地球滅亡予定日 当日その2
ここは非公開のドーム状の会議室。ここには年2回、世界の大富豪や政治の支配者たち100人が集結する。
“今回の一件”について話し合っているようだった。
「いやぁ、今回は実に愉快でした。手間とお金はかかりましたがそれだけのリターンが得られたと言って良いでしょう」
「最初、プランを聞いたときには驚きましたよ。でもこんなにも愚民どもがあたふたするとはね。想像以上の反応で楽しめました。
いったいどんな工夫をされたんですか?」
「結局のところ政治家やマスコミなどの“上”を抑えてしまえば後はどうと言うことは無い。彼らもお金で動かせる。
逆らったり疑問を持ったりするやつらは殺してしまうか、“気の触れた奴”と言う事にしてしまえば良い」
「ほとんどの奴らはまともな観測能力も無いから“隕石衝突“なんていくらでも捏造できる。
ただ、天文学者でも愚かにも“真実を告発”しようとした奴らがいましたなぁ。
我々に従っていればいい環境で今も暮らし、将来も約束されていたというのに……」
「“真実はいつも闇の中”と言う奴ですな。はははは!」
「“正直者が馬鹿を見る”と言うのはいつの世の中にも言えるというもの。それを理解できていないのであれば”真の意味の賢人”ではありますまい」
「火星に飛び立ったロケットは?」
「無事撃墜を確認しました。彼らは当選した瞬間は”勝ち組になった”と喜び勇んでおりましたが、今は宇宙の塵となりましたな」
※裕司は火星に行く選択をしなくて良かったという事です。
「ハハハハ! 最終的には星になれたんだからある意味勝ち組じゃないか。良い気分のままあの世に行っただろうよ」
「ある意味一番の幸せ者かもしれませんな」
そんな風に彼らは口々に“今回の成果”を話し合っていた。
中央にいるマントを着た男はその中でゆっくりと立ち上がる。
「皆、浮かれている場合ではないぞ」
笑い声はパッと止まる。マントの男は位も非常に高いようだ。
「お前たちもその本性を見せてはいけない。世間的には慈善家や投資家、名家の人間と言う事でまかり通っているのだから。
ここで喜び勇んでいることが分かれば愚民どもと同じレベルまで下がったことになる。
内面と言うのは次第に露わになってくる・それをよく理解しておくことだ
我々は淡々と”新世界”を構築していけばよいのだ」
「はっ、申し訳ありません」
その場にいる全員がそう言って沈黙し、マントの男の次なる言葉を待った。
「愚民どもが滑稽に争い合う事は“副産物”に過ぎない。
暴力的な人間を消し、そして我々の組織に刃向かうものもついでに消したのだ。
計画はすべてコンプリートしたのだ」
「今後、生き残った愚民共にはどう説明するつもりですか? あれだけ散々毎日マスコミやSNSを総動員して煽り続けたというのに隕石が衝突しなかったというのは納得がいかないのではありませんか?」
「皆が神に祈ったから回避できたとでもすればいい、実際に宇宙のことなんて分からないのだから。
もし、また誰かが最初からNW459が観測もできなかったという者がいるならそいつらは始末しろ。
若しくは精神異常者だとして病院に送りこめ」
※「地球滅亡予定日まで 残り21日」でジャックされたのは正しい告発だったということのようです。
「それは、素晴らしい案ですな。人間はそれらしいフィクションを信じる生き物。
何となく違和感があってももっともらしい理由付けさえあれば信じてしまう。
今後もそうやって愚民どもは踊り続けるのでしょうな。
”隕石を回避できた”と宗教にお墨付きを与えればまたそこに群がるでしょうし」
「情報を選別できずパニックに陥るような無能な人間は消えてもらった方がこの地球のためだ。
人口が増えすぎてしまえばその分環境が壊れていくからな」
「今はあまりにも多すぎますからな。5億人ぐらいが適正でしょうから。
今回パニックになって一気に50億人ほどになりましたが、まだまだと言うところですな」
「そういうことだ。“人類選別“を”イベント“を使って今後もしていくぞ。
我々が一枚岩になれば愚民がいくら数が多かろうと騙すことができるからな」
「自分で情報を精査出来ず、テレビや新聞の報道を鵜呑みにしてしまう奴らがあまりにも多いからな」
「そう。後は各種マスコミ、SNSで流してしまえば全ての世界の人々を支配できる。
かつては神だと思っている存在と権力機構とが融合することによって権力を思いのままにしてきた。
今は各々のチョークポイントを抑えることによって我々の意のままに思考を操り世界を制覇できるのだ。
「ホント、同じホモサピエンスとは思えないほど下等ですな。
これまでだって金が欲しいという者に対しては情報商材や上しかもうからないようなネットワークビジネス、競馬やパチンコと言ったどうしようもない商品を紹介する。
SNSで本来は必要もないブランド商品を紹介させて射幸心を煽り残価設定ローンや分割払い、リボ払いで契約させ、馬車馬のように働かせる――」
「これまではそれで良かったわけだが、今やロボットやAIで人間は必要なっていく。
知能の低い人間は淘汰されてしかるべきだ。
ましてや増えすぎる状況ではこれらの行動は正当化される」
「それが自然界の掟ですからな。自然界であれば食うか食われるかの社会だが、人間同士であれば共食いはプリオン病など様々な病気リスクが発生する。
ただ、人類は知能や技術を操れることを総合すれば最も強い存在になっている。
だから今回のように情報弱者同士で殺し合いをするのがお似合いだ」
「いやいや! ついこの間起きたばかりで警戒心が強いんじゃないか? もう少し間を開けてから実行するべきだ」
「今回の一件のインパクトが大きすぎて忘れてしまっているかもしれませんぞ。
人類は思ったよりも忘れやすいですからな」
「いずれにせよ近い将来、今回厳選したサピエンスも減らしていくことになるでしょうな。
ま、一定の数は残さないと。あたふたと我々の起こしたイベントで右往左往する姿が見れなくなるので楽しみも減るのでバランスも大事になりますな」
「確かに、強者同士の戦いは ブラッド・スポーツ(※動物同士で争わせる競技のこと)の一環として定期的に企画するのはアリですな」
このように一般庶民をまるでゲームに出てくる登場人物やデータかのように翻弄する真の支配者層の笑い声が、今日もどこかで響いたのだった……。




