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3話「希望」

意識が、暗闇から呼び出される。知らない記憶が、目に映る。


「僕は宣言しよう……この世界に宣戦布告し、全てを無にする。そして君たち無様な人間共に制裁を!無欲である証明を!英雄という名の恥を!全てを終わらせようではないか!」


夜の街、光るビルが立ち並ぶ中、七階建てのほどの建物の上にいる少年は世界の脅威へと変貌していた。

夜景は残酷なものになっていた。窓が割れ、電気だけがついているビルがほとんどである。

立つ少年の下には、たくさんの武器や防具を揃えた者や人間ではない別種族などが大勢いる。


多数の人間が、立つ少年を睨みつけている。それと同時に、怯えている。殺したい。が、殺せない。


「……僕に対してその目はなに?酷いなぁ。僕は制裁を与えているんだ。君たち人間がいかに愚かか。そして無様かを!なのに僕を侵害するその目付きはなんだ!」


同時に手を勢い良く振り下ろす。世界に亀裂が走る。


「下がれ!よけろぉぉぉぉ!!!」


誰かわからない男が叫ぶ。その瞬間、少年の真下から正面のビルまで、大地が大きく割れ始めた。数人が、亀裂の下に落ちて行ってしまう。


亀裂のそばにいる武具を着る女性、彼女もまた少年を睨む。


意識が、暗闇に戻される。


「ふざけるなよ……『無』の権限!エルデ・アナストラル!」


そして、その少女の叫び声を聞いた後、誰かの記憶から遠ざけられてしまうのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「……ぁ」


意識が戻った。目は少しづつ開き、視界のぼやけがなくなっていく。白い天井、ありがちな模様の壁を見る。自分はどうやら保健室のベットの上らしい。

この学校の保健室のベットは2つ、対に置かれている。あまり広い訳では無いのでベットと、薬などを入れる棚に机がついている便利用具しかない。


体を起こし、周りを見渡す。自分の体を確認してーーーーー!?


ここで自分の異変に気づいた。あれだけ蹴られて、傷つけられた腕にかすり傷1つも無くなっているのだ。


「なん……で……」


そもそも、あの子はどうなったんだ。誰かが助けに入って、自分を運んでくれた……?


様々な考察を浮かべている彼だが、そんな時間もドアが開いた音により中断される。


「あ!起きてる起きてる!おはよぉぉ!!」


金髪の女性は保健室のドアを開けてこちらを見ると、輝く目でこちらを見つめている。そしてもちろんスマイルと手を振るのは相変わらずだ。


「もー心配したよー!下駄箱集合なのに、突然全然違う方向に歩いて行っちゃうんだから!」


少し不機嫌な表情に変わると、近づきながら話してくれている。


「それで付いて行ったら、あんなボコボコにされちゃっててさ!言ってよ!そのくらいー」


顔を膨らまして誰でもわかる不機嫌な顔。彼女は雰囲気すら、その美貌な顔で解決してしまうのだ。


「……すいません。巻き込みたくなかったんです……それに、あれが俺の生きる理由というか……意味というか……」


無唯斗には、この生活の中で必要とされる瞬間というのは、あの時しかないのだ。それに対して他人の人生を巻き込むなど、あってはならない。


「だからその!俺のことは心配しなくぅっ……」

「はい、考えすぎ」


決断した答えを言おうとした瞬間、ほっぺたが金髪の女性の左腕の人差し指に押される。

少し力強く、言葉が詰まる。それに彼女の目線は、真剣な眼差しへと変わっていた。


「君はさ、もう既に人の心配が必要ない領域を超えているよ。君の心は手を伸ばして、助けてって言ってるよ?」


見えもしない心の話をし始める。そんなわけない。助けてなんて言うわけがない。他人を巻き込むくらいなら、自分が全部背負う方がよっぽどいい。


「そんな君が、我慢せずに笑ってる姿を見て、辛い現実すら少し忘れて私と話してくれた。そんな姿見たら……助けたくなるに決まってる!」


頬に伸ばしていた左腕の人差し指が緩くなり、次第に離れていく。


彼女の瞳は真剣な眼差しから、次第に熱くなっていく。右手は強く握りしめて、震えている。心から心配してくれているのだ。


確かに、一緒に学校へ向かったあの時は何も考えず話に夢中になれた。だが、それは夢中だったからで何も関係ない、はずなのだ。


「誰かに、そうだ。衛兵とかに助けを求めなかったの?」


衛兵、というのは大昔。人智を超えた戦争の終結とともに作られた人類を守るための兵士。それは個性豊かで、それぞれちゃんと力があるらしい。この学校にも、謎の戦隊ものの衛兵が見張っている。


「言いましたよ。けど、そんな細かい問題は自分達の仕事じゃないって。断られましたよ」


助けを求めなかった訳では無い。だが、結局雇われているからこそ、春の父親にでも止められてるのだろう。そして、断られた時に理解した。こんな自分の問題など、他人が関わる必要などないのだと。


「あなたはの周りの存在は、それほどまでに……酷かったのね」


酷い、のか。酷いのかすらわからない。日常なのだから。考えたこともなかった。

無唯斗の表情は、少し暗くなっていた。


「私に任せて!もうなんでも頼ってよ!私が全部見てあげる!友達だもの!」


自分の胸を誇らしく叩き、笑いながらそう言った。

友達...友達なんだ、自分は。こんな友達、いた事あったっけ。


「……ありがとうございます。けど、本当にだいじょう……ぶ……」

「大丈夫じゃ、ないでしょ?」


彼女は優しい視線を突然送ってくる。

声に震えが生じる。巻き込まない。助けなどいらないと、あれほど考えていたはずなのに。

今更なんで、こんな震えなど。この震えの原因はなんだーーーー


「ぁ……だ……い……」


ーーーそれは、涙だ。久しく感じた優しさに対しての涙だ。何も無い自分に、送られてくる優しさに、自分の心はここまですがろうとする。


「大丈夫よ。あなたのためなら私、迷惑でもなんでも受けるけど?」


彼女は自分の手を握った。優しく、暖かい。


「もう、無理しなくていいの。なにも、与えなくても生きていいの。笑っていいの。泣いていいの。友達と、家族と、色んな人と話していいの。そうやって、幸せになっていいの。ね?」


彼女は許す。彼が笑うことを。友達と関係を築くことを。泣くことを。怒ることを。彼が、幸せになることを。


「問題が起きたら、みんなで解決するの。1人じゃないのよ。君はもう。それと、笑いましょ。今日から積極的に!」


笑顔がなにかするというのか。笑顔になることの、意味なんてあるのか。頭の中に、当たり前の考えが出ないほどに、涙を流す。


「笑顔は幸福の元!これ!覚えておいてね!だから...今だけは泣くことを許すよ」


そう言うと、無唯斗のことを抱きしめる。暖かい体で、冷えきっていた、傷ついていた、悲しんでいた体を包み込む。


「……っ!うぅ……!」

「あなたはもう……ひとりじゃないんだから」


彼女の胸の中で、少年は泣き叫ぶ。それは今までの辛い経験を、吹き飛ばすくらいに。心を癒される。まるで地獄でも見てきたかのように。


「希望」が、生まれた気分がした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ところであなたの名前……聞いてなかったですね、」


すっかり泣き止み、ベットに座る無唯斗は、隣に一緒に座っている金髪の女性に今までなぜか聞いていなかった名前を聞く。これだけされては名前ひとつ聞かずには帰れない。


「私?私はね……」


聞かれてこちらを向いたと思えば、なぜか悩み始めた。なにか気に触ることでも言ったのだろうか。いや、名前だけで?


「んーっとね、女王様!」

「……え?」


聞き間違え?それに近いような名前を必死に考える。しかし、思い浮かぶはずもない。


「……じょーだんだよー!私は有村ありむら のぞみ。ただの高校生よ!」


決めゼリフを言えたかのように、片腕を斜め後ろに上げ、もう片方は片目を覆うように、厨二満載な渾身のドヤ顔をこちらに向けている。

その顔を見た無唯斗はクスッと笑う。


「望さんなんですね。僕の名前は神無月 無唯斗です。よろしくお願いします」


もはや、日本の伝統的な風習とも言えるお辞儀を丁寧に望へ。


「なんか、私がアホみたいじゃない...」


不貞腐れたように顔をふくらませる。なにか聞こうとすればブーイングが待っているのがわかる。だが、その顔を見た無唯斗は笑いながら、


「すいませんっ……なんか、こういうの初めてで……ッ」


ツボに入っている無唯斗に、驚く彼女は、そっと微笑んでいた。


「そういえば!敬語はやめましょ!やっぱり距離感感じるのー!」


近づいて、キラキラした目付き。彼女はこのテンションが日常なのだろう。


「わかり…………わかった。よろしく……」


恥ずかしそうにモジモジしながらも、敬語を外し答える。そしてそれを見た彼女は大笑いし、無唯斗は必死に止めようとするのだった。



会話が弾んではや15分が経とうとしている。


「そういえば、傷はどうやって治したんですか?」


結局、敬語が外れることは今回は断念していた。そして聞きたかったもう1つの事。明らかにおかしい傷の治り具合。


「あー……えーっとですね……」


望が急に目を逸らし、焦りを見せる。疑問を浮かべている無唯斗。そんな彼に届くのは当たり前でもなんでもない、


「魔法……みたいな!?使いました!」


非現実的な回答であった。

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