嫉妬は怖いものです
そんな兎さんとジョージと一緒に話しながらご飯を食べていると、また勢いよく扉が開けられる。
デジャブだ、と思っていると見覚えのある男が夏希の部屋は自分のものだというように入ってきた。堂々すぎるだろ、という言葉は置いておくことにする。
「今日はどこに行こうか」
アベルが朝食中に入ってきて夏希の隣の椅子に図々しく座る。そして夏希の皿から摘まんで自分の口に入れる。
「行かん」
「あ、城探検がいいの?」
「部屋から出ん」
「じゃあ、どこから行こうか」
「人の話を聞け」
駄目です、やはり宇宙人に言語は理解できない模様です。これじゃあコミュニケーションもとれずに人類は侵略されるしかありません。
いや、まだある。言葉が通じなくても伝えられる方法がある。
「俺の俺の俺の話を聞けーぇ。二分だけでもいい。お前だけに本当のことを話すから」
「じゃあ行こうか」
沈没であります。誰だよ、音楽は万国共通って言った奴。音楽が通じない野郎がいるんですけど。
アベルが夏希の日に焼けた腕をとると猫のような鳴き声が聞こえた。
ジョージが兎さんの腕の中で耳をぴんと立てて足を動かしながら威嚇している。
「ああ、トイレに行きたいの?」
「夏希、酷いよ。彼は俺に嫉妬してんのに」
「Shit!?」
「・・嫉妬ね」
「嫉妬って、あの昼にやっている女達が男を取りやって、あの手この手を使って相手を貶めようとする、あの嫉妬ですか」
「そこまでじゃないと思うけど」
「なんて恐ろしい子!」
夏希は手を口元にやり、昔の少女漫画みたいに白目にしたいところだが出来なかった。元々そんなに睫は長く無いし、目の中に星も無いのだ。
なんて子なのかしら。こんな小さな身体に憎悪が詰まっているのね。そうして、相手をどんなふうに絶望へと突き落とすか考えているのね。
まさか、その小さな前足にはカミソリが。もしかしたら床に画鋲が落ちていて踏ませる気なのね。
「末恐ろしい子」
夏希はまた言うとジョージから距離を取って、恐怖で震える。
まるで恐ろしい物を見る夏希にジョージの耳が激しく垂れ下がる。
「相手ながら可哀想すぎる」
「いやいや、恐いのは裏工作しているジョージでしょ」
「・・ジョージ?」
ジョージは誰だというように見るが一人、いや一匹しかいない。
夏希は兎さんに抱えられているジョージを指さして教えてあげる。君の濁った瞳にはジョージが見えないのかね、ほうら、心の目でみてごらんよ。
「名前つけたの?」
「ううん、ジョージって呼んだら反応したからジョージって名前かと思ってたんだけど」
「ああ、つけちゃったんだ」
え、いやね、宇宙人君。私は名前なんかつけてないって言ってるのに君の耳はお飾りなのかな。犬のくせに耳が悪いって駄目でしょ。
今、思ったが夏希って思いこみが激しい・・