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一体どれほどの時間が過ぎたのだろうか。


目を開けて、目を閉じる。

目を開けて、目を閉じる。


自身の心臓の音を聞きながら、-270.45°Cの激痛に耐える。ただそれだけの時間を過ごす。


時々発狂しそうになる気がするが、気のせいだ。

この身体は無敵なんだ。精神も無敵なんだ。天使が保証してくれている。


この絶望的な状況のなかでも、一つだけ希望があった。


星の中でも、ひときわ大きく見える星があった。小指の先程の大きさだったその星がだんだんとその大きさを増してくる。今や手のひらほどの大きさだ。その事実が指し示すことは、つまり俺がこの星に近づいているということだ。徐々にこの星の引力に引かれているのだ。このまま待っていればこの星にたどり着くことができるだろうか。


希望とともに不安がよぎる。この俺を引いている星が、おおよそ人間が生存できる星ではなかったらということだ。 木星のような時速483kmの嵐が荒れ狂う地面のないガス惑星だったら? 延々と核融合が繰り返される1600万℃のプラズマの塊だったら? 星に捉えられたら俺の力では脱出不可能だ。何十億年という星の寿命を待つほか脱出することはできない。この『無敵の身体』とやらは恐らく老いにも影響を受けない。そうなれば俺には発狂することしか逃げ道はない。


人間が地球上から観察した無数の星の中で、地球と同じように空気と水が有り、生物が存在した惑星は一つも無いそうだ。普通に考えたら、宇宙のランダムな地点に放り出されて、運よく地球と同じような惑星に流れ着くというのは、宝くじの一等を10回連続で当てるよりも低い確率なのではないだろうか。


怖くて怖くて堪らない。俺を待ち受ける運命が、宇宙の寂寞せきばくたる広大さが、恐ろしくて恐ろしくて堪らない。ここには人間の居場所なんかない。たとえ不死の体を持っているとしても。人間は宇宙で存在できるようには造られていない。



次に目を開けた時に、その青く美しい星が目の前に浮かんでいるのを目にしたときの、俺の感動というのは、およそ言葉では表せるものではない。


「 」


視界にある惑星が徐々に、大きくなる。惑星の引力に引き寄せられた俺は、徐々にその加速の度合いを高めていく。惑星はどんどん近づいてきている。指先ほどの大きさに見えた惑星は、今や視界いっぱいに広がっている。


音が聞こえる。

身体中の激痛が次第に消えてくる。しかし、それもつかの間だ。次第に皮膚に熱さを感じ始める。抵抗なく惑星の引力にひかれ、速度を増した俺の体は、猛烈な勢いで大気に突入した。

身体の周囲が発光を始める。初めは淡い赤色だった光は、大気の濃さを増すにつれ、オレンジ、そして強烈な白色へと変化していく。俺は空気との摩擦熱でまるで隕石のように輝き始めた。肉体の周りに形成された衝撃波が、周囲の空気を圧縮し、温度を数千度まで上昇させる。あまりの眩さになにも見ることができない。


熱い!!

熱い!!

熱い!!!!


「アアアアアアアア!!!」


肺が燃える。

体が燃える。

全身の毛穴が開くのを感じる。

気が遠くなるほどの時間虚空を漂い凍え切った俺の神経に火が灯る。


この青い星にたどり着いたのは天使の狙い通りか?

最初からその予定だったのか?

天使がいるということは、神がいるということだろうか?

俺は神の存在を信じているだろうか?


俺は隕石の如く炎と白煙を引き連れ地表に激突した。




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