表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/51

28話「力という名の悪魔」


エルデ・アナストラルが命令をした後、学園の屋上に向かって行った後の頃ーーー私、エルダは学園を走り回らなきゃいけないのに、歩くことしか出来ませんでした。ミミさん達は食事をとるために学園の生徒が集まっている場所に向かって行きました。まだ結界は開けていません。


私にも、役目があるのに……そんな自分が動けないのも、段々慣れて来てしまってる自分が嫌いです。動かなきゃ、だめなのに。


星空。どこまでも綺麗な空に視線を送ってしまう。いつまでも、私を優しく見つめてくれるのは星空だけだ。


自分は信用されるのかな、そんなことを考えて……救った後はどうなるのかなと考えると怖くなる。誰かを救うことって難しい。


でも、小佑さんの命は実際に無くなった。私が命をかけてもいいかもと思える仲間の一人が奪われて、私に手を伸ばしてくれた人は涙を流した。


向き合わなきゃいけない。努力と、勇気と、自分のけじめにーーー



ーーー思い出せ、今の自分に至るまでの過去を。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ここからは、私ーーー『エルダ』がどうやって生きてきたのか、知って欲しい。


昔から動くことが大好きな私は、いつも外で遊んでいて、いつも笑っていた少女だったと思います。


私はこの『上級学園ディスパリティ』に来る前からずっと、責任から逃げてきました。


原因は、私自身の幼少期に体育大会で私は皆を圧倒的に凌駕するほど、ものすごい働きをしました。リーダーとして様々な競技を『感覚』でこなした私は見事に優勝したのです。しかし、みんなから私に向けられたのは『どうして私の方が頑張ってるのに、あの子ばっかり注目されるの』、でした。私の力というのは、誰かの努力を蹴落としていたのです。それを知った時、私のトラウマのひとつが生まれてしまいました。


学園に入ってから私の運動神経はそれまた素晴らしいと言われていて、部活動では常にトップでした。私自身、何も努力なんてしてないのに、色んな人は私を羨ましそうに見つめてきました。そんなに見てもなんにも出てきませんよ!!って言いたくなるくらいです。


学業はもちろん、課題、そして授業態度、全てが私は周りから『過大評価』されてきたんです。元気っ子だったので、みんなを引っ張っていくことが多かったです。


でも、私は涼しい方が好きでした。自分だけに集中したかったし、なによりみんなの方が努力できるって信じてました。なんで私の方が頑張ってるのにっていう視線が、怖かったんです。

なので、リーダーの仕事や役割というのは全て私はやりませんでした。「あなたがやればいいのに」、何回も言われてきました。


「エールダ!おはよっ!今日も気持ちいい朝だねー!!」


「……ノノ、おはよっ!私朝苦手だからな〜……まじねむーって感じ!」


友人のノノ。私の唯一と言っていい親友であり、ほかの友人よりも友達としての付き合いが多く、なにより私の中身を見てくれていました。

羨ましい、とは言っていましたけど、それでも笑いかけてくれたのがノノだったんです。


「ふふっ、たしかにねむそ〜!ほらちゃんと起きてっ?私話したいことあるのっ!ほら!」


「わかってるよぉ〜……でも眠いっ!ってか、なんか今日近くない?それに話って?」


「それはねー……なんと!エルダ!私ね!衛兵の試験に挑戦することになったんだ!」


それを聞いた私は驚きました。ノノは昔から、ずっと衛兵になりたかったんです。何度も何度も衛兵の募集貼り紙を見ては目を輝かせて、ずっと夢だと私に語ってくれていました。


そのノノが、ようやく試験にチャレンジする権利を得たと聞けば、私も嬉しくなっちゃいました。


「えっ!?よかったじゃん!ずっと入りたいって言ってたもんね!おめでとー!試験って、大変そうだけど……」


「ふっふっふ、私も18歳になったからねー!試験は面接と、実技試験があるの。あくまでコミュニケーション能力があればいいらしいから、学科はないとか!ラッキー!!」


ノノはいつもの三倍は嬉しそうにしていて、私も自然と笑顔になっていました。ノノの夢が叶えば、離ればなれになる。けどそれ以上にノノが夢を叶えることが嬉しい。


「筋トレとか!もちろん能力の調整もばっちり!ここでは出せないけどねっ。楽しみだなぁ……夢の世界だよ!」


ノノは毎日トレーニングを欠かさずしていて、私よりもずっと努力している。


それを知ってるからこそ、私はここまで喜ぶ彼女を見ると微笑ましいんです。

ただ、やっぱり一部の友人からは否定的な意見も多いようでした。


「でも衛兵になったら、ノノは…………やっぱり、背中を押しきれないよ……怖くないの?ノノは……」


「んーもう!またそうやって〜!大丈夫だって!前も言ったけど、絶対死にます!とかじゃないんだから!」


私はでも、心配の方が強かったんです。衛兵は、それほど過酷。どうしても背中を押しきれない部分がありました。


「ねぇねぇ……それほんとなの?衛兵って……なれば最後、半生を戦闘に尽くさなくちゃいけなくて、命まで無くなることがあるって……」


後ろからノノの友人だろうか、話しかけてきた女子グループがいた。直接的な否定ではなく、あくまで間接的な否定だろう。

それは私も聞いたことがあった。衛兵になるということはつまり兵士として一生を過ごすことを容認するということ。


ーーーどんな相手が来ても、その命が尽きるまで戦わなくてはならない。


「……うん!大丈夫!そんなのわかりきってるって!それを聞いた上で、私は人を守りたい!だからいいのっ」


でも、ノノは違ったんです。覚悟が決まっていた。死への恐怖よりも、誰かのためにという心がノノにはありました。

ノノは心配している女子達にも、笑顔でグッドと指でしながら返しています。


ーーーもし、このまま衛兵になれば、ノノが死んでしまう可能性がある。でも彼女はこんなにも夢に向かって突き進んでいる。



その背中を、後ろで見ていた私は、親友を失う恐怖と共に、やっぱり背中を押したくなっていました。


「ね!エルダ!今日もさっ私の動き見てよ!一発で受かりたいもん!放課後、ねっ?」


「えっ、私……そ、そんな……やっぱりもっとプロの人とかに見てもらった方がいいよ〜」


「なぁに言ってんの!そこらのプロより完璧で、優しいエルダのこと、頼らせてよ!お願いします!この通り……」


私は常日頃から、ノノの戦闘訓練に協力して、実力試験のためにトレーニングに付き合ってました。ノノの動きも日を重ねるごとに良くなってきてる、私から見ても……と、考える度にまた上から目線で見てると自虐しつつも、私は断る事は出来ませんでした。


夢に向かってこんなにも突き進む彼女に、私の私情を挟む場所はないとわかっていましたから。


「も〜仕方ないなぁ……特別だよ?昨日みたいに、乱暴なステップは挟まずに考えた動きで……」


時間と共に流れる私の青春は、ノノを中心に少しずつ明るくなっていることを自分でも理解していました。


ノノのためなら、できるだけサポートしよう、命をかけるほどなりたいのなら、私は背中を押すことが大事なのだろうと、思っていました。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「はぁっ……はぁ、こんな感じ?はぁ、いやー……緊張するなー!」


「ノノなら大丈夫だよ、明日も」


気づけば次の日が試験。私はこの日、ノノに付きっきりでトレーニングしていた。ノノは学力は高い。でも、戦闘経験や大一番の場面に遭遇したことは少ないのだと思う。

私はできるだけ教えた。やれることはやった、それで十分だ。そう、夕暮れ時で空き地で練習し終わった私は思っていた。


「ありがとう、エルダ。エルダのおかげだー!苦手なことも、全部挑戦できたのはエルダのおかげ。仲間がいるって、こんなに嬉しいことなんだね」


「も〜何言ってるの!まだ試験は終わってないんだから……ノノはこれからでしょ?」


「なんかさぁ……嬉しい。感謝なのかな、エルダのおかけで、衛兵になるの辛いかもって思っても……前向けたの」


「ノノ……」


空を向いて、見上げるノノから出た言葉に、私は見開きました。学校では弱音一つ吐かずに衛兵を目指していたのに、この瞬間、彼女は初めて弱いところを私に見せてくれたんです。


「……死ぬのとか、受からなかったらとか、怖いこともある……でもそんな時に、そばに居てくれたエルダに、感謝したい。ありがとう、エルダ」


その瞳は、涙と共に夕日で照らされて……輝きが見えました。そんな笑顔に、私の口からは自然に言葉が出てしまって。


「……っ、う、受かるよ!ノノは強いもん……!信じてる!ノノのこと!」


「ははっ、ありがと!エルダししょーが言うならバッチリだ!頑張るよ!」


そんな温もりの空間に、手を重ねて頑張っての気持ちを込めて手を握れば、二人で笑い合いました。


これがノノと、心から笑顔を交わした最後だったかもしれません。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


衛兵の実技試験は、討伐対象の殲滅と、その中にいる要救助者のフリをした衛兵を外に連れ出すこと。これが、大きな課題です。


要救助者の人数は何人もいますが、助けることが恐らく全てじゃないことは、教えるために予習した私にもわかりました。


魔物や精霊などが住みつく場所で、いかに連携して救助するのか……それはノノが当日に来た衛兵志願者とのコミュニケーションによります。


「ノノちゃん、頑張ってるかしら……エルダも志願したりしないの?あなた、ノノちゃんに教えられるくらい強いらしいじゃない」


「やめてお母さん。私そういうタイプじゃないし……!まだ能力だって少ししか出てないもん……」


「それはノノちゃんも、でしょ?それにしても、能力が完全に出てないのに大丈夫なのかしらね〜」


私は家で母と会話を交わしていました。

私たち人類が能力を発現するのは中学部に入る頃、言わば思春期に入る頃です。

私は既に炎が出せましたが、ノノは自在に操るほどの能力の使い方をまだ覚えていません。多少は使えるものの、私は能力よりもフィジカルに視点を置いていました。


心配もあります、実戦経験が少ないノノ。ほんとに大丈夫かなと、この時の私は感じてました。


嫌な予感は、私をいつも苦しめます。それは、この時にも……


『速報、第二高山地に強力な魔物が出現、それに伴い多数の精霊も出現しています。衛兵でしか手に負えない強力な魔物です。近隣の方々は避難を……』


ニュースだ、山の近くに住んでる人達というのは大変そう、


































第二……



















































高山地……























































私は、勢いよく家を飛び出しました。ノノの試験本番の会場であるーーー第二高山地へ。

長文ご覧いただきありがとうございました!よろしければブックマーク、評価、感想の方モチベーションになりますのでよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ