神様、お賽銭は全額返金で! ――仁義なきくじ引き、生贄は私。
「来週は校外学習だが、親睦を深めるために班分けは……『くじ引き』で行うからね」
吉田先生は穏やかにそう告げた。
4月も終盤になりつつあるこの時期に校外学習を行うのは珍しい。
海音高校では、4月の半ばに『歓迎遠足』を行う。しかし、今年は雨が立て続けに降っていたため実施されず。
代わりに校外学習を行う事になったのだ。
「(神様…!今度こそお賽銭100円の奇跡を見せて……!)」
私は自分の番が来るまで叫びにも似た祈りを机の上で1人行っていたのであった。
ーー数十分後。
「全員、クジは引き終わったかな?じゃあ今からクジに書いてある番号の席に行くように」
先生の声を皮切りにクラスメイト達はそれぞれ自分の班の席に移動し始めた。
(私のクジは3班!どうか…どうか、あの腹黒がいない班でありますよーーに!)
心の中で念じながら班の席にいくと、そこには居たのは、
「もしかして…翠も3班?私も3班だったよ、よろしくね」
親友のユキちゃんだった。
「ユキちゃぁぁん!」
「(…勝った。友達と班が一緒になるなんて、、、ありがとううぅぅ!かみさまぁぁあ!)」
今なら私、空を飛べそう
喜びで変な思考に走っていると「ガタッ」と隣で椅子を引く音がした。
挨拶をしようと笑顔でそちらに振り向くと
「やっぱり、俺と翠って切っても切れない運命の糸で繋がってるんじゃね?つーわけで校外学習でもよろしくな…翠」
ニヤリと意地悪く笑う顔、そしてソイツの手に握られているのは、『3班』の字が書かれたクジ…
「オーマイガーァァァァア!!」
私は机の上で頭を抱えて叫んだ。
「アンタと班にならないように、朝から神社でお願いした私の気持ちとお賽銭かえせぇぇぇぇ!」
「無理無理。だいたい神様なんて信じるから、叶わなかった時に絶望するんだぜ?(←くじ引きと分かる前からずっと神社に通い続けたヤツ)」
「うるさぁぁい!この顔だけ野郎が!」
「えーなになに?顔がカッコイイて褒めてんの?お前、俺のことそんなに好きなのかよ」
「ねじ曲がった解釈をするな!キモイ、近づくな!寄るなぁあ腹黒男がぁあ!」
2人の言い争いがヒートアップしていく中、半泣きの小坂くんが「俺も3番だった…神よ…アーメン」と言いながら遠くを見て呟いていた。
ー数分後
ユキちゃんに宥められ事態が収束した後に
「よっしゃ、如月と白川さんの班じゃん! ライブアリーナの最前列ゲット!」
「白川ちゃんだよね!自己紹介から面白かったから話してみたかったの〜!」
と言いながら、クラスメイト2人がやってきて6人班が完成したのであった。
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「全員、自分の班の席に着いたか〜?じゃあ校外学習の流れを簡単に説明するな〜」
その後は来週に向けての校外学習についての説明が続いた。時折、横から視線を強く感じたが私は気付かないふりをして全て無視をした。
「じゃあ最後に、校外学習での役割分担だが、男子は薪割り、女子は料理担当だからそのつもりで来るよーに。あっそうそう、男子は重労働だから、終わったら女子の手伝いに行ってもいいから」という吉田先生の追加情報に、2人の男子は「小坂、いいか、俺たちは如月が薪割りから戻るまでの『つなぎ』だ。翠ちゃんを逃がすなよ……」「お前、浮かれてた癖に何気に如月が怖いのかよ」「当たり前だろ、触らぬ如月に祟りなし、だ」「確かにな」と誰にも聞こえないくらいのボリュームで今後について話し合いをしていた。
そして隣からは、「へぇ〜……了解です」
とニヤリと笑いながら呟く声が聞こえた。
私は顔が引き攣るのをこらえるために想像上で幼なじみに正拳突きを何度も食らわせるのだった
ー放課後ー
❮翠side❯
翠は、犬のぬいぐるみに抱きつきながら、絶望していた。
(最悪だ…。碧と同じ班なんて何が起こるか分からない…こうなれば何が来てもいいように備えとかないと)
翠は犬のぬいぐるみに向かって、必死に「対・碧用」の迎撃シミュレーションを繰り返していた。
(シュミレーションが完成するまでは…眠れない!)
❮碧side❯
「翠と同じ班になった」と喜びながら猫のぬいぐるみに抱きつく碧の姿があった。
(ヤバいヤバい、同じ班ってことは、翠の手料理が食べれるて事かよ…!?薪割り急いで終わらせたら料理してる翠の姿とか、『上手く作れたか分からないから味見して』てまさかの「あーん」イベントもあるって事か!?なにそれ、ヤダそれ、もはや、新婚のやり取りじゃねーか!!!)
夜中になっても碧の妄想は、ますます膨らんでいく。
(ヤバい…楽しみ過ぎて眠れない)
必死になる翠とニヤける碧。2人の心は一瞬だけ1つになっていたのであったーーーー




