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う、動けない






 あちゃーと額を押さえているアベルに何だか腹がたって頭を殴ってしまった。何なんだ、私にも説明をしてくれないと分からないじゃないか。私だけ知らないなんて、のけものにされた気分なのだ。



「痛いよ、夏希」


「私の心も痛いのだ」


「どうせ棘の生えた心でしょ」


「聞こえなーい!ああー!」



 子供のように耳を塞いで席を立って逃げ出した。












「ここどこ?」


 アベルの制止を押しきって(殴って)逃走したのはいいものの、また迷ってしまった。

 おかしいな、自分は方向音痴とは無縁のはずなのに。なんで、どこに行っても同じ壁だし、同じ扉しかないよ。


「ここはどこ?私は誰?」


 悲劇のヒロインを気取って手で顔を覆って崩れ落ちて見せるが誰もいない。・・・さて、馬鹿なことなんてしてないで、誰か人を探そう。

 きょろきょろと辺りを見回しているとピーピーとまるで息を吐くような声が聞こえる。けれど、どこから聞こえているか分からず、近くの扉を開けようとするが何か違う気がする。


「・・いや、まさか」


 そおっと下を見るとジョージが顔をあげながら「やあ、こんにちは」というように嬉しそうに見ているのだ。

 そんな表情が分かってしまう自分が嫌だ。




「ジョージじゃにゃいか。いいかい、ジョージ。私達の間で協定を結ぼうじゃないか。私のテリトリーはここからここまで、この中から入んないようにしよう」


 夏希は腕を広げて自分の領域を主張する。それから人さし指を突き立てて、兎相手に本気で言う。端から見ると危ない人だが、ここは自分のいた世界ではない。多少のおかしさは目を瞑ってもらおう。


 ジョージは分かってくれたのだろうか、小さく首を動かした。


「ジョージ、分かってくれたか!」



 あまりの嬉しさに膝をつき両手を広げるが、もちろんカモンという意味ではない。ただのノリだ。






 だがジョージはやはり動物だ。夏希の思いを汲み取ることができずジャンプして夏希に飛びついた。


「っつ、むー!」




 小さくなっていたのが悪かったせいか、ジョージが勢いよく跳ねた先には夏希の顔があった。

 ジョージのピンク色の鼻が夏希の唇にぶつかった。


 しかも赤ちゃん兎というのに力が強く廊下に押し倒された。そのまま鼻を押し付けられたままなため、夏希は触ることもできず、悶えることしか出来なかった。


 端から見ると、背中を廊下につけ腕を天に上げて、ぷるぷるしている。その姿は何だか、悪役が味方にでも裏切られて殺され、死にたくないと言っているような姿だったが、見ている人は誰一人いなかった。














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