に立ちそうな人を知ってるんだ」いねーよそんな奴。
あまりに自身満々な僕の態度に安心したのか「ありがと~」といって去っていく仲波さん。だが僕は間違いなく役に立てない。
こんな時ほど母の家系を呪ったことは無い。母の家は平安時代に朝廷から直々に名前をもらった隠れ名家らしいのだが、男女問わず異性の頼みに対してほとんどの場合承知してしまうという、僕のような平凡を地で行くような人間には地獄のような性質を遺伝させている。生まれてこのかた何度かこの遺伝のせいで何度か危ない目にも遭っている。本当に勘弁して欲しい。僕はできる限り平凡に長生きして行きたいのだ。(……だが、家の家系は誰かを心から愛すると、命も惜しまずに行動するそうなので、結局は早死にするんじゃないかと半分諦めている。)