表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/49

もう助けません






 誰もが死を確信した瞬間、トラックが耳を(つんざ)くブレーキ音とクラクションを鳴らした。








「おい、気をつけろよ!」


「は、はい」


 犬を抱きかかえながら呆然と夏希は返事をした。

 

 トラックの運転手は毒づきながら去っていた。生温かい排気ガスが千夏の髪を揺らして行った。


「夏希、大丈夫!?」

 

 反対側から涙声がかかる。

 見ると腰を抜かした友達が涙を流しながら心配している。


「あー、うん」


 聞き慣れた声に安堵して夏希はやっと動きだした。








 しかし犬が気の緩んだ夏希の腕からするりと抜け地面に立った。


「ったく、もう迷惑かけるなよー」


 夏希はしっしと追い払うが犬は何故か夏希をじっと下から見上げている。


「なんだよ」


 夏希はもう用は済んだとばかりに皆の元へ戻ろうと犬を無視し立ち去ろうとしたが犬は夏希のズボンを口で引っ張る。


「離せっつの」


「くぅーん」


「くぅーんじゃない。甘えた声を出すな」









 小さな身体の癖に力が強い犬に引きずられて工事中で穴が開いているところに連れて行こうとしているようだ。


「ちょ、ちょっと待て。私はお前を助けたんだぞ。それなのにこの仕打ちは無いだろう」







 後ろから友達の笑い声が聞こえる。普段から動きや小柄な体格が犬に似ていると言われている夏希が本当の犬に懐かれているために笑っているのだ。

 先ほどの心配なんてこれっぽっちも無い。

 







 他人事だと思って、ぐぬぬと犬と根競べをする。部活で鍛えた筋肉で踏ん張るがずるずる少しずつ真っ暗な穴に近づく。


「待つんだ、犬よ。さっきの態度は謝ろう、だから離してくれ。離してくれたら美味しいご飯をあげよう」




 美味しいご飯で犬の耳がぴくりと動いたが動きは止まらない。








「夏希、危ないよ!」



 本日二度目の友達の悲鳴を聞きながら犬と一緒に足が暗闇の中に入った。

 なんとか踏ん張るがこの犬は見た目より重いのか、犬がつかまっている足に体重がかかる。

 なんとかもう一方の足と両手でバランスをとろうとしたがバランス感覚が乏しい夏希は真っ暗な闇にとダイブする。




「の、のぉーーーーー!!」







 せっかく一難去ったのにまた生命が脅かされた。









一難去ってまた一難・・

これが人生・・・ふっ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ