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30日後に巨大隕石が衝突すると知らされた世界で、本当に大切なものを見つけた  作者: 中将


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地球滅亡予定日まで 残り10日

昨日の総務省の役人が来てからというものの、由利は膨れっ面でまともに会話もしてくれない。


何を話しかけても『裕司が火星に行くことを決めてくれたらね』の一辺倒で全く取り付く島もあったもんじゃない。


僕のあまりにも無意味過ぎる幸運を恨んだものだ。この場で火星行チケットを競売にかけて食料と交換したいぐらいだよ。


もっとも、スマートフォンの電源はゼロだし、電気も使えないこの状況下で競売する方法も知らないけども……。


「どうしたら良いんだ……」


由利のいなかった世界の絶望、そして由利を追い求めることによって生命エネルギーを滾らせた(たぎらせた)日々を考えれば火星に行かない選択一択になる。


しかし、 一番愛している由利が――置いて行かれるはずの由利が火星行きを強く勧めてくるのだから悩みが深い。

彼女が言うには生きているだけで嬉しいという……。生きていれば幸せなこともあるという……。


火星に行かないことは僕のエゴなのだろうか……当選した幸運にガッツポーズして、スキップしながら火星に行くべきなのだろうか……。


見つからない答えに頭がズキズキとした。


こんなことなら抽選にあんな気軽に応募しなきゃ良かった……。


せめて昨日、由利にバレないように家の中に戻るべきだった……。


由利は抽選を知らなさそうだったし、

なんとなくこんな反応をしてくることは分かっていたんだから、何が何でも隠さないといけなかったんだ……。


でも待てよ。由利は本心を隠して話すことはよくある。本当は僕に行って欲しくないのではないか? 僕が生き残る可能性を信じて自らを犠牲にすることは、由利ならあり得る。


妙に元気そうに振舞っているのはやせ我慢である可能性の方が高い。


自分の感性とその可能性に賭けることにした。


「由利。決めたよ……火星に行くための準備をするよ。由利もなにが必要かリストアップを手伝って欲しいんだ」


このまま由利と会話できないこと、無意味な喧嘩期間が続いていくことの方が損失が大きい気がした。


隕石衝突予定日まで残り10日しか無いのだから僅かな時間でも無駄にしたくないのだ。


「ホント!? もぉ~! 暗くなるまで時間がもうないんだから、今から準備するの大変じゃないの? 荷物まとめるの手伝うね!?」


由利はパタパタと風呂場の方に走り去っていった。恐らく僕の下着をまとめてくれるのだろう。


最近少し模様替えをしたとは言え、由利にとっては勝手知ったる家だからな……。


それにしても、由利が久しぶり心から笑っているような気がした。

ご両親が亡くなった時も「毒親から解放された」と言う事よりも「両親が変わってしまった」ことを悲しんでいるように思えたし、本当に優しい子なのだ。


そんな満開の花園のような咲き誇った笑顔のところ悪いけど、僕としては火星に行く気には全くなっていない。


これも由利と会話するための“嘘も方便”というやつだ。


「あー、まだこんなの持ってるんだね~。これ小学校低学年からのやつでしょ?」


押し入れに入っている物をを漁りながら由利がそう言う。


「中々昔の物も思い出があるから捨てられなくてね……。いつかは処分するか誰かに寄付するかとかしなくちゃいけないとは思っていたんだけどさ……」


押し入れは正直「開けたくないレベル」だった……。由利にだけは見られたくなかったので本当に恥ずかしい……。


「でもすぐに壊しちゃう人よりは良いと思うけどな。

男子の小さい頃とか結構暴力的に扱って壊すイメージあるし」


「確かに! 梶木とか臼井とかそんな感じだったよな! 遊具すら壊してさ、僕の周りの男子の連中も引いてたよ」


「そうそう! あの2人ったらお母さんから貰ったらその場で壊しちゃって! 女子の皆もびっくりしてたんだから!」


それからは、とにかく思い出話に花が咲いた。

とにかく産まれてから今日までほとんどずっと一緒にいたもんだから、色々な場面で由利が話に登場した。


ただ、女子しかいない集まりの話には流石に僕はいなかったので、初めて聞いた話も多かった。


「えー! 今でも信じられないな。僕がそんなにモテてただなんて……」


「結構人気あったんだから。

あたしは裕司のこと実はずっと好きだったから、

皆の気を逸らすのが大変だったんだから……」


「それも初めて聞いたぞ! この間僕が告白した時に“しょうがないから受けてやる”的な感じだったのに!」


「だ、だって! 恥ずかしかったんだもん! ずっと好きだっただなんて言い出せないじゃん……」


まったく……結構意地を張るよな由利は……。


そこがまた可愛いところでもあるんだけどさ。


「好きな人が多いのならどうしてチョコくれないんだろ……。マジで由利と母さんからしか貰ったこと無いぞ……」


「あたしが工作していたのもあると思うけど、何だか裕司って掴みどころがないような気もするのよ。人が良さそうな気もするけど、あっさり断ることもあるじゃない?

それを考えたら中々告白する子もいなかったんじゃないの?」


「えー、そんなこと無いと思うけどなぁ。それは偏見だよ……」


「少なくともあたしはそう思ってたからなかなか言い出せなかったわけだしね……」


「へぇ、由利はかなり強気だからそんな風に怖気づくなんて信じられないな……」


「なによ! その言い方! それとも――あたし以外の子からチョコが欲しかったの?」


由利の目がギラリと光ったのをみて僕はヒッ……と思わず声を上げた。


「そ、そんなことはないよ。由利から毎年貰えて嬉しかったんだから……」

ただ、皆が思ったよりもシャイなんだな~って……」


せっかく仲直りしかけているのにここでまた無視されたら最悪なので、もう平身低頭である……。


「そうでしょう。そうでしょう。ここ数年は手作りだったんだから愛情も籠ってたんだからね?」


「う、うん。僕って愛されてるなって感じたよ」


毎年チョコをくれていたのは良かったけど、見かけも味もあまり良くなかったけどな……。

材料の分量を間違っていたのか混ぜ方が悪かったのか僕にはわからなかったけど、とりあえず美味しいフリをして食べてたな……。


でも、多くの人は義理チョコすらままならない状況かもしれないんだからバレンタインチョコを有難く頂かないとな――と思って食べたが……ずっと本命チョコだったとはね。


そんな他愛もない話をずっとしていた。


由利は僕と最後の別れだと思っているのだろう。


夜が暮れると由利は時折涙をぬぐいながら話をしていた……。

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