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20話「変幻遊戯」


「老婆が人の体を貫けるわけが無い?ふはははは!!甘いわい小僧。恩を痣で返す?そんなもの甘えた精神の言い訳よ」


「ぐはぁっ……!ぁっ……かぐっ……ぁ」


「これは派手な登場じゃないか……アルビア?」


小佑は貫いた腕が思いっきり引き抜かれれば、傷穴から血が吹き出し、ゆっくりと後ろにいる明梨へと倒れてしまう。


ジェノスが何事も無かったように目の前の老婆と話す中、アルは目の前で起きた一瞬に、目を見開きながらも、その光景に衝撃を覚える。


「小佑さん!しっかりしてください!!アルさん!すぐにミミさんの時と同じように……!」


明梨は涙目になりながらも、なんとか手で倒れる小佑を支えれば、アルを願うように見つめてきていて。


ただ、それにアルは応えられそうにない。今アルの目は、小佑を心配するよりも先、目の前の老婆から視線が離れない。


見開く目、それは相手を睨むよりさらに強く相手を恨む目。誰よりも影を作りながら、少しでも気を緩めた自分を恨むと同時に、老婆へとその怒りの矛先は向いた。


「あたしゃ……疲れてるんだよ。何かと思えばワープゲートを通った男がいると聞いてな?分身体のあたしがそう言うなら答えは一つ……『無』の権限者がいると考えればこりゃ驚いたさ。こんな甘っちょろい人間が、なーにが残虐だよ?」


「ふっ……『ティーン・アルビア』、私はこれで失礼するよ。あまり戦争に絡むより、見ている方が好みなタイプでね」


「アル……ビア…………こ、小佑さん!!」


エルダは呟くようにそう言えば、同じように衝撃に目を向けるミミの手をぎゅっと握りしめる。


「ジェノス……あんたにゃ興味無いよ。とっとと帰りな。あの『お嬢さん』のとこにさ。しっしっ」


老婆は払うように手を動かせば、ジェノスは勢いよく飛び、教会の中心へと降り立った。どうやら見ていることしかしないというらしい。


「あんたほんとに権限者かい?その甘さは捨てた方がええよ。いずれあんたを地獄の底に落とすーーーっ!?」


「ーーーっ!!!」


相手が話終わるよりも先に、アルは一瞬にして拳をアルビアの顔へと向かわせた。怒り、またはそれ以上がアルの拳をさらに早くすれば、アルビアは老いていながらもアルの速度に追いつくように杖を拳に当てて止めていく。


「…………あんたかい。エルデ・アナストラルってのは?その目、そうらしいねぇ……っ!」


アルビアの質問に答えるよりも先に、アルはさらに一歩踏み出せば、腹に拳を当てるために一気に腰をひねり、横から拳を突き出した。


それに対しアルビアは、杖が少し輝けば、魔法陣のような小さな円が杖を一瞬で包み、アルが殴ろうとする方へ移動、手に持たずとも勝手にアルの拳を止めて行く。


ただ、それだけでは止まらない。アルは一瞬にして目を細めれば、再び動かせる腕を顔面へとの伸ばす。アルビアはもちろん杖をワープさせてーーー


「飽きた」


「ーーーっ!?」


アルビアに届いたのは下からの蹴り上げ、そしてそれに追撃するように飛び上がれば、拳を思いっきり顔面に当てて、一気に扉の外へと吹き飛ばした。


「…………小佑。任せろ」


「す、すまねぇなっ……ごっ……こんな、ことなるなんてぇっ」


「……っ!喋らなくて大丈夫です。ゆっくり、ゆっくり休んでてください……」


アルが手を向ければ、あくまで応急処置だが、傷口はゆっくりと塞がっていく。しかし、貫かれた穴は完全には塞がっておらず、明梨は心配そうな目でアルを見つめる。


「あくまで相手の魔力操作をしているだけだ。永遠に治せるわけじゃない。それに、もう小佑の魔力は……」


「そんなっ……それじゃあ……魔力が尽きたら……」


「…………小佑は死ぬ」


それを聞いた瞬間、明梨は片手で口元を覆いながら、驚くように目を見張っていて、アルもそれしかできない悔しさと共に唇を噛み締める。


ーーー今できる最善策は?あの老婆の速度的にもまだ起き上がってこないはずだ。体内の魔力変換、つまり魔力の供給があれば……


「コスケ!!アル!ほんとに、助からないの……?ねぇ!アル!」


ミミとエルダが遅れて到着し、ミミはアルにどうにかしてもらえないかと必死に腕を揺さぶるが、小さく「だまれ」と言い返せば、ミミもピクっと止まってしまう。


「……ぁっ……ぁ、あの!わ、わたしっなら……私の力は、正義の炎です……それなら、正義の心がある彼になら、魔力供給できるかもしれません……」


しかし、その空気を変えるもの、それはエルダだった。

エルダは震える足と共に、アルと戦った時とは違う、あの時よりも一歩踏み込んだようになんとかアルに伝えていて、しかし、やっぱり動けそうにはないが、


「ーーーっ!すぐにお願いします!エルダさん!あなたにしかできないこと!信じてます!……私たち、仲間ですから。絶対、あなたができなくても責めたりしません!」


「…………っ!は、はぃっ!やってみます……!クローズドオン!」


エルダは明梨の目を見つめてその信念と、優しさも混じった感情を読み取れば、ゆっくりと手を動かして詠唱する。


その詠唱と共に剣を教会の地面に突き刺せば、小佑を包み込んだ炎は優しく、暑さを感じないもので、まるで包まれる感覚を皆に与えていく。


「これで、しばらく時間がかかります。権限者……あ、アルさん、でしたっけ?時間稼ぎ、頼みます」


「わかった。明梨さんもここで待っててくれ。絶対僕のところには来るな。死にたくなかったらな」


エルダに任されたそのアルの目ーーー心配ゆえの、念を入れた冷酷な目で、明梨とミミを抑えれば、アルは炎の奥へとバックジャンプしていく。


「これで、小佑さんの治療に専念できます……!大丈夫ですからね!私、頑張りますから……!」


「そうかいお嬢ちゃん」


優しい炎に包まれる中、聞こえてきたのはアルが行った方向とは別方向、教会の天井から聞こえる声。


なんだと明梨、エルダ、そしてミミもはっと上を見上げれば、そこに広がる景色に皆口を開けてしまう。


ーーー十体にもなった老婆のアルビアが、天井に張り付き、こちらに不敵な笑みを浮かべていたのだから。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「こ、こんなのミミ無理だよ!アルで手一杯だよ!?」


「でも、私たちもいつまでもアルさんに頼っている場合じゃないです。エルダさんの話が正しければ、この後アルビア軍と衝突するんですから」


「そ、その前に死んじゃいますよ〜!私の手が空けば、なんとか抵抗しますけど!蘇生が……は、反則〜!!」


「ほっほっほ、自分の弱みにつけ込まれたことの罪をあたしに押し付けるんじゃないよ!さぁやるでな!!」


余裕の表情から、五体ほどが一気にエルダや明梨目掛けて突撃してくる。杖からは小さい魔法陣が出ていて、そこから紫に輝く閃光の光弾が飛び出てくる。


ぐっと力を入れた明梨は、その天井へと手を向け、輝きの花を開かせて、


「ミラーサファイアレンス!秋桜の銀華!ドゥード!」


銀色に輝く秋桜が、一気に花を開けば、光の反射で光弾は次々に散らばっていく。

しかし、散らばっただけでアルビアには当たらない。五体もの老婆が狂人的な笑みをしながら降り注いでいてーーー


(動けない明梨さん、そしてミミさんも抵抗する術はない。なら、私しか可動できる人間がいない!やるだけやってみるしかない……)


「ーーーはぁぁぁあ!!」


エルダは指していた剣を引き抜けば、手で剣を回転させ、ブーメランのように投げると相手の横一列に並んだ陣形を崩して、さらに帰ってきた剣は再び構えられる。


相手を崩すことはできた。ただあれはあくまで攻撃ではなくちょっかいをかけただけだ。なら、有効的な攻撃手段ーーーあんなにも分かりやすく空中に華が咲いているではないか。


「明梨さん!合わせます!とにかくその花たくさん出してください!龍剣!!鏡の炎舞!!」


明梨にそう伝えれば、明梨はとりあえず何をするのか理解しないまま、目を開いてうんと頷けば、幾つもの花を空中に展開させていく。


エルダはそれを見れば輝く花に剣を振り投げて、同時に炎を剣に纏わせれば、指先を剣に向けて操作する。操作され、反射していく剣は空中を切り裂いていき、また花に反射、反射、反射と、何度も跳ね返りながら空中にいる十体のアルビアほぼ全員に斬撃で絡むことが可能となっていた。


「す、すげー!!エルダ、そんなのできるのー?」


「いえ!思いつきですけど!ミミちゃんは後ろに…………」


ーーーあれ、動けてる。


自分でもわからなかったこと、その瞬間に時間が止まったように目を見開いた。

今まで動けなかった自分。でも、今回はなんの躊躇いもなく……動けた。

違うもの……それは、弱さを受け入れてくれた相手を守りたいという、温もりからなのかもしれない。

ヒントが、そこにあるならーーー


「ミミも…………お、おじさん!!ぼーっと見てないでミミ達のこと助けてよ!!」


思考を回すエルだと共に、時間は動いていき、ミミが指をさしながら叫ぶ先ーーーそれはジェノスだ。

先程から腕を組んで傍観することしかしていない彼は、緩く笑みを浮かべる。


「たしかに、権限者がこれで止まってしまっては私の目的も果たせなかろう。ジェル、少し手伝いでもしてあげなさい」


「…………了解しました。マスタージェノス」


緑色の髪の女性ーーージェルと呼ばれた、言わば秘書のような、エルダとミミの相手をしてもらっていた女性は、命令をされると、手に持つ手帳に、なにか文字を書いていきーーー


「ーーー私の元へ、大義の元、四刑軍集を命ずる」


何か言って、手帳のページを一つ引き裂いてしまう。

目を白黒させるミミは、視線を上にあげればその変化に口を開いてしまう。


「な、なにして……あ!エルダ!アカリ!あれ!」


「…………っ!!」


その引き裂きと同時に、四体のアルビアの肉体が半分に裂けて消滅したのだ。





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