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30日後に巨大隕石が衝突すると知らされた世界で、本当に大切なものを見つけた  作者: 中将


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地球滅亡予定日まで 残り1日

隕石衝突の前日――これまでは「幸せだった過去」について振り返ることが多かったのだが、「失ってしまった未来」について気になってきた。


「いよいよ隕石が衝突するのが明日なんだけど、由利は何か人生でやり残した事って無い?」


特に由利がこのことについてどう思っているかについて突如として興味を持ったのだ。


「……どうだろ。そもそも何か人生で特別にやりたかったことって無かったような気がする」


こういう異常事態に陥った際には、ほとんどの人間は生きる意味なんて見出すことができないのではないだろうか? それこそ、宗教家みたいに生きる使命みたいなのが生まれ持って与えられた人でもなければ……。


「そうなんだ……と言いたいところだけど僕も何か特別に何か目標があったわけじゃないね。

敢えて言うなら”由利とこれから先も幸せに生きていきたい”ということぐらいかな。

由利は人生設計については何かあったの?」


由利はちょっと顔を赤くした。


「裕司がそう言うならカミングアウトするけど、あたしは裕司との子供を産みたかったな……。

裕司と幸せな家庭を持って、子供と一緒に暮らしたかった……。

私の両親に与えてもらった以上の愛情を子に注いで、とにかく抱きしめてあげたかった……」


由利が妙に体の関係を求めてきたのはそのためだったのか……。

どうしてもその身に宿したい気持ちが強かったのだ。


そう思うと胸が熱くなってきた……。


「由利がそんな人生設計を立てていただなんて……」


「でも大丈夫。そんな悲しい顔をしないで。

夢が叶わなくても裕司とくっついているだけでそういった幸せな満たされた気持ちになれるんだ……」


ただ由利と触れ合っている場所だけは暖かい。

しかし、逆にお尻の方が重くなりトイレに行きたくもなってきた……。


「ゴメン、ちょっとトイレ行ってくる。すぐ戻るからさ」


「うん。気を付けてね」


由利が思ったよりも僕との将来を考えていたことに正直言って驚いた。

でも人生設計と言えばそういうことまで考えるよな……。


ふぅ……スッキリした。あれほど大きいのは久しぶり出たな……。空木さんのところでもどこか緊張していたのかもしれない……。


「イヤアアアアアア!!!!」


空気を切り裂くような叫び声が木霊した。あれは由利だ! と思った瞬間テントに向かって足がもつれながらも全力疾走した!


「由利ぃ! どうした!」


僕も叫びながらテントに戻ったが信じられない光景が広がった。


昨日、配給に割り込んで食料を奪っていった「男」の鉢巻きを頭に巻いた大男が、震えている由利の服に四つん這いになりながら手をかけているのだ!


「おい! お前ぇ! 何をしている! そこをどけぇ!」


自分でも驚くほどの声が出た。大男も流石に振り返った。


「良いじゃねぇか! 強い者が食料も! 女も! 何もかも手に入れるんだ! そんな俺のための理想的な世界になったんだ! 隕石が衝突する前に堪能しつくしてやるぜぇ!」


目をギラつかせ、舌なめずりをしながら大男はそう叫んだ。


僕の手はすでに由利の両親を葬ったことですでに汚れていた。


由利を守るためならなんだってできる!


「喰らえぇぇぇぇぇ!!!! 由利から離れろぉぉぉぉぉ!!!!」


僕はテントを抑えていた大きな石を持って思い切って振り上げた。大男より高い位置にいたのが幸いした。

頭にダメージを与えればコイツでも無事では済まないだろう!


だが、男は頭をスッと回避した! しかし、肩には振り下ろすことができ、そこから血が滲みだした!


「ちぃ!」


致命傷は回避したものの男は大きくよろける。


ここでうろたえてはいけない! 僕がやられたら由利が犯されてしまう! それだけは命に代えても防がなくては!


すかさず二の矢として男の指を狙った。


「ちっくっしょぉ! 俺の指がぁ! 痛ぇじゃねぇかぁ!」


ギロリと目が光って僕の方に向かって来ようとする。だが、僕はひるまなかった。


「ここから去れ! さもなくば僕は本気で戦うぞ! 無事で済むと思うな!」


到底、自分の口から出た声とは思えないほどドス黒い声が出た……。


「くそっ! これ以上やってられるか! 他の奴にするぜ!」


そう捨て台詞を残して大男は去っていった……。


僕はその場に石をゴロリと置いた……。肩から力が抜けていくのが分かると同時に、体の節々が痛み出した……。


「はぁ……はぁ……由利、大丈夫か?」


僕は返り血で黒く汚れた手を草で拭きながら聞いた。


「う、うん……大丈夫。裕司がギリギリのところで駆けつけてくれたから」


「ゴメン……。僕、とてつもなく怖かっただろ?」


ハッキリ言って自分が自分でないとすら思うほどに”豹変していた”と言っても過言ではなかった……。


「ううん。むしろ、カッコ良かったよ。裕司以外の子供を例え1日であったとしても妊娠したくなかったから……。

助けてくれて本当にありがとう……」


由利の手はまだ震えていたので僕は両手で包み込むように握った。すると徐々に震えは収まっていく……。


「いや、由利の結婚相手として当然のことをしたまでだよ。由利に何もなく、追い払うことができて本当に良かった」


「そ、そうだよね……子供の前に結婚だよね……」


由利は今更気づいたかのように顔を真っ赤にして俯いた。

もう毎日のように交わっているのにそこで反応するなんて本当に変わった奴だ。


完璧とは程遠くどこか抜けていて世間の感覚とズレているからこそ魅力があるようにも思えた。


あれほどの大男を撃退できたのは奇跡と言っても良かった。

火事場の馬鹿力か、由利を助けるためか。ともかく、僕の体のどこにそんな力が内蔵されていたのか自分でも知りたいぐらいだった。


「それにしても疲れた……この半月ぐらいでもう人生1回やりつくしたような気分だよ……」


家も失い 金で作ったヘンタイの要塞や暴力が支配するような地獄のような世界を味わった。


でも、もう明日には僕たちはおろか地球そのものが隕石の衝突によって火の海や巨大津波に包まれて終わる。


これで楽になるんだ……。苦しみから自殺することなく自動的にこの世から逃れることが出来る瞬間から決まっているというのはある意味幸せなことなのかもしれない。


「裕司は疲れているんだよ。本当によく頑張ったよ。今日はあたしが上になるから――ね?」


由利はそう言いながら服を脱ぎ始める……。


「あ、ああ……」


少しでも妊娠する確率を上げたいのだろうか……。

昼は痣が多い部分を庇う仕草が多いのだが、夜はよく見えなくなるためかまるで別人だった……。


しかし、思いの丈を先ほど聞いてしまった以上、無下にすることも出来ないなと思ったのだった……。


ただ一方で夜には耳を塞ぎたくなるような叫び声が公園中を木霊する……。どこかで誰かが襲われているのだ……。


でも、この悪夢もこの夜を過ぎればいよいよ明日は隕石衝突の日だ。人生最後の日をどういう気持ちで迎えるのか自分でもある意味興味を持ったのだった……。

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