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23話「誰かのための盾」


「ひひっ!あいつまたこけてやがんの!もう俺についてこれるやつはいねーのかよー!」


あれ、俺……体貫かれて。


体が浮いたような感覚、潰れそうな体に、見える景色はーーー


「こら小佑!またあんた弱いものいじめをして!何回言ったらわかるの!」


「え〜だってできちゃうのは仕方ないだろー!遊んでやってるんだって!おら!どうだ〜!」


「うぅ……や、やめて……」


ーーー昔の俺だ。

普通人間が能力を発現するのは中学生ほどだ。でも俺は、小学校低学年の頃には盾が使えた。


そんな俺は他の人よりも能力という点では優れてる。でも、使い方は誰より劣ってた。

今も、弱いものをいじめていた。盾で、壁と挟んで潰そうとしてる。拷問と変わらないじゃないか。


「やべっ!先生きた!逃げろ!ひひっ」


もちろん強いやつに付いてくるやつは多い。俺は友達が多かった。

けどそれは本当の友達なのかは、わからない。この時の俺は、力に浸かっていた。


家に帰れば、俺と同じ茶髪で、長い髪に優しくだれかを見つめる瞳の母ちゃんが俺を優しく迎えてくれた。


「小佑?宿題はやったの?遊ぶ前にちゃんとやらなきゃだめよ」


「はーい母ちゃん!あとでやるって〜!」


「……そう、あとでやるならいいわよ。最近友達と仲良くできてるの?」


「あ、あぁ……うん!できてるできてる!めっちゃ仲良いんだぜ!友達がいない奴とも遊んでやってんだよ!」


「そう、ならいいわ」


俺の母さんは、優しかった。いつも、俺がやること全てを許してくれた。俺は、その優しさに甘えてばかりだった。


ーーー俺は、自分の頭の中をさまよってるのか。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「一条くんが……自殺しました」


俺がいじめてた奴が、自殺した。

何回か同じクラスになってからの事だった。原因は俺だ。その時の俺は目を見開くことしかできなかった。


なにも付いていないはずなのに、見えない血に塗れた手を見つめて、悲しみなのか自己嫌悪なのか、それは本当の憎悪なのか、単なる同情なのか、わからなかった。


「一条って、あいつに虐められてたやつでしょ?可哀想、あいつ人殺しじゃん」


「おい聞こえるってっ、殺されるぞ……もっと聞こえないように……」


本当の友達は、誰一人いなかった。みんなが俺に着いてきていたのは、俺の力が強かったからだ。


もちろん、相手の親からこちらに様々な訴えや、いろんな人からの批判も来た。

でも母ちゃんは、なにも俺に言わなかった。


「……母ちゃん、俺……」


「なに?ご飯ならもうすぐだから。もうすぐそんな贅沢できなくなるから味わって食べてね」


キッチンで、昼ごはんを作る母ちゃんに、俺は我慢できずに話したんだ。


「……俺、母ちゃんに隠して……いじめて、あいつを追い詰めて……」


「……そう、本当なのね。ならいいわよ、もう話さなくても」


また母ちゃんは俺に微笑んで、そうやって俺を優しく許した。

わからなかった、人を殺したのに、許せる事じゃないのに、


「母ちゃんはっ、なんでそんなに……もしかして見捨ててーーー」


「今までのことが間違ってたって、分かればいいの。人はみんな間違えるもの。私だって、お父さんだって、小佑だって。間違えて初めて成長するのよ。お母さんは、小佑がこれから先、ちゃんと良い子になるって信じてるもの。理由なんて、母親ですからで十分」


母ちゃんは、俺のことを見捨ててるわけじゃなかった。全く逆だったんだ。

俺を、一番信じてくれてた。


「母ちゃんっ、でも俺っ……どうしたら……」


「小佑が、迷いに迷って答えを出したらいいの。お母さんがしなきゃいけないのは、その背中を押すこと」


母ちゃんはしゃがんで、俺の手をゆっくり掴んで、ぎゅっと力を込めれば、優しく包み込んできた。

俺の手は、もうボロボロだった。


「いい?小佑…………あなたの手は、血で汚れてるかもしれない。でも、人は誰でも、やり直せる。でも手の血は、自分で拭き取らなきゃいけない。そのハンカチは、他の人から貰わなくちゃいけないの」


「…………誰かのために、動かなきゃいけない」


「……そう、それがわかってくれれば……お母さんはいいわ。その方法も、手段も、これから考えて、考えて考えて、成長すればいい。お母さん、小佑の成長した姿、楽しみにしてるからね」


微笑みかけてくれる母ちゃんに、俺は涙を流したんだ。

そんな姿を遠目に、俺の頭の中に流れる景色は赤色に染まる。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


いじめ事件があってから、すぐだった。

この世界で、『魔界戦争』というのが始まって、この世のものとは思えない動きと、力を持ってる『権限者』ってやつらが、一斉に争い始めたんだ。


「ーーーそんなに早く能力が開花したなら、きっとこれからの戦力になるもの。それに美味しいに違いないわぁ……」


どこから聞きつけたのかわからない。けど、俺が能力の開花が早かったことを狙ってなのか、俺の家の周辺の住宅地、そして俺の家までもがあの『アルビア』に焼き払われた。


炎の渦が周囲の人間、家、大切なもの全てを包み込む中、俺は必死に……母ちゃんを探してたんだ。


「母ちゃん!母ちゃん!ぐぅっ!…………っ!」


「い、いぐな゛っ……ご、小佑……」


目の前に居たのは、本当に血に染っていた父ちゃんだった。それでも、俺は止まれなかった。


ーーーこのままじゃ成長した姿を、見せられないからだ。


「……ごめん父ちゃん……父ちゃん!衛兵がっ!衛兵が来るから!母ちゃん見つけないと……」


ゆっくり歩んでく先、そこに一つの影があった。

ーーー倒壊した瓦礫に、下敷きになっていた母ちゃんだ。


「…………小佑……あなたが学校に行っていてよかった……頑張って、人のためにって動けていて……よかった」


「ーーーっ!母ちゃん!母ちゃん!!そ、そんなっっ……衛兵が!来てくれるから死なないでっーーー」


「ほんとうにっ……えらいわ……ほんとうにっ」


俺は炎に包まれた家をかいくぐって、燃える音と共に、ゆっくりと、挟まれていない唯一の手を、ゆっくり俺に添えてくれたんだ。


「んふふ、さて。目標の子供っていうのはどこかしら?確かこの辺りのはずなのだけどね……」


後ろから聞こえてきた声に、俺ははっと振り向けば、炎の奥には『アルビア』、この周囲を焼き尽くした張本人がいた。

まずいって、本能が言っていた。でも、母ちゃんは動けそうにない。


「か、母ちゃんっ……まだっ、まだ俺の成長したとこ、見せれてなぃっ!」


俺は必死に、瓦礫をどかそうと手を動かした。救いたくて、後ろから父ちゃんが突き刺される音と悲鳴が、鳴り響いても止めなかった。


「……みたかった。でもね、お母さんは……ここから動くのも、すごく時間がかかるの。きっと甘やかしすぎた天罰。だから……最後に一つだけ、小佑に伝えたいことがあるの」


「いやだぁっ!最後はやだ!母ちゃん!母ちゃん!!」


「あなたの力は、人を守る『盾』。強い人は、弱い人を守る使命があるの。誰かを許して、誰かを守れる……そんな運命を受け入れられる人に……なって」


「いやだあ゛!いやだぁぁぁぁああああああ゛あ゛あ゛!!」


「ーーー愛してるわ、小佑」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ーーー何かに襲われた。それだけは覚えている。

少年の瞳に写っているのは、暗闇の中の炎。

そこには赤い液体も混ざり、淡々と燃えている。


それを見て少年が感じることは暖かさか、苦しさなのか、それ以外のなにかなのか。


「弱い子の味は美味しいの。だからあなたの命と血を分けてくれないかしら?答えて欲しいのだけど」


何も無くなった。家族は皆殺しに、全て何もーーー


「少年。遅くなった」


青髪の、衛兵が俺の前に現れたんだ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「…………ぁっ」


そんな見たくもない記憶から、ゆっくりと輝きが小佑を包めば、意識はぼやけながらも瞼がゆっくりと開いていく。

見えずらい、けど目の前で心配してくれる者がいることだけは理解できた。


「小佑さん!しっかり!大丈夫ですか!?」


「コスケ!起きた!」


明梨とミミが駆け寄る中、後ろに見えたのはエルダで、炎の剣から広がる円が、小佑を治してくれているらしい。


「……起きたか。アルビアはこいつらのおかげで消えた。分身体とはいえ教会の中はよく殲滅できたと思うくらいだ」


アルが腕を組みながらさっさと立てと視線で送ってくるのがよくわかる。どうやら小佑のせいで皆に迷惑をかけてしまったらしい。


「うっ、わ、わりぃな!ほんとに迷惑かけちまってよ〜!これから恩返しをーーー」


「ーーーなぜ泣いている?」


なんとか無理にでも立ち上がろうとすれば、明梨やミミが駆け寄ってくれて、支えありで無事に立つことができたと思った、その瞬間だった。


ーーーアルに指摘された、涙が小佑の頬を一滴落ちたのだ。


「…………なんでもねぇ、とも言えねぇ。母ちゃんのこと、フラッシュバックしたんだ。やっぱりアルビアは倒さなきゃいけない。俺の夢も、母ちゃんの夢も奪ったんだ」


「そうか。ならとっとと行くぞ」


「ちょっと神無月無唯斗!もう少し情というのはないんですか……彼が今一番頼りにしてるのは、あなたなんですよ?」


小佑が涙をふいて話した言葉を、アルは何事もなく立ち上がって教会を去ろうと扉へと歩もうとする。そんな無情なことはさすがにないだろうと明梨が止めるが、アルの頭の中にはそんな余裕はなかった。


「神無月無唯斗、小佑さんと同じくあなたも帰ってきてからの様子が変です。アルビアに吹き込まれましたか?それとも殺す気にでもーーー」


「ーーーだまれ!!僕は……迷っている。これからの進む道が、もう誰かに決められた道じゃないことを」


「なに言ってんだよ……?お前……」


「アル……?こわい顔……」


ミミがそう吐くように、アルの頬には涙でもない、汗が何滴も垂れていたのだった。

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