表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/14

1-3


『死にたいの?』とは、つまり『車に乗ったらトラブルに巻き込まれるよ』と忠告してくれた訳だ。始めは脅されたのだと思った。

色々と訳アリなのだろうか。だが、多少のトラブルは構いはしない。無理を言い、車に乗せてもらうことができた。

どれくらいぶりの人との邂逅だろうか。


荒れ果てた道路を車が猛スピードで疾走する。瓦礫や古タイヤが散乱する路面に、車体が激しく揺さぶられる。


「いて」


予期せぬ揺れに思わず舌を噛んだ。後部座席に設置されたロールバーにしがみつく。トガリは運転席でハンドルを握りしめ、黒髪の女性――名前はノイというらしい――は助手席から後方を警戒している。


「おい! アンタ銃は使えるか!」


運転席からどなり声が響く。……銃なんか使ったこともない。そう伝えると、トガリから拳銃を投げ渡された。それを見たノイが抗議の声を上げた。


「おいおい、勘弁してよ。素性のわからない素人に銃を渡さないでよ。子供のおもちゃに手榴弾渡すようなものだよ」


「弾は入ってねえ。賑やかしになるだろ!」


にぎやかし……? 弾が入っていなくても銃を構えていれば、敵からは威圧になるということか。慣れていない銃を手に取り、その構造をまじまじと観察した。


重量感のある金属製の本体。黒く塗装された表面は所々擦れ、使い込まれた跡が見える。摩耗した銀色のトリガー。スライドには刻印と微細な溝。マガジンは取り外されている。銃口から中を覗き込むと、内部に何か等間隔の溝のようなものが見える。……これがライフリングというやつだろうか? 玩具や、模造品などではない。人を殺すための道具。エアガンくらいしか握ったことがないが……これ本物の銃か。


「うわぁ、この素人さん銃口覗いてるよ……見てほら」

「うるっせぇな」


助手席からノイが、引き気味に呟いていた。そうか。銃口を覗くのは非常識なのか。


「当てにしてないから、邪魔はしないでよね」


窓の外に目をやれば、直角から30°ほど傾いた巨大なタワーが天を突いていた。一見すれば今にも倒れそうで、不安感を煽る。空は見えず、虚ろな気配が漂う。この奇妙な光景を眺め、ノイが楽観的に声を上げた。


「……”2時タワー”まで来たのか。もう連中の縄張りから出れるんじゃないか? 意外と追いつかれずに済むかもね」


トガリは不機嫌そうにサイドミラーを睨んだ。


Jinx(ジンクス)をしらねーのか? そういう事言うと、大体悪いことが起きるんだ」


「ボクは迷信に興味ないんだよね」


フラグってやつか?

その言葉とともに、俺たちが乗るバン以外のエンジンの音が響き渡る。先程までなんの姿も写っていなかったサイドミラーには、轟音を響かせながら迫り来る追手の姿があった。改造バイクとバギーの群れだ。


「ほら見ろ!」


ノイは肩をすくめてみせた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ