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伝説の魔王陛下になるために。  作者: ALFA
第一章 世界は一つじゃない
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自分で立とうと決めた日

また長めになっちゃったかなぁと

自分を呪いつつ書きました。


今回もよろしくお願いします。

 帝の後ろには、いまだに身動きの取れない透がいた。



「人質をとって脅すのが、あんたたち〝インメンス〟のやり方なの?」


 テオドールはただ黙っている。ただそれは、無言の肯定でしかなかった。帝は相手の言うとおりにしなければならない。帝には、透を助け出して二人から逃げる事も、透を見捨てる事なども出来ない。




「…分かったから、透、離してくんない?」


 相手の言うことを聞きながらも虚勢を張る。そうすることで自己を守ろうとする。それ自体が自分の弱さを表していても、それが相手に伝わっていようとも、相手に飲み込まれないようにしなければならない。


「いいでしょう。ラインホルト」


 テオドールがそういうと「はい」とラインホルトが答え、とたんに透は身動きが取れるように――――はならなかった。確かに身体は動いた。だが倒れた。意識を失っているようだ。


「何したの?人質には普通、手を出さないのがルールじゃない?」


 帝は問う。問いながら、テオドールを睨みつける。そんな帝にテオドールは馬鹿にしたような笑いを漏らす。




「フフフ、別に。ただ少しの間眠ってもらうだけです。そして、あなたの情報を記憶から消さしてもらいました」


 その言葉に、帝は目を見張る。



 


 記憶を消した。記憶を消した?―――長い間帝と透は過ごしてきた。その時間を、消した?大切な時間を?




「…っ、そ、んなの、嘘、だ」


 帝の声は震えていた。そんな声で発した言葉は、一体何の意味を持つだろうか。帝には分かっている。こんな余裕たっぷりの彼らが、そんな嘘をつくはずがない。そんな嘘をつく意味がない。帝の言葉は、ただ帝の動揺を表しているだけだ。それだけは理解した頭には絶望の二文字が浮かんだ。




「本当に、そう思いますか?」


 まるで帝の心を見透かしたように―――いや、動揺しているのも理解しているのも分かっているはずだ。その中でもそう返してくるのは、帝をさらに揺さぶっているだけだ。そう分かっていても、どうしても動揺してしまう。


「…っお、思わ…ない…」


 さっきまで張っていた虚勢は、もはやその存在など微塵も残ってはいない。


「彼の記憶を消されたのが、そんなに悲しいですか?ではもうひとつ伝えておきましょう。他の皆さんの記憶からもあなたの情報を消さして頂きました。


     ≪あなたはここに存在していなかった≫ということです。


この世界でのあなたの居場所は、我々〝インメンス〟にしか無くなってしまいました」


「…どう、いうこと…?」


 もはや驚きしか出てこない。悲しみもなく、ただ驚くだけ。頭では理解している。この世界のすべての人間から、《星漣寺帝》の存在が消えたのだ。記憶が消えたのだ。


 普段ならばそんな魔法みたいなこと、信じない。だがそれを信じてしまうほど、今の帝はボロボロだった。みんなから忘れられた。それを理解している頭は、しかし身体を支配することは無かった。だから涙すら流れない。いや、別に忘れられたって構わない。


 しかし、それでも透から忘れられるのはつらい。それでも涙は流れなかった。それについては、頭も理解しきれていない。≪忘れられた≫ことは理解していても、≪これからどうなるのか≫が理解できないのだ。テオドールの言う事を聞くしかないのにそれを認められない。帝の身体は、とうとう立つこともままならずその場に座りこんでしまった。




「お分かりいただけましたか?では、ついてきて下さい。すぐ着きます」


 そうやってテオドールは優しく手を差し伸べてきた。透を失った今、帝はこの手に縋り付くしかない。そうしなければ、帝は生きることができないだろう。だがその手をとることを躊躇う。彼らを完全に信用して良いかも分からない。



 何も返事をしない帝に、テオドールも少し困ったようだ。もう他に方法がないとでも言うような言い方で言った。



「しょうがないですね。あなたの記憶も消しましょうか」



 あなたの記憶も消しましょうか


 その言葉は、どれだけ帝を救ってくれるだろうか。すべてを忘れ、彼らに縋り付いて生きていくのも良い。




 ――――本当にそれで良いのか?


 自己を忘れ彼らの言いなりになる。確かにそれは帝を楽にしてくれるだろう。しかし完全に信用していない相手に身を任せることを、是として良いのだろうか?




 ―――否。たとえこれが最期になろうと、相手の思うままに動かされるなど真っ平だ。帝は恐怖する気持ちと絶望する気持ちを心の奥にしまい、しっかりと自己を保ちながら言う。


「そんな事、しなくて良い。ついて行くよ、あんたたちに」


 そう言いながら差し伸べられていた手をとる。しかしそれは相手に縋り付くことではない。帝が自分で立っていけるようになるまでの踏み台だ。


 帝はそう心の中に刻み込んだ。




 こうして星漣寺帝は世界から消えた。


どうでしたでしょう。

話がかなり急展開かもです。


次回も読んで頂けると嬉しいです。

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