表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30日後に巨大隕石が衝突すると知らされた世界で、本当に大切なものを見つけた  作者: 中将


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/26

地球滅亡予定日まで 残り21日

隕石衝突予定日まで早いもので、もう残り3週間となった。


このままだと隕石衝突してしまう日もあっという間に来てしまうのではないかと思うと焦燥感が出てきた……。


とは言え状況を打開する方法は全く無いんだけどね……。


閉塞感が漂う中、ニュースを呆然と見ていると、


「世界全体で100万人募集 火星行きとシェルターへの抽選募集始まる」


という記事が目についた。


その記事では現在不透明ではあるもののロケットでの火星へ移住して隕石衝突を回避するAプラン。

全世界にある核シェルターに避難するBプランが全世界から抽選で選ばれるとのことだった。


どちらのプランでも、隕石衝突から免れ、生き残ることができるかもしれないという事だった。


Aプランは全世界から各地方から1000人ずつ募集するが(日本は1地方カウントされており1000人)、

Bプランは主に欧州やアメリカで定員が多いようだった。

日本は有事への備えが未だ足りておらず、長期の食料も考えると日本全土で僅か5000人分のシェルター定員しかないようだった。


ただし日本の”シェルター”とされているものはNTTの配線が眠っている場所であり、長期間暮らすことは想定されておらず、生活環境はあまり良くないという事も書いてあった。


名前、住所、身分証明証、日本ではマイナンバーさえ登録すれば誰でも応募できるようで、5日間の僅かな募集期間とは言え、この記事に気づいた人は助かりたい一心で応募するに違いない。


そのために宝くじで高額当選をするぐらい抽選に当たることは難しいと思われた。


全く希望を感じることも無かったが、ネット環境を使えば無料で応募出来るために、Aプランの抽選に応募した。


生活環境は宇宙も地下も未知数だけど、どちらかと言うと宇宙の方に興味があったからだ。


しかしどうしたことだろうか、ネットの世界でも学校に行く途中の会話を小耳にはさんでも、どうにも「当たった6000人」になったらやることみたいなことを考えている「希望的な観測」を持つ者が増えているように思えた。


約1億2千万も人口がいる中でたった6000人って2万分の1だぞ? 記事によるとシェルターでも場所や建設年数によっては耐久性だって怪しいってあったんだぞ? そんなモノに希望を持って大丈夫なのか?


それともそんなモノに縋らなくてはいけないぐらい人々の心は弱っているのだろうか……。そんな風に思いながら学校に登校した。


まぁ、僕も火星行きを応募した以上はそんな指摘をする資格はないのかもしれないけどね(笑)。


またSNSを見ていると面白いモノをみつけた。それによると昨日、テレビや通信を一時的にジャックして天文学者が「この隕石衝突の騒動は茶番だ」とした解説動画だった。


その映像はロシアの情報工作であり、その天文学者は1か月前に亡くなっているという発表が出ていた。


一体何の利益になるのか、混乱を生み出したいのかは知らないが、全くとんでもないことをやる奴がいるものだなと思ったのだった。





どんどんと登校する生徒は減っている感じがあるが熊田君は相変わらず勉強に集中していた――いや、むしろ以前にも増して熱を込めて勉強をしているように見える。


そんな、熊田君に次にペンを止めた時に聞いてみようと思うことがあった。


「ねぇねぇ、熊田君。どうしてそこまで集中して勉強できるの? 刻々と状況が変わっていっているのに勉強を平然と続けられて凄いよ。

僕なんて全然勉強に身が入らなくて困ってるんだ……」


半分は未だに世の中が続くと思っている熊田君に対して皮肉を込めているが、この状況下でも猛烈に勉強を続けられていることに対して凄いと思っていることも事実だ。


「僕は官僚になろうと思っているからね。東大に入ってそこで優秀な成績を修めて、

さらにそこで生き残ってから上級国家公務員試験を突破する。

この国の腐った政治を官僚側から変えて見せる――そういう強い気持ちで勉強をやっているんだ。

それこそこの間話したようにアクション映画のヒーローみたいに今の国民の窮地に救いに現れたいんだ。

だから、隕石が落ちる程度のことで歩みを止めることは出来ないね」


熊田君は自信満々にそこまで言い切った。


「い、いやぁ。僕はそんな具体的な将来の目標は無いかなぁ……」


なるほど……それだけの強い目的意識があるから勉強の熱量、モチベーションが違うし、世界が続くことを信じているんだ。


この高校から東大へは毎年浪人を合わせて30人が合格している。

テスト上位常連の上に塾まで行っている熊田君ならそこまで非現実的な目標でも無いだろうな――といつもはクールな雰囲気の熊田君が熱く語っているのを見ながらそんなことを思っていた。


「人生の目標は明確にした方が良いぞ。ここぞという時に頑張れるか頑張れないか。

苦しい時に踏ん張れるかは目標に現実性があるかにかかっていると思うからな。

特に何も目標が無いのなら東大や上級国家公務員で無くとも公務員試験を受けることをお勧めするよ。

公務員試験は総合的な実力が問われ、他の就職試験にも潰しが利くんだ。

例え公務員試験が駄目だとしても他で絶対に活きると思うぞ」


「う、うん。アドバイスありがとう。検討しておくよ……」


僕の夢は決まっている。由利を幸せにすることだ――でも、それは流石に恥ずかしくて言えないんだけど……。

でも、どうやって由利を幸せにするかについては考えてこなかった。


やっぱり収入が多かったり職種として安定しているところに就職した方が良いのだろうか? でもそういうところって転勤とか家族の時間も取れないかもしれないから由利との時間が取れないかもしれないよな……。


色々とバランスを取って良い感じの就職先が見つかれば良いんだろうけど……。


「おーい! 聞いてるか?」


熊田君に肩をポンポンと叩かれてようやく現実に引き戻された。


「あ、ゴメン。考え事してた。将来の目標についてだったね。僕も何か明確に決めておかないとな」


「ま、まぁ。色々と考えているようだけど、今の勉強を疎かにするなよ。今の連続が未来に繋がっていくんだからな。

ある時突然良い世界が飛び込んでくる確率はそれこそ宝くじに当たらないといけない。

そして、宝くじに当たった人だってそんなに幸福になっていないというデータがあるんだから、少しずつ世界を自分の力で良くしていくしか無いんだよ」


「そうだね。アドバイスありがとう。僕も頑張るよ」


今一番頑張りたい由利との関係修復については、

そもそも連絡が付かない状況にあるんだけどね……。

とにかく明日、手紙を届けることに全てを賭けるしかなさそうだな。


その後の将来については隕石の衝突から免れた時に考えれば良いかな……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ