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17話「青春の情景」


「これは……学園の中……」


エルダは『魔』の権限者が率いるガラとの戦いの末、自身を否定するような言い文に乗ってしまった結果、ここ、『上級学園ディスパリティ』へと飛ばされてしまった。


正直、自分を見失っていたと今になって思うことがある。ただ、そんな後悔を……何度もしてきたのに、また考えている自分がいる。


「……私は、また…………違う、クロエ先輩はまだ生きてる!それに、この学園にあいつがいる可能性が高い!それにどの道あいつは来る!警戒させるのと共に探さなきゃ……!」


『無』の権限者の時とは違い、今回クロエは生きている。

ならば、もう後悔しないためにもすぐに見つけだして助けなければ。


「あいつが一番居る可能性が高い場所……生徒さんが多いところかな……噂の調査がてら、とりあえずここを散策しないと、なんにもならない……」



そう言いながらゆっくり立ち上がって、辺りを散策し始める。


ーーー一番生徒がいる可能性、懐かしいようなこの場所。


「よりにもよって、私の出身校なんて。これまた縁があるのかなー……コロシアム?それとも……体育館の方が近いし人がいるか」


記憶を辿りに、エルダは懐かしい風景に目を取られてちょっと寄り道したりしながら、ゆっくり体育館へと向かっていく。


「校舎……こんなだったかな。私ここら辺だったな〜」


校庭から校舎に行けば、懐かしいこの場所に目を取られていて、今より若い頃の自分ははっちゃけていたななんて考えているうちに、右に、左に、懐かしい物を見つけてしまう。


「わっ、ここも!ここもだ!変わってないなぁ……こんな建物あったっけ?いや、こっちも!あったあったこれこれ!」


テンションが上がってしまい、左右から上や下までも懐かしい感覚に目を輝かせながら、結局気づけば教室が並ぶ場所まで来てしまって、生徒達にも見られていた。


「なにあの人、不審者?」

「これ先生に報告した方が良くね?結構ヤバそうだし」

「うわ、剣とか持ってるよ?やばいって……」


周りがざわついてきてしまって、なんでかと思えば見たら初等部、つまり六歳から十二歳ほどの子供がいる校舎に来てしまったようだ。


確かに、『魔』の権限者のことを知らさなくてはいけないのに、このままでは追放されてしまう。


「いやいや!私は違うんですよ〜!いや、ちょっと君触るなっ!ねっ!待って先生にはちょっと報告しないでよ〜!」


ーーーぐだぐだ。子供達の好奇心はすごすぎてもはや私ではついて行けません。まずい、このままでは不審者として追放されてーーー


「ーーーちょっと!何騒いでるの?席に戻りなさっ………………エルダ?」


「すとっぷすとっぷそーりーそーりー…………って……」


エルダが見開く先にいた、その教師は背はエルダと同じく少し低めだが、水色の髪の毛はさらりと長く伸びていて、瞳も水色に煌めく、海のように輝く丸い目に少し笑うと満面の笑みになる口元、細い眉毛に…………


「…………エルダ!久しぶり!元気だった?何してるのこんなとこで!」


ーーー目の前に現れたのは、私が忘れられない同級生、『ノノ』だった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「いや〜びっくりだよ!まさかこんなとこでまた会えるなんてさ〜!私、体育教師になったの。驚いたでしょ〜?」


私はこの学園時代の同級生、ノノとの再会を果たした。それは同窓会のような輝かしいものではなく、ワープゲートで飛ばされた先で偶然会ってしまうというものである。


その場の生徒たちはなんとかノノが抑えて、教室に皆引き返せば、私たちは懐かしい風景と共に体育館でキャッチボールをしていた。


「そ、そうだね……驚いたよ、ほんとに。元々運動神経良いのは知ってたけど、教師やってるなんて考えなかったよ流石に……」


「えへ〜でしょでしょ〜!そっちは……変わらず、衛兵してるんだ?ほんとに学生の頃は全くそんな風になるなんて見えなかったのにな〜」


「そ、そう……だね、私も……思ってなかった」


ボールは何回も返ってきて、返してと繰り返しているが、会話はそうもいかない。


私はどうしても、気になることがある。そのせいか、会話に余力を割くことができず小声で、弱々しい返ししかできていない。


「ふふっ、なんでそんなたじたじなの〜?言いたいことあるなら、はっきり言ってよ〜」


そんな返しをしていれば当然相手からは不審に思われて、相手はにやにやしながらも私の周りをくるくると歩きながら前に進みつつ、私に図星を突いてきた。


ーーーなんで、そんなに明るく接することができるの。なんで、そんなに何も思ってないように振る舞えるの。


「ほら、そんな考えてばっかりだと、ゴール取られるよ〜!」


「…………ぇっ?あ、ちょっと!!」


考え事をするように体が止まっていると、ノノはボールを手に取って、ドリブルを軽く見せれば、勢いよく後ろのゴールまで走り出した。


キャッチボールから唐突にバスケットボールに変わったが、それでも体は自然と走ってくれる。これが、衛兵で育んだ肉体反射なのだろう。


「おそいおそい!ひひっ!こうしてると、学生時代を思い出すなぁ〜!それっ!」


「ーーーっ!」


しかし、相手は日常から運動している体育教職であり、先に走り出したノノは素早く、一瞬にしてゴールの前までドリブルすれば、ステップから天に向けて手を伸ばし、ボールをその先に送り出す。


ーーー逆光が、ノノの姿を強く輝かせた。汗が一つ落ちたことすら、輝きで見えるほどに強く視線が集められる。


「ふぅ〜!やっぱバスケは楽しー!唐突なのに、いつの間にか追いつかれそうだったし、エルダは流石の衛兵の身体能力って感じだね!」


気づけばボールはゴールに入っていて、一滴落ちそうな汗を腕で拭き取れば、にっこりとこちらを見つめてくるノノがいた。



ーーーそんな、純粋な瞳が私を傷つける。自分が悪いとわかっているはずなのに、気にしてるのは自分だけなのか。


疑問と罪悪感、二つが同時に襲ってくる私は、その笑みに笑顔を返すことができなかった。なんならば、心配するように歯を食いしばりながら見つめることしか出来ない。


「なんで……なんでノノは……私が何をしたか忘れたの……?」


突然自分が言ってしまったこと、漏れた言葉にハッと気づけば口元を押えるが、それは遅く、相手の耳に言葉は届いてしまった。


相手はそれを聞くと、ぴくりと体が止まって、私の方を向くとなぜか少し微笑んでいて。


「ーーー忘れてないよ。全然気にしてない、なんて言えない。でも、今の私はエルダに会えたことが嬉しい。だから、今だけは……忘れさせて。お願い」


でも、その微笑みは幸せの笑みじゃない。どこか悲しくて、同時に怒りを何とか隠そうとしてるような、そんな笑顔だ。


「わ、わかった……ごめん。でも、私はっ……ずっと後悔してて、ノノを傷つけるつもりなんて……」


「やめてっっ!!!昔からそう……そうやってエルダは、逃げてばかりだよ……」


「…………っ」


「私は!私なりの生き方を見つけたよ……?でも、エルダは……その才能の使い方、見つけたの……?」


自分が掘り返してしまったことは、わかっている。ただ、目の前にいる彼女を見てるとどうしても、思い出してしまうんだ。


ーーー私が、後悔してる『あの日』を。


「私の……生き方……」


「そう。あの時のエルダは、どこに行っちゃったの……?私より……強いエルダは……?」


ノノは変わっていた。自分はどうだろうか。

そんな思考が周り始めると、汗ばみ、足元が震え始めてしまう。

ノノは次第に真剣な眼差しに変わっていて、こちらをたまに睨むようになるが、抑えているのか戻ったりしている。


「ちがっ……私はっ!……あの時も、ずっとノノを思って……」


「だったら私から奪ったもの、後悔しないでよ。エルダは衛兵になって、後悔しない生き方ができてる……?」


「ーーーっ!」


思い返せば、自分はいつも動けなかった。変わらなかった。

なんならば、後悔して、今も必要のない深掘りをしてしまっていたじゃないか。


辛い、逃げたい、そんな言葉ばかり浮かんできて、何一つ解決策が浮かんでこない。


「は……はは……ははは……」


笑うことしか、できなかった。何を言っても、恐らく相手を傷つけるだけだ。


ーーーみんな、どうしてそんなに勇気が出せるんだろう。


わからない、わからなかった。


「エルダ……?私も、少し責めすぎたかも。ごめんなさい。やっぱり、許せないのかもしれない。私も、後悔してること、エルダを巻き込んじゃったこと、いっぱい謝りたかったのに」


ノノはゆっくりと近づいてくる。しかし、私の足は動かない。


「元はと言えば、私が原因だから。エルダはそんなに思い詰めなくていいって、言いたかったのに…………私たちって、またもう一度仲良くなることってーーー」


「ーーー先生!コロシアムに!!変な人がいっぱい殺してて!」


ノノが少し申し訳なさそうな顔に変わって、私の肩をそっと掴みながら、謝ってくれた。その謝罪を素直に受け入れて、相手が言ってくれようとした言葉にも素直に従おうとした瞬間だった。


生徒の一人だろうか、体育館の扉を勢いよく開けて、焦った表情で入ってきて、緊急事態だというのを一目で理解させる。


「コロシアム……?エルダ、もしかして……あなたがここに来たのって……そいつ……」


「……うん、そう。私も、行かなきゃダメなんだ……お互い、変わらないところもある。私も、どっか変わってるといいな」


私に言えることは、そんなことだけだった。

ノノと再会したこと、それは私の心に深く刻まれる。


私はそのまま、走って、コロシアムに行った。

ノノの表情を見る余裕は、なかった。ただ乱暴に走って、コロシアムに行って、



ーーー私の記憶は、ここで一旦途絶えていた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「私はその後……あなた達を目撃して、きっと同じようにワープゲートに巻き込まれたのだと思います……ごめんなさい、必要のないことまで語っちゃって……」


「いいえ、大丈夫ですよ。ありがとうございました。辛いことも、あったんですね」


座りながらも数分間一人で語っていたエルダに、同情するように優しい目で見つめる明梨。ミミもまた同じように心配しているのか、エルダの服をぎゅっと掴んでいた。

小佑やアルもまた、少し同情しながらも、アルは耳だけを傾けるように腕を組んで木に寄りかかっていた。


「なにがあったのかは、語る必要が無いので……話さないでおきます……!悪いのは自分なので……」


エルダは涙目のまま、暗く、落ち込んでいるのが目に見えるほど暗い雰囲気を出していた。

昔になにかあった、誰が見てもそれだけはわかる。


「……私たちは、仲間です。ここを脱出するまででもいいです。話したくなった時、いつでも言ってください」


「っ、仲間……?仲間って……襲ったのに受け入れてくれるんですか……?」


「私も、多分ミミさんも、後ろの小佑さんも断ることはしないと思います。問題は、あの後ろにいる最低さんですけどねっ」


にっこりと笑顔を見せて、手を差し出す明梨。


ーーー明梨にとっては、その手は、望、そしてアルやミミ、小佑に助けてもらった時と同じように差し出す手。


相手がどうなど、明梨にとっては関係なかった。


その手をそっと握るエルダは、少しだけ笑顔を見せて、


「ーーー二級兵エルダ、まだまだ精進しますっ」


軽いステップで立ち上がった。



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