ハズレスキルだなんて言いたくない!!【無から豆腐を生み出す能力者】
大きな爆発が起きた・・・・・とっそう大層な事では無く、ガスの元栓を閉め忘れて ガスコンロに火を付けて借りていたボロアパートが爆発しただけだ....。
風邪で寝込んでいたからなのか 寝起きで頭が回っていなかったからなのか、ガスが充満していた部屋で火を付けてしまったと言う 本当にそんな事する馬鹿が居るのかって話なのだが・・・。
アパートは半壊したけど、幸い日中で隣人達は仕事で家を出て 俺だけが爆発に巻き込まれてしまった・・・。人様に迷惑を掛けず良かったと思うべきなのか 隣人達の住む場所や御近所様をお騒がせさせて申し訳ないと謝るべきなのか・・・。
そう考えても既に遅く、俺は死んでしまった。
天国のエスカレーターが現れ、今日死んでしまった人達と一緒に俺はエスカレーターを登る。
若い子供や年寄り、俺と歳の近そうなサラリーマンがエスカレーターを登っている・・・、俺を含め4人が今日死んだ人達なのか...お悔やみ申し上げます。
エスカレーターの上で俺達は役所に似た所に運ばれ、役所によく有るイスで俺達は待たされた。
ピコンと頭上の電光掲示板が光、若い子供と年寄りの名前が表示され2人は窓口にと進む。
なんだか天国に来たのに現実世界を思わされる空気に少しガッカリ感が強い・・・。
子供と老人は何かを済ませ次は俺とサラリーマンの名前が表示され窓口にと進む。
窓口の向こうには天使の輪を付けた金色に輝く髪を靡かせる可愛い女性が座っている、隣のサラリーマンの人を対応している女性も天使の輪を付け青い髪の可愛い女性だ・・・天界の人達って皆美人なのかな?
天使のお姉さんはペラペラと謎の資料を確認して、俺の名前や死因などの原因を事細かに説明してくれた。
「この度はお悔やみ申し上げます。それでなのですが、この先天界に進み徳を重ね地球にと産まれ変わる選択を選ぶか 親族が来るまで天界で暮らすのんびりコースを選ぶか...」
天使のお姉さんは俺に、どのプランを選ぶかと色々なコースが有ると説明し始めた・・・、天界ってなんだか呑気な場所なんだな・・・。
すると俺は、天使のお姉さんが最後に言った言葉に耳を疑った。
「地球とは違う別の世界で冒険するプランなどもございますが」
地球とは違う別の世界で冒険!?
それって異世界転生って奴か!?
「近年ではこのプランが大変人気となっておりますね、色々手続きや確認事項などが御座いますが..」
興味本位だけで「そのプランで!!」っと俺は叫んでいた。
天使のお姉さんは確認事項の紙を取り出し、了承ならば下に名前を書く項目に名前をお書きくださいと言い、俺は軽く目を通し(殆ど読んで無い)名前を書き込んだ。
俺が名前を書いていると、隣のサラリーマンは「ヨッシャァァァァ!!」っと声を出し喜んでいる。
なんだなんだ?そんなに騒ぐ事が起きたのか?
「おめでとう御座います、能力:光の剣を獲得した状態で異世界転生を開始します」
隣のお姉さんはそう言うと、サラリーマンの男性は光に包まれこの場から消えてしまった・・・、向こうの人も異世界転生を選んだのか・・・俺も負けていられないな!!
天使のお姉さんはスマホに似た端末を取り出し、「能力はランダムで選ばれます、ガチャと似た物だと思ってください」っと俺に教える。
端末にはタップ!!っと大きな文字が・・・、コレから俺の能力が選ばれるのか...向こうの人は光の剣って言ってたから 俺は闇系の何かとかカッコいいよな・・・。
妄想が膨らむ、異世界で大活躍してモテモテの自分の姿が・・・、大きなドラゴンを倒して一国のお姫様と結婚したり俺が王に成ってたり..いや待てよ 裏の組織で暗躍する正義の殺し屋なんてのもカッコいいよな 悪い貴族を懲らしめ貧民達に慕われるそんな存在も・・・。
ニコニコとした表情で端末のタップを押すと、ピカピカと端末は光「豆腐!!」っと大きな文字が表示される・・・・・・・・・・、豆腐?
「おめでとう御座います、能力:豆腐を獲得した状態で異世界転生を開始します」
えっ豆腐って何?ちょっと待って意味が分からないし説明も無し!?
頭がグルグルと回り 俺は光の中にと消えてしまう・・・・・。
数秒後・・・俺は見慣れない平原で1人取り残され、さっきまでの体や服では無く 異世界らしい服や新たな体を手に入れていた・・・・、本当に異世界転生してしまったのだ....。
自分の顔が分からないけど、身長や皮膚の肌艶からして18ぐらいか?20代の可能性もあるが....ってそんな事より能力だ!!豆腐ってどんな能力なんだ!!
豆腐と言うのは異世界用語で、実はとんでもスキルって可能性も残っている!!
俺は手を翳し、体に溢れる自分の力を解放させ能力を発動させた!!
ポン!っと手の平に現れたのは、有りふれた普通の豆腐で合った・・・、パクリと一口食べると 味の無い豆腐・・・・・・・。
「ハズレスキルじゃねぇえかぁぁぁあああああ!!」
★ハズレスキルだなんて言いたくない!!★
★【無から豆腐を生み出す能力者】★
▶︎数年後
鍛冶屋バルクスの前に2人の男女が現れる、バルクスは2人の雰囲気を見て、この者達は冒険者だと理解する...。
冒険者の名は、男がイーゲン 女はレンズ。
レンズは小さなナイフを手に取り眺める、鍛冶屋のバルクスは女に言う、良い物を手に取ったな それは最近発見されたセラライトから造られたダガーなのだと教える。
レンズはダガーを店主に見せ付け、「コレより強度の高い刃物は有るか?」っと質問する。
そんな物はこの店に無いと言い放つと、女は「そうか」っと言い残し 男女は何も買わず店を出た。
何も買わない冷やかしに「クソ女が...」っとバルクスは呟くと、ビュン!!っと小さく鋭い針がバルクスの首を掠め壁に突き刺さる。
針を投げたのはさっきの女だった!バルクスはプルプルと子犬の様に怯え地面にと倒れる。
「人を驚かす真似をするなと言っただろレンズ」
「アイツは私を馬鹿にした」
「お前が人を困らせたら主様が困る事になる、俺はお前の見張り役を任されているのだからな」
イーゲンとレンズは人通りが無い裏路地にと進むと2人は何かの気配を感じ立ち止まる・・・。
言葉を交わさずとも何が起きているのか2人は理解し、目配せを送り合図を出す!
2人同時にその場から離れると、複数のナイフが全方向から飛び交う!!
ナイフを全て防いだと思ったが、レンズの右肩にナイフが突き刺さる!
クククと暗闇からナイフを飛ばした者が2人の前に姿を現し ナイフに仕込まれた物が何なのか説明を始めた。
「そのナイフには猛毒が塗られている、女の方はもう時期死ぬ、男は俺の手で殺してやるよ...」
無表情のイーゲンはナイフが刺さったレンズを確認し、怪しいフードの男に言った。
「お前は暗殺ギルドの手の者だな?」
「聞かなくても分かるだろ、最近現れた冒険者で多くの魔物を倒し活躍を見せているのはお前達だな?正直、金をこさえている無能冒険者は狩り易くて助かる・・・」
「誰かの依頼なのか?」
「どうだろうな?今から死ぬお前達にその事が必要か?」
そうかとイーゲンは言い後ろにと下がると、負傷したレンズが短剣を手に取り暗殺者を斬り殺そうと動く。
毒の回った体なのに素早く身軽な動きに暗殺者は驚きながらも、レンズの攻撃を防ぎ剣を手に取る!
「コイツどうして平然と動いている!?まさか毒が効いていない?」
壁を走りレンズの後ろにと周り背後から剣を振るう暗殺者。
貰った!!っと声を上げ剣先を振るうと、レンズは右腕を盾にして攻撃を防ぐ!?
暗殺者は驚く
女の右腕を斬り落としたのに、血が一滴も流れていない・・・・・、白くドロっとした物が体から流れているだけだ!!
「に・・・人間じゃない....」
イーゲンは暗殺者の頭に、持っていた兜を打ち付け 暗殺者は気絶してしまう。
大丈夫か?っとイーゲンはレンズに聞くと、「大丈夫だ」っと返事を返し レンズは斬り落とされた自分の腕を手に取る。
2人は何事も無かったかの様に主様が居る家にと帰宅する。
「おかえり〜、2人とも大丈夫だった?って言っても今日の依頼は荷物届けだけだったから危険なんて無いかぁ〜」
イーゲンとレンズはニコリと笑い、いつも通りの簡単なお仕事でしたと教える。
おかえりと2人に話し掛けたのは、異世界転生者のあの者で合った。
この世界ではその者はハクと名乗り、豆腐を生み出す能力者として今を生きている・・・。
イーゲンとレンズ・・・2人の冒険者も、ハクが生み出した豆腐の生き物なのだ。