続きはこちらで
近くのコスプレイヤーたちが騒ぎ始める。
「おい、見ろよ!? ヌーディスト・キラーじゃん!」
「わっ、本当だ! ヌーディスト・キラーだ!」
振り返ると、ゾンビや魔女のコスプレをした若者たちが、興奮気味にスマホを構えている。いつの間にか全裸男の周りに人だかりができ、フラッシュが瞬く。どうやら、この『ヌーディスト・キラー』は本当に何かしらのカルト的人気を博しているらしい。
竜介は唖然とする。マジかよ…流行ってんのか、これ。
全裸の男は人だかりに気づき、申し訳なさそうに竜介に振り返った。
「あぁ…ちょっと、人だかりができちゃいましたね…。あまりこちらに長居すると、警備員さんのお仕事の邪魔になるでしょう。それでは、私はコスプレ会場の方へ向かわせていただきます。ありがとうございました。」
丁寧に頭を下げ、意外なほど謙虚な態度だ。
「お、おう…」
竜介は返すのが精一杯だった。頭が追いつかない。
全裸男は堂々とした足取りでコスプレコンテスト会場へ歩き出す。その後ろを、ギャラリーの群れがまるでパレードのようにゾロゾロと追いかける。スマホを掲げた若者たちは、興奮した声で「ヌーディスト・キラー!」「すげえ、ガチじゃん!」と騒いでいる。
竜介は遠ざかる男の尻を見つめながら思う。
あんなコスプレも世の中にあるのか…。
でも、10月末の夜だぞ、寒くねえのか?
いや、この会場、熱気でムンムンだから案外平気なのか?
日本の未来はどうなっちまうんだ…。
ふと、竜介の頭に閃きが走る。今日のバイト代が入ったら、ネットフリックスに加入して『ヌーディスト・キラー』って映画、絶対チェックしよう。
こんなぶっ飛んだ話、気になって仕方ない。
心に固く誓いながら、竜介は再び警備の姿勢に戻った。




