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29話「仮物ヒーロー」


「ねぇ、ノノ……ほんとに、衛兵の試験受けるの……?」


「もぉ〜またその話?受けるって〜!夢叶えたいし、守りたいし」


ある日の夜だった。私はノノとかなり仲良くなって、夜中も二人で電話で話すほどの関係を築けていたんです。

この日は、ノノの夢を聞いた日から数日後だ。ノノの夢は、衛兵になること。それを聞いた時から、ノノがいなくなってしまうんじないかというほどに私はノノを心配していました。


「でもっ衛兵は他の職業とは違うじゃん……!衛兵はっ……そんな気軽にできる職業じゃない……どんな怖いものとも戦うなんて……」


「……大丈夫だよ、私もその覚悟持ってるし。それに死んじゃったら無駄な訳じゃないじゃん?誰かのために死ねるなら本望ー!ってね!」


ノノは、私が思うより明るかった。それが夢へ進む決意なのだと考えると、なんとなく分からなくはない。

でも、それは死んでもいい理由じゃないことも、わかっていました。


「それに……もし、私が死んじゃっても大丈夫。衛兵はいるし……エルダは、強いからね」


「どういうこと〜……」


「さぁね〜!いつかわかるかもよっ?どういうことなのか〜!」


私が孤独になっても生きれるとか、考えてるのかと思うとそんなことないと否定したいが、それが私には信頼に感じたんです。だから、ノノの言葉に否定で返すことは出来ませんでした。

もちろん意味を理解する前に、ノノの言葉は次に繋がっていて、


「エルダの夢はなに?エルダは、どうなりたい?」


「私の、夢かぁ……なんだろうな、」


考えてみれば、自分の夢なんて考えることがなかった。無欲で、なんでもできていた自分が嫌いだからこそ、なりたい自分がもやもやしていたのだと思う。


「私は……なりたいのとかないけど……少なくとも、自分の行動で笑顔になって欲しいかも」


「えぇ〜いいじゃん!エルダはすごいから、きっとなれるよ!輝くエルダが見たくて待ち遠しいや〜!」


わくわくしたような高くなった声のノノに、私は「えぇ……」と微妙な反応の返ししかできないものの、空を見る私は少し微笑んでしまって。でも、


「できるかな、私に。今までいい思い出ないけど」


「できるよ、エルダだからこそね」


星がきれいな夜、輝く空を見つめる私とは真逆に、ノノの視界は曇っていました。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


死ぬのが怖い、そんなの当たり前なんだ。


けれど、ノノはその死を、もう目の当たりにしているかもしれない。そんなことを考えるだけで、自然に足が止まらない。


ノノの言葉が過ぎる。何かあったら、怪我でも若い彼女には致命傷だろう。試験なんか気にしてる場合なのか、でも周りには衛兵がーーー


「ーーー!はぁっ、はぁっ……!」


随分家から走ってきた。自分の体力を考える暇もなく走っていて、呼吸すら忘れるほどに無我夢中で走っていたらしい。


ーーーでもノノは、今も苦しんでるかもしれない。


「くっ……!!」


私は再び足を動かした。死んで欲しくないから、私を理解してくれる人を失いたくないから、今走る間にもフラッシュバックする笑顔に傷が入って欲しくないから、


「私の才能……ここで使えなきゃ意味ないからっ!」


止まることの無い足は、私を第二高山地へと連れてってくれたんです。体力と、引き換えに。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「緊急事態!即、試験生は避難すること!退避できるならはやぐっっっ……ぁ゛」


「くぅっ……第二高山地の魔物の活動周期に当たっちゃったんだ……はぁっ!」


目の前に突如現れた魔物、それはノノを喰らおうとする骸骨の顔に、何本もの骨の触手、そしてその先端もまた顔になり、青い炎と体から臓器が溢れ出ている見るも容易くないものだった。

衛兵の増援も皆苦戦し、実際今この瞬間にも一人、あの骸骨の顔に喰われてしまっている。


「けど、試験がこんなことにっっ!地上と分離されてる……二級兵の人達は地上にいて、どうにか上がる方法を考えないと……!」


「逃げる方法など考えているのか?私も同感と行きたいが……奴は腹が減っているそうだぞ?」


ノノの隣にいるのは同じ試験生の女性……幼く、体格も明らかにノノより小さく中学三年生ほどだが、この実技試験では有力視されているらしい。幼い顔つきだがとても頑丈そうな緑の戦闘服に、黒髪の中に赤色が混ざったような髪色。それこそ派手である。

ノノの片手には剣……だが、それは聖剣などとは言えず、支給されただけの言わば消耗品だろう。


「……あなたは早く行って!いくら期待されてるあなたでも……こんな体格差と、古代から封印されてた魔物……!」


「自己犠牲で乗り越えられるものはあるかもしれんが、私ははて、存在が自己犠牲なのだ。ならば、おぬしの犠牲を貰う必要などない……!」


あの小柄な少女は、幾つもの触手が回る炎と共に向かってくれば、足元を軽く蹴り上げ、砂埃を縦に発生させる。

そしてその瞬間、指をデコピンする時のように中指を曲げ、弾く構えをすれば勢いよく指を放つーーー砂埃は弾丸のように触手の首にヒット、一瞬の怯みを生ませた。


レベルの違い、これがそうなのかと思わせるほどだった。


「なにをまぬけた顔をしておる!後ろを見ろ!来るぞ!」


「ーーーっ!くぅっ!」


ノノがあの少女の動きを見てる間に、ノノへとやって来る顔達は、触手の繋ぎ目が弱点となっていたのか、顔のみが発射された。そして、分離された触手からは闇属性だろう、光線が周りを壊し始める。


ノノは手に持つ剣を縦振りに下ろし、一発目を撃退、そしてその手を持ち替えて


(縦振りっていうのは、後隙がとても大きい。つまり、囲まれた時には適さない。けど、その油断を誘うの。ノノの速度をあげて、こんな風に持ち替えて……)


記憶の中にフラッシュバックする、エルダの教えだった。

持ち替えは、剣を逆向きに持ち替える方法。そしてその持ち方は、下からこそ真価を発揮する。


「はぁぁ……!!」


下から振り上げ、そのまま体を空中に持っていか、隙ができたとやってきた骸骨達を回転して一掃すれば、光線すらも体の捻りで避けていく。


「ほお、お主も中々の強者……!能力など無いのか?これでは打開できぬぞ……!」


あの少女も巧みな体使いで避けていき、あの謎の弾丸が相手を怯ませている。だが、それだけだ。

ノノも一度着地し、状況を確認する。


「他の試験生は保護された、または命を落としたのどちらか……実際この魔物、一体じゃない……能力があれば退ける可能性があるの?」


「あぁ、隙が出来れば私が天井に穴を開けてやる。なんでもいい、奴を怯ませるならな」


「……わかった、自信ないけど!くぅっ!!」


ノノは少女の言葉を信用した、否するしかなかった。相手は魔物、そしてこいつはこの第二高山地というフィールドの中で複数体居たのだ。


剣を地面に突き刺し、その力を具現化させる。考えるように目をつぶって、その精神を統一させて、


(一応……能力の具現化は、イメージと落ち着くのが大事!ノノは明るい性格だから、あんまり落ち着くのできないかもだけど……きっとノノの本性だから、できると思うけどな〜!)


エルダの声が、また響いた。最悪ノノ自身が死んでもいい、そんな思いで力を入れて、


「はよせい!三級兵を飲み込んだ技が来るぞ!」


「わかってる!くぅ……はぁ!!って……しまっっ」


「ぐはぁっ!?……な、何をして!」


ノノは地面から氷の柱を展開、それは地面を凍りつかせていき、イメージ同様天井に穴を開けるほどに伸びていく。

しかし、それでは終わらなかった。あの少女の横腹を叩くような柱が別方向からも生えてきており、さらにノノまでもが自分の力に氷で吹き飛ばされてしまう。


まずい、その感覚はノノも、あの少女も同じく感じていた。


「は、はやく解除して……!柱に阻まれて動けないぞ……」


「ど、どうやって解除したらっ……ぁっ」


わからなかった、ノノは手汗と共に正常な思考が落ちていたのである。力の使い方が不自由なノノにとって、それはあまりにも非常事態であり、


「お主正気か!?落ち着いて考えて……!くそっ……」


魔物にとっては動かなくてもあの骸骨を発射すればいい。

触手から解き放たれた骸骨は、顎を大きく広げれば、そのサイズは十倍ほどに膨れ上がり、大きな口がノノの視界を埋め尽くす。


死が、ノノを覆いつくそうとする。

そこに一閃の光と共に、炎が、彼女の目の前降り立つまでは。


「ーーー!!ノノ!!」


割れた天井から降ってくる少女は、空中を自在に移動し、壁に貼り着いたと思えばその瞬間、勢いよく飛びノノの目の前の骸骨を、持ってきたのだろう傘で貫いたのだ。


貫いた途端に広がるのは炎の渦。瞬く間に骸骨は焼け落ち、ノノの目の前から脅威が消え去ったのだ。


「ーーー!エルダ!なんでここに……っ」


「話してるよりその剣、私に貸して!ノノの命は絶対に無くさせない!はぁぁ……!」


「エルダっ!まってっ……」


ノノが手を伸ばすより早く、落ちてる剣を足で上げ手に取り、その勢いは炎により加速する。加速した剣は触手から放たれる骸骨を五体ほど一気に殲滅させ、軽やかな動きは触手までも利用する。

触手に剣を刺し、自身を触手の勢いを利用して一気に上にあがれば、抜かれた剣先は奴の本体の頭部を狙っていた。


「ぁ…え……える………」


「あの奴、なんという動き……素人じゃなく、あのような動き……正しく……」


私服同然なのにも関わらず、華麗な動きで捌くエルダ。

剣先から炎が纏い、封印の魔物を貫くその姿は、ノノが見ても正しく『ヒーロー』だった。



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