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プロローグ

こちらのお話は精霊界編で多大なネタバレが含まれます。

必ず先に本編の方をお読み下さると幸いです。

完結済みの本編か小説版のどちらかを最後まで読まれている方は問題ございませんが、コミカライズ版のみの方はまだ追いついていないためご遠慮ください。




 エレンとガディエルの婚約が成されてすぐーーここからは先は、二人が結婚式を挙げるまでの約五年間のお話である。




 世界を統べる女王が御座す精霊城には、連日抗議に来る大精霊達で溢れていた。

 しかし、彼らの行く手はロヴェルの結界が阻む。ロヴェルの結界は元々の力こそ大精霊には劣るものの、オリジンが補佐をしているので誰にも破られることはない。

 しかし、短気な精霊はたくさんいる。話にならないと結界を無理に破ろうとする者も少なくないために、城の外では霊牙を束ねるアウストルが『お話』という建前の下、力でねじ伏せている光景が広がっていた。


「そろそろエレンちゃんにこの騒ぎがバレちゃうのも時間の問題だと思うわ。でもエレンちゃんのお披露目をしていたとしても別の意味で大騒ぎになっていたと思うから、どちらにしても一緒かしら?」


 水鏡で外の様子を眺めながらオリジンが「困った子達ねぇ」と溜息を吐いている。


 紆余曲折を経てエレンとガディエルは無事婚約したものの、立場や種族といった問題が二人の前に立ちはだかっていた。

 実は精霊達にエレンのお披露目すらしないまま、エレンは精霊と因縁のある人間の末裔と婚約した事が問題になっていたのだ。

 エレンの婚約者となったガディエルは、エレンの命の恩人だと触れ回っていたものの、それでも納得できない精霊達が多いのが現状だった。


 この光景をエレンが見たら何と言うか。いや、自ら乗り出して解決しそうで怖いと思う反面、また何かよからぬ面倒事にエレンが巻き込まれてしまい、力の使いすぎで倒れてしまうのではないかとオリジン達の心配が尽きない。


「城から見える景色は幻影をかけているから、エレンが外に出ない限りバレないと思うが? というか、エレンのお披露目なんてもってのほかだ!」


 婚約してようとしてまいと、相手が人間ならば無効だと言わんばかりにエレンに婚約を申し込もうとする輩で溢れるだろうが! と、吐き捨てるロヴェルの横でオリジンは苦笑した。


 エレンのお披露目をこれでもかと嫌がったのは確かにロヴェルだ。しかしオリジン自身もロヴェルに甘い所があるので、ロヴェルが嫌がるならば別にいいかと放置してしまった。

 そのせいで精霊達の不満が噴出しているような状態なのだが、お披露目しようにもエレンの女神としての力は覚醒したばかりで、安定しているとはいえない。

 まだまだエレンも修行が必要となる身であり、そして半精霊化したガディエルもまた同じだった。


「さすがにもうエレンちゃんのお披露目は必要よ。だって女神として覚醒したのだから。でも……エレンちゃんもなんだけど、ガディエルの修行を精霊界でしなきゃいけないのよ。困ったわぁ」


「わざわざ精霊界で? これまで通り人間界でいいじゃないか」


「彼にとっては精霊に成り立てで赤子同然なのだから、どちらの世界も必要なのよ。あなたもそうだったでしょう?」

 

 ロヴェルも半精霊になりたての頃、力の出が人間界にいた時と全く違ったため、オリジンと共に精霊界で修行をしていた。

 ちなみに精霊界での修行では、ついでとばかりに各地を回りながら女王の夫としての顔見せも行っていたのだ。


 その後にエレンが産まれ、エレンの力が少し安定した頃にエレンとロヴェルは共に人間界で修行していたのが全ての始まりだった。


 エレンとガディエルの修行もそうだが、ガディエルをエレンの婚約者として精霊達に紹介しなければならない問題もここに来て出てきている事が分かった。

 しかし、修行や顔見せを行おうにも、一歩も外に出れない有様だ。


「筋肉の剣でなぎ払ってしまえ」


「んもう、そんな事したら精霊城も消し炭になっちゃうわ。使っちゃダメな剣なの」


「あの剣はただの飾りなのか? ……いや、たしかに筋肉に剣は必要ないか」


「ロヴェルったら相変わらずなんだから。あーちゃんには剣の監視という使命があるの。大事なお仕事なのだからけしかけちゃダメよ。あーちゃんは剣で遊びたがっているもの」


「なぜそんな奴に剣を託したんだ……」


「あの子は元々あーちゃんのお友達だったのよ」


「は? 剣が友達?」


 なんて寂しい奴なんだ……と、勘違いしているロヴェル。

 いまいち謎の多いアウストルの背中にある剣に話がズレそうになった頃、ちょうどヴィントに呼びかけられた。


「あー……お話中に申し訳ないのですが、ちょっと問題が起きてしまいました」


 ヴィントは言いにくそうに眼鏡の縁を上げながら呟いた。


「問題? なんだ、外の奴らに筋肉が負けたのか?」


「ちょっとロヴェル様! 私のアウストルに何てことを! 愛しのアウストルはこの私に勝つほどの腕前なのですよ!」


「いや、お前あの猛獣に一発で伸されていたじゃないか」


「うぐ……ッ」


 猛獣とはラフィリアの事だ。そして事の発端はアギエルとアミエルの墓へと行った時だった。

 ロヴェルはアギエルの墓参りなんて嫌だと、けんもほろろな態度で参加していなかったのだが、エレン達だけでアミエル達が埋葬された墓地へと赴いた。


 ラフィリアは騎士としてサウヴェルと共に参加していたのだが、その時にアミエルとの過去を語った。

 自分の成長を見せつける前に死んでしまったアミエル。

 ラフィリアは強くなろうとする目標を失いかけていたが、なぜかアミエルの墓の前で「私、お父さんを引きずり落とせるように頑張るわ!」と、新たに騎士団長になる夢と、サウヴェルへ宣戦布告をした。

 困惑している周囲を余所に、ラフィリアが力に固執している理由がエレンを守るためだとを知り、エレンは大変感激していた。

 それを聞いたアウストルが、ラフィリアに力を貸そうと契約を持ちかけたのだ。


 アウストルが人間と契約しようとしているとヴァンから連絡が入り、ヴィントは慌ててそのラフィリアを殺そうとして……そしてあっとう間に返り討ちにあった。


「あんの小娘が! この私を足蹴にしたのです!」


「んもう~ヴィントったらまたその話? ロヴェルもヴィントにあーちゃんの事を振ったらダメよぉ。最近はすぐこうなっちゃうんだから」


「そうだった。面倒くさい奴がさらに面倒になるんだった」


「私のアウストルがあの小娘に……びええ!」


「あらあら泣き出しちゃったわ」


「こいつがウザすぎて気付けば猛獣の所に筋肉が出入りしているらしいからな……」


 気持ちは分かるとアウストルに同情するロヴェルを見て、ヴィントの泣き声がさらに酷くなった。


「もうヴィント、泣くのはよして頂戴。それよりも何か用があったのではなくって?」


「あっ、そうでした」


 コロッと泣くのをやめたヴィントに、ロヴェルが「こいつ……」とドン引きの目を向けた。


「困ったことにですね……各属性の大精霊を補佐しているはずの竜が暴れております」




 そんなヴィントの不穏な言葉から、この新たな物語は始まるのだった。


大変お久しぶりです。週二回ほどの更新頻度になるかと思いますがどうぞよろしくお願いいたします。

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