弟と青年期
とりあえず色とりどりの花が咲いている庭園に移動した。
兎さんが紅茶を淹れてくれている傍ら、夏希はクッキーを食べようと左手を伸ばす。
利き手である右腕は天使もとい思春期ジョージによって、がっちり掴まれている。
しかも真っ白な肌をしている2本の腕で、頭を夏希の肩に乗せながら。
「ジョージは食べないの?」
「夏希が食べさせて」
うるるとした赤い瞳とふわっとした柔らかい金髪が夏希の頬を擽るという最強のコンボにノックアウトされる。
「ふみゃー、か、かわ、かわいぃー」
ぐりぐりと頭を押し付けてクッキーを小さな口元に持っていく。パクリと食いつくジョージの口は小さすぎてクッキーが全部入らなかった。
「あうぅ、こんな弟が欲しかったよぉ」
夏希の弟は中学生、只今反抗期真っ盛りなのだ。
お姉ちゃんは、こうやって仲良く手を繋ぎながら一緒にご飯食べたいんだぞ。
まぁ、たまに見せるデレがいいんですが。
「ご飯だよー」
「夏希、まだ喰うのかよ。部活帰りにいっぱい喰ったのに」
「え、あれは別腹だって」
「肉まんとアイスとフランクフルトとパンにピザが?」
「うん」
「夏希ってどんな胃してんだ」
というデレ。
え、どこにデレがあったかって。
確かに口は悪く、夏希を姉だと思っていない行動だが弟は呆れながらも夏希の頭に手を置いて一緒にリビングに行くのだ。その手の優しさは、間違いなく弟の照れ隠しだと自負している。
まあ厨二病よりましだ。
ハンドボールの友達の中学生の弟は厨二病らしい。
まずコーヒーはブラックという虚栄に始まり、学校に行く時は眼帯と包帯を腕に巻いていく。
眼帯・・まあ、分からなくもないが、なぜ包帯と思ったが、それを聞いて納得というか唖然とした。
「皆、離れろ。俺の腕が勝手に・・」と腕を抑えながら叫ぶらしい。
うん、良かった、普通の弟で。
まあ、反抗期でも厨二病じゃなきゃいいか。
そう思い出していると袖をくいくいと引っ張っられた。
振り向くとドアップのジョージの顔だ。
「ん?どうかした、ジョージ」
首を傾げると更にジョージの顔が近づき、睫が長いと思っていると柔らかいものが唇にふにっと触れた。
「え?」
「もう、僕、弟じゃないって」
ぷん、と顔を膨らませているがそんな顔に騙されない。
今、確実にジョージの可愛い唇が触れましたよ、触れました。
勘違いしていました。ジョージは思春期ではありませんでした。青年期でした。




