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君にとど・・






 長閑(のどか)な風が吹き、雲がちょうど太陽を隠した中、2人の第一次言い争い大戦が勃発していた。両者とも大声で負けてはおりませんが、おっと何か動きがあったもようです。



「帰らせて」


「嫌だ」


「帰らせろ」


「い、や」



 何度も繰り返すが相手は折れてくれません。彼の心はまるで目の前に聳え立つ富士山です。私はまだ富士山の土も踏めていないようです。


「お礼なんていりません」


「俺が嫌なんだよ」


「助けた人がいいって言ってるんですぜ、旦那。もうそろそろ折れましょうぜ」


「夏希が折れてよ」


「人の名前を軽々しく呼ぶな」



 どうして知ってるんだと思ったがこの犬を助けた時に何人もの友達に呼ばれていたな、と思い出した。流石によく聞こえる耳ですこと。






「人間、特に女の子って皆、動物が好きでしょ。それなのに夏希はさ、動物が嫌いなんて聞いてないよ」


「はっはっは、言ってないからな」


 夏希は腰に手を当てて乾いた笑いを出しながらアベルを見据える。



 確かに過半数以上の人間は動物に癒やされ、愛で一緒に生活していることだろう。しかし何事にも例外はある。




「夏希、本当に女の子?」


 真っ平らに近い夏希の胸を無遠慮に触る。




「あれ、ちゃんとあった」


「死ねっ!!」



 なんて失礼な奴なんだ。人を勝手に連れて来たと思ったら女じゃないと?どれだけ人を馬鹿にすれば気がすむんだ。飼い犬に手を噛まれた気分とはこのことだ。




「明日の太陽が拝めないようにしてやろう」


 ぼきぼきと指の関節を鳴らして臨戦態勢を整える。

 いつでも来い、乙女の名誉をかけて戦ってやる。乙女の名誉はこんな野郎に負けるほど小さいものではないのだ。



「落ち着いて。俺は夏希を喜ばせたいんだから」


「帰してくれたら超喜ぶ、崇めたてる、毎日お礼言うから」


「俺がなんかしたいの」


「いらんわ」



 話が平行線を辿る。この宇宙人とはちゃんとした会話ができない。






「・・もう、いい。何でもいいから礼をして早く帰してよ」


「りょーかい」



 結局、夏希の方が折れた。夏希は説得を諦めて早く帰らせるように頼むこととした。

 願わくは、彼が直ぐに飽きてくれますように。








 この想いは君に届くのだろうか。












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