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15話「再会と再来」


アルは今、突如として現れた衛兵のエルダとの戦闘を強制的にさせられている。アルとエルダの戦いは、森林の方へと続いていた。


「はぁぁぁ!!」


「ーーーっ!」


エルダは上手いように木を使い、足場にしていけば、森林をハイエナのように動きだしていく。


アルは視界に何とか入れようとするが、その速さと動きには視界だけで限度がある。


ーーーならば、空気を読み取り、聴覚、触覚を最大限に伸ばさなくてはならない。


エルダは何度も後ろ、そして横からも高速で剣を振っていく。その素早い動きと、剣を振った瞬間に森林のハイエナモードに戻り、追いつけないようにする動きは相手を殺しに来ている。


アルはそれに対して何とか『無』の空間を合わせて、時に片腕で飛び上がれば、相手に空中蹴りを当てていく。


「まだまだ!炎剣は止まらない!」


「くぅっ!まだ来るかっ!」


蹴りを当てられたエルダは大きく吹き飛ぶが、何本かと木を支えに、足で木の表面に着地すれば、勢いそのままにこちらに飛んでくる。

アルはそれに合わせて、しゃがみこむと、手を地面に着けて、下から上へと足を伸ばして、剣が届くより先に、エルダの腹へ蹴りをぶつけた。


「ぐはぁっ!?」


エルダはその蹴りに再び吹き飛ばされれば、何とか空中で体制を整えて、しかし勢いはそのままに、地面に受け身をとる。


「ちょっと!エルダさん?でしたっけ?アルさんは……私たちを助けてくれた人です!落ち着いてください!」


「あなた達こそ!私の仲間をこいつは何人殺したと思ってるんですか!私の仲間を、友人を何人も何人もっーーー!」


すぐ後ろにいた明梨が、なんとか説得しようと近くに駆け寄るが、差し出された手を払ってでも、どうやらアルに殺気を向けるらしい。


「それが、衛兵の顔なのか?エルダ。お前はやっぱりほかの衛兵より一段成長していない。僕が殺すまでもない」


「ーーーっ!あなたになにが!私のなにがわかるんですか!強さしか取り柄のない私の何が!」


「それだ。お前はその強さを盾に、逃げる言い訳にしてきたんだろ」


相手は、強い。しかし、その強さしかないのだ。きっとそこには理由があるのだろう。ただ、今アルには見えてることを伝えることしか出来ない。


「…………っ、なんで、そんなこと私にっ……」


「お前は強い。だが、僕には心は弱いと見える。実力でねじ伏せるよりそっちの方が早い。いいから教えろ。どうしてお前がここにいる?」


アルは手を構えて脅しながらも、冷酷な目でエルダを見つめる。ただ、エルダは図星をつかれたような顔で、どこか悲しい顔をしていた。


ーーー昔の自分を見てるようだ。それが、アルをここまでイライラさせる原因の一つになっている。簡単なことを、どうしてここまで理解できない人間がいる。


「ーーーアルはちょっっとひでぇこと言ってるけど!たしかに協力した方がいいと思うぜ?どうやって脱出するかも目処がないんだろ?なら、俺たちと協力する方がいいぜっ!」


小佑はエルダの肩を叩けば、にっこりと笑顔を見せて、エルダを安心させるように言葉をかけながら、立ち上がるのを手助けしている。


「ーーー私は、先程まで、衛兵の本部にいました。ただ、そこにやって来た奴に、ここに飛ばされてしまったんです」


「ヤツ?それって誰のことー?」


エルダはアルの方を向いて、真剣な眼差しをすれば、


「ーーー『魔』の権限者とその一行が、衛兵本部を襲撃、一部を壊滅させて学園に向かいました」


一同が驚くような、先程まで戦っていた相手の名前が挙がってきたのだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「先輩!!大丈夫ですか!先輩っっ!」


「エルダ、一回落ち着け。私も病み上がりなんだ。少しは優しく手扱ってくれよ〜」


「うぅ〜先輩ぃぃ〜!あ゛い゛だがっだ〜!」


ここ、衛兵本部では先の『無』の権限者との戦いで怪我をした人や特異種の治療をしている。

あの戦いで約半分の衛兵はやられ、怪我またはそれ以上の打撃を食らってしまった。

エルダは自分が動かなかった責任や、力を解放したとは言えど『無』の権限者を仕留められなかったことへの罪悪感で泣き崩れていた。

その時、エルダを支えてくれていた先輩であり、深い傷を負ったナルミが起き上がり、エルダは何度も謝罪、そして抱きついている今へと流れていく。


「まぁエルダもよくやったんだから、これくらい許してやってくれよナルミ。先輩の余裕ってやつをぼくちに見せてくれ」


「そ、そんなこと言わず!クロエも何とかしてくれ!エルダっ!私はここにいるから安心してくれっっ!」


犬種の特異種のクロエも、その光景を微笑ましく見ていた。

何日も、悪いことが続いていた衛兵も、たまにはこんな風にラフな時があっていいと、クロエも、ナルミも思っていた。


「クロエさん!そろそろ、会議の時間かと……」


「……ったく、ぼくちの微笑ましい時間を邪魔するなんて、すぐに戻ってくるから、ナルミは頑張って〜」


「ちょっと!クロエ!エルダもそろそろ離れっっ」


「先輩ぃぃ〜!そんなこと言わずにぃっ」


「それがそのっ、今回はエルダさんとナルミさんもご一緒にと……」


ふざけて頬をぐりぐりと体につけていたエルダと、それを離そうとするナルミだったが、会議の招集と聞いた途端に二人ともぴくりと止まる。


「……私たちも、か。わかった。エルダ、行くぞ」


「んぇぇ?なんで私たちもなんですか!ナルミさんはどうあれ、私なんてただの二級兵で……」


「エルダさんは、『無』の権限者に一番接触した衛兵です。能力や研究のためにも、ここは会議に出席して頂きたく」


ナルミは切り替えたようにすっと真面目な顔つきになり、会議室へと歩いていく。

エルダは不満そうにため息をしながら、体をフラフラとさせて歩いていると、ナルミに背中を叩かれ、「あいたっ!?」と叫ぶのだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「第二都市壊滅危機を予防するため、一級兵を早急に帰還させるように命令した。他の都市にも最重要で警戒するように指示しつつ、今回は『無』の権限者に対する対抗策を検討したい」


第二都市衛兵隊の総司令官であるチョーカー隊長は、会議室に並んだエルダやナルミ、クロエとその他ネアやゲンも含めた様々な衛兵と会議を重ねていた。


「エルダ、相手のわかる情報を答えてくれ。どんな力だった?根源はわかったか?」


「…………わかりません、ただ……相手は全てを『無』にできる、それは我々の斬撃や魔法にも効果するのと同時に、自分の傷口、体内の悪質な細胞、そして意識までも『無』にできる可能性があります……でなきゃ、あそこまで何も考えず虐殺なんてできません……」


震える体をなんとか止めながら、エルダは細々と話していく。ナルミがいるからいいものの、いなくては何も出来ない置き物になっていた可能性があるだろう。


「そう、だからなーんにも効かねぇし効いても再生されちまうってことじゃねーかよ。対策なんてあんのか?」


ゲンはやれやれと言った感じでため息を吐きながら、自分だけ知っているような口ぶりをしているが、そこについてはエルダはわかっていることがある。


「……私は、一度『無』のバリアのような殻を破りました。その時の反応は確かに傷を与えていた。攻撃自体は、無意味じゃないかと……」


「それは本当か、エルダ?」


「ぼくちは見てたから、ほんとだと思うよ〜?ただ、それが単純に威力で超えたのか、それともまた別の原理か、ぼくちにはわからないけどねー」



クロエが見ていたと証言すれば、周りは一気に信用したように目線をエルダに向けてくる。それに対して少し恥ずかしそうにしながらも、クロエは続けて、


「もし、魔法もその壁を超える可能性があるなら、ぼくちにも考えがある。恐らく純粋魔法じゃない、別のものが効果的だろうね」


目を細めながら、にやりとなにかを閃いたように隊長に言えば、隊長は理解したように頷いたまま何も言わない。


ーーー恐らく、他の都市でも同じような会議が開かれていて、権限者をどのように倒すかを試行錯誤しているのだろう。私が力になれることはもうない、はやく責任から逃れたい。


そんなことを、エルダは心中で思いながら暗い顔をする。自分の行動が、やっぱり後悔していた。どうしても、動けない。目の前にいると時間がかかってしまう。衛兵としても、やはりエルダはまだまだ未熟だと痛感する。



しかし、そんなことを重く考えるよりも前に世界はまたもや動き出してしまう。




「ーーーみなさん!正面ゲートに急いでください!権限者が!大暴れして、隊長を連れてこいと言っています!!」


突然ドアを勢いよく開いた衛兵

の一人は、信じられないことを告げた。皆その言葉に動揺し、ざわつきが出始めながらも、隊長は勢いよく立つ。


「来たかーーー自分から来るとは、何を考えているんだ……とにかく急ぐしかない。皆、正面のメインホールに急げ!」


その掛け声で、衛兵はとりあえず動き出す。ネアやゲン、クロエも同じように駆け足で出て行ってしまえば、エルダもなんとか行かなきゃと思うがーーー足が、震えた。


「ーーーぁっ、な、なんでっっ……私は……ちがっ」


足が震える中、体までも言うことを聞かなくなり始めていて、自分の意識まで飛びそうになってしまってーーー


「落ち着けエルダ!私は今回も戦えそうにない!体は動かすのが手一杯だ!エルダ、お前ならできる。みんなを助けてやってくれ」


なんとか、ナルミが肩を掴んで、エルダと目を合わせてくれれば、エルダは意識を取り戻し始める。

この期待に、応えたい。それは本当だ。けど、逃げたい。勇気が出ない。助けて欲しいと叫びたい、でもーーー


「わかり、ました……行きます、とりあえず……やれるだけやってみます」


声を何とか出しながら、小走りでメインホールへ走っていく。

自分にしかできないことを少しでもやらなきゃ、そんなことを考えながら、ただひたすらに走って向かうのだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


私にできるのか、そんなことを考えてばかりだ。私が動けるのか、勇気を出せるのか。

ずっとそうだ。私はいつも、力ばかりを過大評価される。

もういい加減慣れてきた。なのに、不安への対応は一つも慣れていない。


駆け足で廊下を抜けていき、一気に加速すればメインホールへとーーー


「ーーーっ!」


「ぎゃぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁぁっ゛!!!」


ーーー魔法使いの衛兵が、メインホールの宙を浮いている。それだけではない、何人もの衛兵が宙を浮いて振り回され、ある人は柱や棒に叩きつけられたり、串刺しにされていた。


なにがあった、どんな原理でこんな事が起こっている。相手の位置、それはーーー


瞬きを一つした瞬間に広がってきたのは脅威の景色だった。


「こんばんは。単刀直入に要件だけ話させてもらうわ。ーーー『無』の権限者はどこにいるの?」


黒く、そしてどこか紫が入ったローブとマント、そしてフードによって顔が隠れた女性。そしてその後ろには無数の魔物と、女性を慕っていると思われる人物が二人ほど、並んでいた。

この場にいた衛兵はほとんど、その軍隊のような相手と、目の前の景色に足が震えてしまう。


「ふむ、ならばこちらの問に先に答えてもらおうか。貴様は誰だ?」


チョーカー隊長が、恐れることなく放った言葉に、魔法使いは一つ


「ーーー『魔』の権限者、アルビア・ニヒル。これでいい?」


相手が放った言葉の強大さに、再びエルダは汗を流した。

長文ご覧頂きありがとうございました!よろしければブックマーク、評価、感想の方よろしくお願いします!

色んな方に見ていただきとても嬉しいです!ありがとうございます!

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