18話「出鱈目なパーティ」
「改めて!ミミの名前はミミ・クロウエア!ミミってよんでいーよ!」
「ミミちゃん!私はエルダって言います!エルダ〜って呼んでくださいっ!」
先程からミミとエルダはウキウキで話していて、どうやら意気投合したらしい。それを母親のような目で見つめる明梨、そしてちょっと心配そうな目で見つめる小佑がいる。
「なんだか歓迎会ムードだけど……とりあえず!俺は中村小佑!よろしく!ま、友達何人いてもいーか!」
心配した目は一瞬にして笑顔に変わり、いつもの気の変わりようを誰でもわかるように表情で説明してくれた。
「で、横のこいつが……権限者様ってわけだ!ちょっと機嫌悪くすること言うと怒られるから気をつけてな?」
「だまれ。僕はそもそも仲良くなろうとなどしていない。勝手にしろ」
「って言うけど、ミミのこと助けてくれたりしたもんねー?ちゃーんとあの魔術師とも戦ってくれたし!」
「だまれ、だまれ。だまれ!」
紹介にしては雑だが、相手もそこまで仲良くしたいとも思わないだろう。何人もの仲間を殺した男だ、こんなもんでいい。
ミミは声を荒くしたアルにくすくす笑っていて、その表情を見ると警戒が薄れてしまいそうになる。
こんなところでいつまでもいる訳にはいかない。早く進まなくてはいけないのに。
「ふふっ……で、結局私たち……どうしたら出れるんですか!権限者倒せばいいんですか!?」
「そうだ、エルダさんが言ってた、『魔』の権限者って……」
「あ、はい!私が見たものは……あなた達と戦っていた人と同一人物だと思いますが……」
この雰囲気もあってか、エルダは笑顔を見せていた。同時に震えていた足もまた、少しずつだが震えが止まってきている。
エルダは思い出したように、自分が見たものを考えながら会話している。
確かに、考えればエルダが言っていたものーーー
「ーーー『アルビア・ニヒル』……」
「待ってください。私たちがコロシアムで戦った相手は……『テトラ・アルビア』と言っていました。名前が違います。偽名を名乗っている、ということなのでしょうか……」
アルは考えるように片手を顎に添えながら、ぼそっと空気に乗せて喋った。それに合わせて、明梨は情報のそれ違いに気づく。
「偽名だとしてもよ?じゃあなんで『アルビア』の部分は被ってんだ?そこも適当に変えちまえばいいのにさ?」
「……私が、衛兵本部で見たのは女性です。ですが、吸い込まれる直前に居たのは……」
「男!男だったよ!エルダと見たのも名前も違う!ミミ頭使うのムリ……」
全くの別人、の可能性が高いが被る部分も多い。ミミが頭を悩ませるのも分からなくは無い。
権限自体も『魔』と被る点がある。能力、そしてワープゲートに入る直前に聞こえた謎の声。
その思考がアルの中で回っていけば、考える姿で停止してしまう。
「男性と女性、体が二つあるということでしょうか……だとしたら、権限者は常に二人いることになります。それだとこちらに勝ち目は中々ないですよ……学園の周りの結界も未だに解けてないでしょうし……」
「いや、僕の考えでは二人いる可能性は少ない。恐らくだが、世界に選ばれた権限者は一つの役職につき一人だ。僕の他に『無』の権限者がいるならなにかリンクしていてもおかしくないはずだ」
「じゃあ一体なんなんですかー!二人じゃなくて、三人、四人といたらキリがないですよ!脱出しようにも倒すことが脱出キーだとしたらもう無理です!!」
エルダが落ち着きのないように言っているが、それは本当だ。あの実力が複数体居て、その一人一人が協力されてはキリがない。
結局、ここでは決めつけることしか出来ない。
ならば、せめて真実がわかると確定している場所……
「ーーー教会に行くぞ。もしかしたらなにか掴めるかもな。僕は最初から教会を目指していたんだ」
「確かにそうだな!そういえばそうだったそうだった!行こうぜ!教会教会!」
「きょーかい?」
エルダとミミはあまり理解が追いつかないようだが、最初からアルの目的は教会である。
そうと決まれば、止まっていた足を動かして、ゆっくり道なりを歩き始めた。
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アル一行はうっすらと見える教会らしき建物の屋根を目印に、死体が木に刺さっている道をひたすらに歩き続けていた。
歩き始めは遠いと思っていた道も、気づけばもうすぐと言った距離まで近づいてきている。死体が刺さっていた木も、気づけばほとんど見なくなっていた。
「らーんらーららーんらーららーん」
「ふふっ、ノリノリですね〜。ノリノリなれるような道では無いはずなのですけど……」
なんでここまでグロテスクな道でミミはそこまでノリノリになれるのか理解できないが、淡々と歩むよりはましだろう。
ある程度はミミやエルダにも、教会でアルの秘宝や権限者、そして望の生存確認などをすることを説明した。
「おい!なんか見えてきたぞー!あれ教会じゃね!?ほんとにあったんだな!」
気がつけば視線の先、そこには黒く染まった柵のように一つ一つが金属でできた扉に、赤いレンガの柱と一目でわかる入口があった。
「確かに、教会……ですね……早速入りましょう。こんな気味悪い森、私はさっさと脱出したいので……それに」
「それにー?」
「望が生きてる。そのことも詳しく聞きたいものですから。その男とやらに」
明梨は真剣な眼差しのまま、先導するようにどんどん門の扉を開けていき、金属音が鳴り響きながらも、ゆっくりと開いた扉へと進んでいく。
「え!ちょっと!待ってくださいよ〜!早いぃ〜」
「アル、行こうぜ…………アル?」
アルは教会の前で、目を細めて考えていた。
ーーーこのワープゲートを通ってから、教会までがあまりにも単調、そして順調すぎる。何かあるのではと警戒を解くわけにはいかない。
「…………なんでもない。行くぞ」
「ビビってんのか〜?権限者様なら大丈夫だって〜」
二人もゆっくり門をくぐれば、しばらく歩くとそこには教会に入る大きな扉があった。
教会も柵に囲われており、どこか不気味な赤レンガと、蜘蛛の巣が張っている窓。あまり使われていないようだった。
「アル〜!はやく〜!」
「早く行きましょう。私も、真実とやらを知りたいです」
明梨、ミミ、エルダの三人が扉の前で待っていれば、先に入れと言わんばかりに、特にエルダは少し怯えるようにミミに片手を添えていた。
ーーー有村望の生存確認、そして秘宝の場所、権限者の存在、他にも確認したいことはある。
はぁ、と一呼吸置けば、ゆっくりと木製の大きな扉を開いていき、音が教会の中に響いた。
「わぁ……すっげぇ……」
「ひろー!!こんなとこ学校にあったんだー!」
ミミと小佑が驚くような反応をする。それもそうだ。
この教会は一階しかない。しかし天井は非常に高く、座席も両サイド四つずつの計八つになっている。
そして中央にあるのは教会唯一の窓、そこから入る光が教会の真ん中にある少量の段差と、中央の赤い道を照らしているのだ。
「はぁ…………望み通り来たぞ!さっさと僕の前に現れろ!」
アルは少し歩いて中に入っていけば、一呼吸して大きな声で例の男を呼ぶ。
第二都市での戦いの決着となった男。その本人がいなければ話にならない。
ここまで進んできた道も、戦いも、なにも意味をなさなくなる。
しかし、そんな心配を消し去るように一つ風が吹いて、アルの背中から教会へと吹けば、同時に聞きなれない声が響いて、その景色を変化させる。
「ーーーよくぞ来た。エルデ・アナストラル……!私も君に会えるのを楽しみにしてたよ。ようこそ、私の教会へ」
「なっ…………!」
アルの景色に居なかったはずの、黒き真実の男が、その教会の中心に立っていた。
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