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「あ痛たたた……」


車両は俺を轢いた後に、10m程進み止まった。ドアが勢いよく開く。運転席から女性が飛び出してきた。


「……おおい! アンタ大丈夫か!?」


金髪を後ろで束ねている若い女性だ。黒いタクティカルベストを身に着け、その上からショルダーストラップで短機関銃をぶら下げている。まるで、どこかのゲリラ兵のような格好だ。


車の中から別の人物の声が上がる。声変わり前の少年のような声だ。


「放っといたら! どうせZombieゾンビか何かだよ」


折角人に出会い、轢かれてまで車を止めたのにこのまま逃げられてはたまらない。

すくっと起き上がると、何でもない、というふうに車に手を振ってみせた。


「あれ、違った?」


車の後部座席のドアが開き、声の主が姿を現した。黒のショートカットに青色のメッシュが入った特徴的な髪型だ。化粧気の無い金髪の女性とは対照的に、薄く化粧をしている。金髪の女性は実用的なミリタリー装備を身にまとっているが、この人物はショッピングにでも行くかのような丈の長いローブのようなスカートだ。


しかし、何より目を引くのは彼女が背負っているランドセル大の機械だった。それは背中一面を覆うほどの大きさで、複雑な配線や突起が至る所についている。SF映画に出てくる装置のようだ。


二人の視線が俺に集まる。折角調達した服がもう破れてしまった。


「おお、アンタ怪我なかったのか? なんとも無さそうだな」


「……あぁ」


人と会話するのが久しぶりすぎて、言葉がうまく出てこない。


「まさかこんなとこに人がいるとは思わなくてよ。どこか折ったか?」


彼女は俺の腕や脚を軽く触ろうとした。


「ケガはないが」


「……ん?」


「服が破れた」


金髪と黒髪の女性は顔を見合わせた。

黒髪の方が溜め息をつき、チッチッと軽く舌を鳴らした。


「ねぇ、トガリ。こんなことしてる場合かい? 無事だったらいいじゃないか。連中が追ってきてるんだろ。とっとと逃げ出さないとまずいんじゃないの」


「……言われなくてもわかってるっての」


金髪の女性、トガリと呼ばれた方が苛立ちを隠せない様子で答えた。何かトラブルでも抱えてるようだな。

彼女は車の方に戻ろうと踵を返したが、俺の方を振り返り、一瞬躊躇するような表情を見せ言葉を発した。


「アンタ、悪かったな。じゃあアタシらはもう行くからよ」


折角人に出会えたんだ。彼女らが何か問題を抱えているとしても、このチャンスを無駄にすることはできない。


「まて」


「……あっ?」


怪訝そうな目を向けられる。


「つれていってくれ」


舌っ足らずの絞り出すような俺の言葉を聴くと、二人は再び顔を見合わせた。

黒髪の女性が、半ば呆れたような、半ば驚いたような表情で俺に言った。


「死にたいの?」


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