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33話「開戦」


曇った視界。それは日差しによって鮮明なものへと変わっていった。

雲ひとつない青空、どこまでも続いているような空は、永遠を見せつけるかのように照らしてくる。


ーーーあの血濡れた日も、青空だったな。


心の中に呼びかける声。その正体はなんとなくわかっている。

殺戮を止める心の正体と、それを抑制するための事象。だが、そんな物騒なことで変わるものじゃない。


青空を眺めるエルデ・アナストラルには、自分を責める余裕は無いのだ。


死を眺めた気がした。夢の中だっただろうか、いや現実である。

手の中で、血濡れた少女。そして、自分のために命を捨てた男。二人も、その記憶に刻まれてしまった。


でも一人は救える。小鳥がそう言ってくるかのように囀り、アルのすぐ側を羽ばたいて行った。


「…………はぁ」


前日まで探した秘宝は、おそらく校長が知っていると予測したが、本人もわからないものだった。

隠し通路など存在するのかと、逆にここで見つけては奴を急かす可能性があると封じたものの、何としても守らなくてはならないもの。


ーーー少女を、救うために。


屋上の端に立つエルデ・アナストラルの、今生きる意味を失わないためにも。


「……僕は、全部を無にしてやる」


ケラケラ


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「あとは来るのを待つだけ……」


エルダ、ここ一番の勝負を決める時。


早朝から教員達は武器を持ち、それぞれ配置に着いています。

各生徒達は、集団でまとまると危険性が高いことを考慮して、教室やコロシアムへの避難を急ぎました。

そして、そこに配置された教員達。私は全体を見渡せる位置、どこにでも行ける訳じゃなく、あくまで敵は正面から来ると予想していました。


「……みんな戦ってくれる、私も……やらなきゃ」


思いが、つまってる。

みんな、不安に煽られている。帰りたいと泣き叫ぶ者もいた、悲痛な声も全部聞いた。


連れ去られた先輩も、救う。生徒も、殺させない。


「やれるだけ、やらなきゃ」


衛兵の意味が無い。親友の夢を壊してまで手に入れてしまった地位。捨てるためにあるわけじゃない。


必ず、成長した姿を見せないといけない。衛兵になってよかったと、そう心から言えるように。


「……あとは、あの『秘策』が刺さってくれれば……いいんですけど。私はついてないからなぁ……」


ーーーやっぱり怖いかも。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「あんたさぁ……この面倒事の犯人なんじゃないの?」


「ちがう!ミミなんもしてない!」


校舎裏。コロシアムの側だ。ミミは複数の女子生徒に壁に打ち付けられていた。

でも、知らない人じゃない。それは……


「……昨日!ミミを落としたのもそういうことって言ってる!ちがうからー!」


「あんたみたいな特異種でもなければ、人間でもないやつが怪しくないわけないでしょ?早く解放してよ!」


「……っ!」


元々、ミミに嫌がらせをしていた奴ら。昨日、コロシアムにミミを突き落とした奴らだ。

金髪、もちろん世の中ではギャルという属性だろう。原因は、そのミミの不可解な種族にある。


ケモミミ、それは猫種にも獣種にも犬種にもないもの。


「なんかあったら、あんたのせいってことにするから。もう言い逃れとかできないから、さっさと白状する準備でもしてな」


投げ出されるミミ、でも、ミミはいくつも耐えてきた。


その証拠に、目元の輝きは消えていなかった。


「……ミミの仕事……絶対守るから!それで証明!わかった?」


「はぁ?寝っ転がってるくせに喋んなよ……」


転がり、倒れながらも話した言葉。うつ伏せでも、やるべきことはわかっている。

守る、どんな人でも。エルダが、明梨が、そしてアルが、そうしているのだから。そう願っているのだから。



「後悔すんなよー!」


「黙ってろっつうの。行こうぜ……」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


聞こえてくる音。それは、騒音だが、環境の音じゃない。

廊下の窓から、正面の大通り、生徒がいつもこの学園に入る入り口を見ていた。


ーーー私が教室に避難しても、罵声が浴びせられるだけですから。


そう言って、一人廊下に立っていた。もちろん、教師の人達も理解していたものだ。


「やり残したこと、ばっかりなのにな。でも……妹に会えるなら……」


それもまた、ありかもしれないと思ってしまう自分を、両頬を叩いて正す私。


前を向く、せめてもの恩返しのため。あの男に救われた命を無駄にしないために、そう考えてた時だった。


「…………来た」


奥からやってくるのは、大量の魔物を何列も揃え、そしてその前には幹部として鎌を持つ者、小型のナイフを持つ者や、大きな体の男、そして森林で戦った男。


中央に立つのは、おそらく『魔』の権限者だ。紫色のローブに、全身を包む服装。いかにも魔術師と言っている。


戦力差を感じさせるもの、だが、ここにさらにアルビアがいるものだと思っていたが、老婆は少なくとも見当たらなかった。


「でも……私たちだけで弾き返せるかどうか、エルダさんーーーー!?」


そう願った時だった。その軍団が校舎の正門まで歩いてきた頃、一瞬にして目の前に見えていたはずのアルビアが、姿を消した。


「……答えは決まったかしら、エルデ・アナストラル」


「……元々決まってる。それに、お前が命を捨てた自爆を食らっても生きてることに驚きだ」


「あーんな貧相な命の一つや二つで殺せるほどやわな権限者じゃないことくらいわかるでしょ?」


屋上だ。端と端から聞こえる二つの声。一瞬にしてワープしたのだ、完全に見えなかった。


アルの答えを聞いた軍団の者たちが、武器をそれぞれ構え出す。

下にいるエルダも、それに合わせて剣を真下に突き刺し、正面で対峙している。


「……貧相でも、たまに権限者に痛い目を見せる奴がいる。僕も、なにかやられたらしい。非常に痛かった」


「思い出話かしら?私が聞きたい話は、そんな無意味な男の話じゃなくて、もっと有益な貴方の今後についてなのだけど」


「話がわからないか?僕は仲間にはならない」


「ーーー話のメリット、デメリットが理解できてないみたいね。その思い出話が増えてしまうみたいけど」


軽々と返すアル、そして流暢に話し、余裕を見せるアルビア。

二人の会話は、明梨の真上で行われていた。なにも、仲介なんてできる実力がないことは理解している。


軍団は、ゆっくり正門に近づく。エルダは、動くことは無い。

お互いが、お互いのトップの判断を待っているのだ。そして、お互いがやるべきことを理解している。


「ーーーやるということでいい?エルデ・アナストラル」


「…………僕をあまり舐めるな」


「ーーーー!」


その冷酷な声。それが響いた瞬間でした。

上での衝突音。何かがぶつかり、何かが弾かれる音。


窓から眺める私の目の前に降ってきたのは、紫色に包まれる女性でした。


落下して、それは斜めに突き落とされるようなもの。おそらく、アルが突き飛ばしたものであってーーー


「ーーー『無』の権限、無変大空義砲」



ーーーその言葉と共に現れたのは、一種の砲撃。でも、目に見える光線ではない。

一瞬にして空気と、その直線に広がる大地を抉りとるものであって、斜めに落ちるアルビアを中心に、その軍団の一線を全員殺していくもの。


まるでそれは、爆風のようなもので。

エルダの目の前を丁度走り、見事に当たらないようにしているものであって。


「ひひっ、ケラケラ。かかってこい、僕の!『無』の力の前に!」


その声高い声は、あの『無』の権限者だったのです。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「…………ふふっ、面白い。やりましょう?お互い、満足するまで。殺し合いの血濡れた世界の喜びを、二人で!」


爆風の砂埃が無くなり、その中心に立っている者ーーー『魔』の権限者、アルビア。


手を広げ、その興奮する姿は誰にでもわかった。


「なぁ!あんなん食らってやるしかないわよねぇ!なぁ?そうでしょ!」


「ーーーー!」


魔物達の声、そして先導するのはあの衝撃波の直線にいなかったガラだ。あの鎌使いは腕が中々にある。


「あなた……あの後悔の目つきの嬢ちゃんじゃない……!そんなとこに立って、また私たちに怖じけず居てるのかい?弱いあんたが!まだ立ってないなんて心底見損なうね!」


もちろん、正門に立つエルダは剣を真下に刺したまま、王の風格のように立っている。

それを見たガラは鎌を構えながら、再び少女を貶したのだ。


だが、その貶しに少女はーーー動じていない。


「ひっ、あんた、恐怖で頭までいっちまったかい。まぁいい!戦力差は歴然!あんた達!やりなぁ!!」


先導するガラに続いて、走ってくる魔物達。もちろん巨大な体の男も、カルという男も、皆が叫び、確実な勝利と獲物に向けて走りだす。


異型の魔物、爪が尖る奴やハンマー、そして飢えた犬のような顔の人型の魔物、皆がその正門へと走っていく。


ガラは手馴れた鎌を回し、その刃先を動かないエルダへと向ける。

エルダは動かない。睨み、立って、その剣を力を入れて震える拳で握り、


「孤立無援!あんたは一人で恐怖に怖じけずいて死にな!!」


「…………私は、もう逃げない。守りたい人が!この後ろにはいるから!









ーーー絶対に!もう逃げないんだぁぁぁぁぁ!!!」


「遺言がそれかい!小娘がーーーっ!?!?」


先頭のガラの鎌が、エルダの首元に下ろされる瞬間だった。光り輝く一閃の光線が、ガラの頭、エルダとの間に通ったのだ。


すかさずガラは回避、バックステップ共に、軍団も一時的に停止してーーー




「ーーー孤立無援、と言ったな。では有援にして、花でも添える人が現れればどうだ?」


「…………ひっ、おもしれぇな」


「孤立という言葉は、彼女には似合わないだろう……エルダ」


「ーーー先輩っ!」


森の奥から現れたのはーーー先端が光り輝くレイピアを構え、衛兵の軍を引き連れたナルミであった。



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