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腰かける女(ひと)

作者: kami10enpitu

夕暮れが近づく雨上りの参道の階段に

一人の女性が腰かけていた

雨はやんでいるけれど

またすぐに降り出しそうな空模様の下

その女はただじっと座っている

何をしているのだろう

参詣を終えて町へと一段一段降りていく私は

少しずつ近づくにつれてかすかに不安な気持ちになっていた

つるべ落としのこんな季節にこんなところで何を

少し離れて通り過ぎた方が良いのだろうかとさえ思った

けれど あと数段というところで気が付いた

その女の手にフォトフレームがあることに

階段が続く参道の下方に広がる町に向けて

そのフレームをじっと握りしめていることに

その女と言葉を交わしたわけではない

けれどその姿と まとっている少しさびしげな空気が

私に語りかけた

とても大切な人が愛した夕暮れの景色を

そうやって見せてあげているのだと

参道の下方に広がる町はよく知っている町なのに

ここからはこんな風に美しいのだ

私は何事もない風に静かに階段を踏みしめながら通り過ぎた

行きずりのその女の孤独と優しさの滲んだ姿が

まるで映画のワンシーンのように心に残った


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― 新着の感想 ―
雨上がりの夕暮れという情景に小さなドラマを感じます。そして静かに一人佇んでいる女性と言葉を交わす事はなく、そのままの風景を残した事で完結したのが心に残ります。繋がりがない終わり方も、良い意味での物語に…
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