掌から滑り落ちる儚い光
更に意味分からなくなったかもです。
今回もよろしくです。
人間は、死に直面したときに、それの本当の恐ろしさを知る。それまでは、それ自体を理解していても客観的に見ることで、それに触れることを拒むことができる。しかし、死と正面きって向かい合うと客観的に見ることはできなくなる。
たとえば余命宣告をされたとき。
たとえば事故に遭ったとき。
たとえば今の帝のように、すぐ目の前に自分の死が見えるとき。
そんな時に、死を初めて主観的に捉えることができる。そして恐れを感じてしまう。
処刑の時間が刻々と迫る。
帝が連れてこられた場所は、小高い丘だった。そこには、帝と赤髪の青年と数人の兵士がいるだけで、大掛かりな処刑道具に見えるようなものもなく、本当にただの丘だった。
――――――――どうやって、殺されるの?
丘の中央に連れてこられた帝。そこには一つの机と、その上に小さなサファイアの魔石があった。困惑しながら、ここまで連れてきてくれた赤髪の青年の方を見やる。
「オマエノショケイホウホウハ、ソコニアルマセキヲツカウ。コノケントイッショニナ」
そう言って一振りの剣を帝に差し出してきた。
「ジブンデジブンニ、サイゴヲアタエロ。コレハモットモ、カルイショケイホウホウダ。オマエノツミハ、オモクハナイ」
帝は一瞬躊躇ったが、それでも剣を取った。彼らは帝に、最も敬意をこめた処刑を与えてくれた。ここで逃げる訳にはいかない。しかしその覚悟もむなしく、剣を握る手は汗でまみれ、足は震えている。
帝の持つ剣に、赤髪の青年が魔石をはめ込もうとした刹那――――――――――
それは明るい光を放ち、その場を光で埋め尽くした。
「な、何?」
「Qu'est-ce que c'est, vous savez?」
帝や赤髪の青年などの声も、光に飲み込まれ消えていく。その光は柱となり、雲を突き抜け天まで届いた。
その光が弱まったとき、しかしその中にいた者たちは一人残らず意識を失っていた。
――――――――…かど。……ど。み…ど。みかど。帝。
――――――――もう自分を捨ててしまうのか?
――――――――もうその命は、必要ないのか?
誰かの、声がした。それは今まで聴いたことのない、しかしどこか懐かしい声だった。
――――――――ではその命、いただいても良いか?
――――――――良いのか?
良いわけ、ない。初めて命を失うことの恐ろしさを知ったのだ。できるならこの命、もっと役立たせてから失いたい。誰かに譲るなど、真っ平だ。
――――――――しからばその命、助けてやろう。
――――――――お前に、新たな時間を与えよう。
――――――――その中で、お前はお前として生きるが良い。
優しく響いたその声と共に、帝の意識は更に遠のいていった。
自分で自分を呪います。
あまり文章を書くことが得意ではない作者を、
どうか恨まないで下さい。
そして、次回も読んで頂けると嬉しいです。