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36話「勇炎闘劇」

静けさが広がるこの森は、普段なら子鳥のさえずりも聞こえるほど自然に満ち溢れている。

緑広がるこの地は、学園を囲うようにしてできた森林地帯であり、開けている中央の道以外は基本的には舗装されていない道である。


そんな不安定な地面を、ゆっくりと、ゆっくりと歩む少女がここに居た。


レイピアを構え、一つの呼吸すら聞こえないほどに静かに歩く女性。濃い青髪は風に靡き、瞳はゆっくり開き、その青く染まる瞳を露わにしていき、


「ーーー!」


刹那、一瞬にして現れるは爪。女性を切り刻もうと、傷を付けようとするその爪先は、視界に入れることすら難しい死角から突如として現れては、縦に振り下ろされる。


これを女性は瞬発力でレイピアの平を当て、一気にその相手の姿を視界に入れた。


「あんたの細いレイピアなんかへし折ってやるァ!」


「折れるなら折ってみろ。これは私の信念だ」


見つめ合う二人、その視界とともに言葉を交わらせると、爪でレイピアが折れるより先、平から滑らせ回し、流すように回避。


女性は体制はそのままに、レイピアを持ち替えれば、持ち手部分を一気に正面へ。正拳突きのようなレイピアの持ち手が男の腹へと直撃した。


「ーーーっ!やるなァ……ナルミ?だったかよォ……僕の腹を当てるなんて中々の速度だ……」


「余裕がない、口数だけ増えた者の戯言は飽きたぞ……カル」


腹を当てられ、吹き飛ぶ男ーーーカルは、その体制を受け身をとって直せば再び視界から一瞬にして消え去ってしまう。


見えない速度、だがこの衛兵の女性ーーーナルミには、その動きを感覚的に捉えることができている。故に、視界を動かさずとも、


「ーーーっ!」


「これを躱すかァ!」


体は飛んでこない、爪から繰り出された『闇の斬撃』を軽やかに回避、その斬撃が当たった地面が割れ、砂埃を上げていく。


斬撃の跡地、地面がえぐれたのをナルミは見つめては、その威力に目を細めつつも剣技を放つ構えをするように、レイピアの先を森の奥底へ向ける。


「人質がいるの、忘れたかァ?衛兵は来るなと言われただろうがァ」


「あぁ、だが手は打ってある。人質までは完璧、だがお前らが誤算だったのは、我々が来ないと断言したことだ」


「なにィ?」


敵の姿は捉えられない。だが、その言葉が耳に届くことが、奴がまだここに居ることの証明になっている。


会話をしながらも、そのレイピアの先を的確に飛んでくる斬撃に合わせ、その輝くレイピアで背中に来るものすら、体を回転させ相殺する。


奴らは確かに人質のクロエをとることで、衛兵を来ないようにするという作戦を決行、人質を実際に手に入れている。

だが、こうして現れた衛兵。確実に、奴らの計算は狂っているのだ。


「貴様らはっ……人質をとることで来ないと慢心、その人質を別人に任せ、置いてくるほどに余裕を見せていた。それが仇となっていると言っている!」


「ーーー好き放題言うじゃねぇかァ!」


このままでは埒が明かないと、一気にその足を加速させる。正面に向け、一足踏み込めば正面に向け一気にレイピアを突き刺す。

空中を切り裂くレイピアは、その森林に一気に風圧により一時的な『道』を創り出したのだ。


一線に飛んでいくレイピアによる風圧が、ナルミから見て一直線に飛んでいくと、開けた方向へと足を一気に進める。


だが、これでは奴は逃げることも可能になってしまう。ならば、


「ーーーっ!レイピア……少し無理をさせてくれ」


「ァァ!僕の相手はいっつもこうだっ!ぐぁ!?」


追いかける影、それは木々を軽々と飛び越えて、乗り移って進んでいくカルだ。


ならば、その森林が風圧を無下に、無かったことにすように元に戻る力を利用する。


ナルミは一つの木に足を着かせ、戻ろうとする木の力で一気に上へと上がれば、そのレイピアを真下へと直撃させる。


地面に、刺さった瞬間だった。


「ーーーマイグライド」


レイピアの先端から、一気に光り輝いた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「グァッ……!くっ、まさかこいつ……!?」


爆発の直後、半径一キロ程の森林は全てなぎ倒された。


燃えたのではない、光に飲み込まれたというのが正しいだろう。


カルは乗り移るものが消え、地面に何とか着地ーーーだが、それは一歩遅い。


「はぁぁぁああ!」


光が消えた瞬間、カルに飛びかかってくるのはレイピアを持つナルミ本体だ。

あれだけの爆発がありながら、一瞬にして立ち上がる体の強さに驚きながらも、カルは体制から一番出しやすい、サマーソルトのような蹴り上げでレイピアを弾く。


だが、連撃が止まることは無い。弾いたレイピアは再び襲いかかり、それに対して正面から爪を当て、横からもう片手で弾くことを繰り返し、爪とレイピアが重なり、弾く金属音が森林に鳴り響いていた。


「あんたはァっ!あの後輩がぐちゃぐちゃになって絶望するのが楽しみかァ?」


「何……!?」


レイピアが正面に一突き、それを爪が上手く重なれば、相手の言葉に鍔迫り合いでお互いが静止する。


突然のエルダのことに、ナルミは相手の言葉に見開いた。


「あの女が戦ってるのはガラさァ!あの衛兵本部で貴様の後輩を追い込んだ女さ!あいつは強い!お前らは馬鹿だからわかんないだろぉが、あんな貧弱な二級兵の女じゃ勝てねぇさ!」


「なら、一つ訂正させてもらう!」


「がぁっ!?なにっ!?」


相手が言うことはほんとだろう。実際、衛兵本部ではエルダはガラという女を到底追い込んだとは言えない。なんならば、言葉に圧倒されてしまっていた。


でも、同じように彼らが知らないエルダのことは幾つもある。


鍔迫り合いから、レイピアをあえて離せば、膝蹴りを相手の腹に当てて、再びレイピアを持ち、崩した相手の姿勢に一気に構える。


「エルダは貧弱ではない。二級兵と舐めていれば必ず命を取られる」


「なんだとっ……」


「ーーーエルダの本当の力は一級兵に近い。その精神力だけが、あいつの弱点だった。でも、今はあいつの『覚悟』が見えた」


レイピアが相手の肩を貫いていく。一突き、その一閃が光り輝いていき、


「がはぁっ!?何言ってァっ……」


「今のエルダは、誰よりも強いということだ」


その覚悟が、相手を滅ぼすまでに相手を飲み込んでいく。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


廊下。ここは旧校舎であり、ボロボロの教室もあってか、人気は無い。割れた窓、使われた形跡の残る机。掲示物一つないものの、その景色は春から夏へと過ぎていく時を感じさせていた。

静けさが目立つ頃。一つ、この廊下に響くのは金属音。


重なり、合わさり、二つの音が合わさってつながる。響く音は、ゆっくりと、ゆっくりと大きくなりーーー


「くぅ……!はぁ……!」


「威勢とは真逆で防戦一方かい嬢ちゃん!!」


エルダは鎌使いの悪女ーーーガラとの一騎打ちをこの旧校舎の廊下で行っていた。

ガラの鎌は、その先端を縦振りにエルダへ向かわせるが、もちろんエルダは横へ回避。


だが、こんなものはまだ序の口にもならない。ガラの鎌回しは衛兵のレベルすらも超越している。

縦振りから前に踏み込んだのもつかの間、短く持つことで横振りを可能にする。内側から刈り取ろうとする大きな鎌には、エルダは剣の平を当てる。


「かかってこいって言ってただろうがっ!!」


「くぅっーーー!」


ガラはそのペースを崩さず、一気に距離を詰めては、何連撃も斜めに鎌をエルダに対し、前に進みながら加速させていく。

エルダは体制を斜めに、普通の人間には到底不可能な体制から剣を鎌の先端に合わせ、左右に受け流しつつ、距離を取るためにバックステップを重ねていく。


教室四つ分しか存在しない廊下を、二人は一気に駆け抜けていくのだ。ガラは遠慮なくその鎌による連撃を止めず、エルダは後ろ歩きとステップを重ねていけば、


「辛いだろ!このまま命ごと削り取られな!」


「そんなのさせるわけないっ!!」


エルダは力を込めれば、剣の鞘を鎌に合わせると同時、遠心力でその鞘と鎌を利用し、回し蹴りをガラの腹に直撃させる。


「てめぇ……まじかっ!」


「はぁぁぁ!!」


もちろん終わるわけが無い。廊下の端、蹴りから体制を戻す力と共に、壁蹴りから剣を取り、こちらからカウンターの一閃。

縦振りを喰らわそうとするが、ガラも鎌の持ち手で対処。回すようにして、エルダの高速連撃を読んだように、エルダが縦振りから重ねた連撃に合わせた。


「やるねぇ!あんた!やっぱりなにか違う!あんただけ腕が別格なんだよ!心と違ってねぇ!」


「もうあなたに言い負かされることはないです!それに!私の使命は間違いなくあなたを倒すこと!」


連撃が止まり、剣の持ち方を縦持ちから横持ちに一瞬で切りかえては、回転させた鎌に横から差し込み、止めが入る。

その一瞬、剣の平を相手の腹と平行にさせては、そこに向け手のひらを当てて、


「炎撃!!」


炎の衝撃波。吹き飛ばされたガラに対して、更にエルダはステップで距離を詰める。

こちらに向いたガラの表情はまだ笑顔。獲物としかこちらを見ていないような顔で、ガラは体制を崩すことなく再び鎌を縦振りしようとする。


だが、この瞬間は先程見た。


「ーーーー!!」


「ぐはぁっ!?」


縦振りからの横に避けた者へ横振りで仕留める典型的な技。それをエルダは縦振りを避け、横振りに対して横持ちしていた剣を当てては、鎌の曲線を利用し回転蹴りを再び、今度は顔面へ直撃させたのだ。


ガラは吹き飛ばされ、廊下の中心より少し入口側へと倒れた。


「はぁ……あははっ!嬢ちゃん……私はあんたを舐めてたわけじゃないが……弱さを無くしたあんたの強さ……悪くないねぇっ」


「そうですか。私はもう覚悟を決めてます。自分の弱さも、誰かと共に乗り越える。その友達が、家族が、仲間が傷つくなら私は全力で止めます!」


そうだーーー自分のいけないところも、受け入れようとしていなかった。

頭に流れてきた、自分のトラウマ。でも、この行いが大切なノノの、ノノ自身の大切なものを守ることにつながるなら。



信じている。自分の行いが、その先が怖くても。



「だってその先を見るには、やってみなきゃ、わかんないですから!!!」


今までになかった、戦いを楽しむ笑みとともに、剣先を相手に構えて敵を睨む。


「……はっはっは。あんた、やっぱりこの数時間でなにかが変わった。あたしは見くびってたよ、ここまでできるやつとは……」


「褒め言葉なんて、必要ないです。次で仕留める……!」


「それはどうかなぁっ!」


「ーーー!」


相手の言葉に、目を細め、警戒を強めた瞬間だった。高速で飛んできた闇の斬撃。それは、なにかの光線でもなく、飛ぶ斬撃とは少し感覚がズレていた。


衝動的に自分の剣を合わせては、鍔迫り合いになるもはじき飛ばされ、堪らず後ろに少し下がってしまう。


力を入れた時に、そこには人間の力は感じなくて、


「ここまでやらなきゃ絶対……あんたは越えられそうにないからなぁ?」


目の前を見れば、体に纏っていた闇の鎧から、境目という境目から闇色に染った炎を出し、輝きを見せつけている。


ガラの目、そこからですら炎を吹き出し、鎌や己の魂すらも飲み込んでいた。


「これは……っ」


「怖いかい嬢ちゃん?大丈夫さぁ……力が溢れ出してるだけ。なにもなしに客人としてのこのこやってくる程、あたしも馬鹿じゃないんだよ!」


炎が全身を纏った時には、風圧と炎の暑さでエルダは思わず手を目線の先に置いて防ごうとしてしまう。


勢いを増し、一定を超えた、その瞬間に一気に炎が晴れては……


「さぁ、始めようか……第二フェーズさ」


鎌が闇の炎に包まれ、腕が四本に変化した究極の第二フェーズが幕を開けた。

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