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「ぶっっ殺してやらァ!!」
その叫びとともに、後ろから轟音が聞こえてきた。振り返ると、スカイブルーのモヒカンを逆立てた男が、バギーの後部に据え付けられた軽機関銃の引き金を引いていた。銃口から火を噴き、こちらに向かって無数の弾丸が飛んでくる。モヒカンの髪が風になびく中、男の目は血走って輝いていた。
「なりふり構ってねぇな! 目当ての物まで壊れちまうと思わねぇのか」
トガリはベストに装備している手榴弾を取り出すと、歯でピンを抜く。
風を切って追ってくるバギーをミラー越しに見据え、トガリは目を細める。タイミングを計り窓から投げ放った。
しかし、トガリの狙いは甘かった。手榴弾は予想外の方向に大きく跳ね、バギーの方向から外れていく。
バギーの運転手は余裕の表情を浮かべ、軽くハンドルを切った。手榴弾はバギーに難なく避け去られ、見当違いの場所で破裂音を響かせる。
トガリの舌打ちが車内に響く。
射線から逃れるように急ハンドルを切り道を曲がると、道路が開け、舗装された地面が現れる。
「オラ! まともな道に入ったぞ! 屋根に登れノイ!」
「もしかしてイカれてる? 今外に出たらボクは蜂の巣だよ」
「どうしろってんだ!!」
「一回この悪ガキ共を引き離してよ。或いは……こいつらの気を引くだけでもいい」
「できるならそうしてる!」
「泣き言ばっかりじゃなくて、やってもらわないと困るんだよね。それ、キミの仕事でしょ?」
「コイツマジで……」
軽機関銃の弾幕がついにバンを捉える。弾は後ろの窓ガラスを砕き、後部の荷物で跳弾を起こし、何発かの弾が座席を突き破り俺の頭部と背中に当たる。痛い。
状況は芳しくないようだ。俺にも何かできることがあるだろうか。
「連中の動きを止めればいいのか?」
俺の言葉を聞くと、トガリは驚いた表情で声を詰まらせると、面白い冗談を聞いたかのように半笑いで叫んだ。
「出来るなら頼むわ! そう見えないかもしれないけど、実は今、結構手が足りなくてよ!」
明らかに手一杯に見えるが、これも冗談だろうか。この世界はワイルド風に冗談を言っていないと死ぬ世界なのか?
「その爆弾、貸してくれ」
俺はトガリのベストについている手榴弾を指さす。
トガリは一瞬躊躇するが、機関銃の銃弾が軽快な音とともにバンを穴だらけにすると、「なんでもいいや!! 持ってけ!」と諦めたように手榴弾を手渡した。手に取ると、予想以上のズシリとした重さ。
「一応言っとくが、道路で跳ねるから……」
「安心してくれ」俺は自信を持って言う。
「いい考えがある」