表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/51

11話「明梨」


私は、なにか間違えただろうか。


自分自身でも、何が起きたのかわからなかった。


私は、何を間違えただろうか。


男子グループーーーそれは、私をいじめているグループの一つであった。つまり、いじめの標的は私自身ではなく、私を幸せにしてくれた典子に移ったのだ。


私は、どこから間違えていただろうか。


標的となった典子は、私にそんな側面一つ見せずに笑顔を見せてくれた。時々見せた暗い顔は、いじめが原因だったんだ。


私は、話しかけた時から間違えていた。


この学園の人間は、変わっていない。人間は、自分が不快に思った者に対して軽蔑した視線を送るんだ。


私は、行動に出てはいけない。


わかっていた。この世界に生まれて、教育という面目で様々なものを覚えさせられたこと、教育から逃げ出したこと、そしてこの学園に来たこと。


私は、なにも成功していない。


私の行動は、人を常に不幸にしていたじゃないか。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


私はそれから、典子と距離ができた。

あの冷酷な視線の後、典子は悲鳴をあげて教員を呼んだ。

先生に事情を話す典子の目は、私のことを友人として、見ていなかった。

恐ろしかった。自分が、不幸の元なのではないかと考えてしまうくらいに。

そもそも、男子グループが典子の絵を引き裂いたことすら、信じて貰えたのだろうか。


次の日から、私の生活は元に戻った。

典子は一週間学園には来なかったが、その後自然に戻ってきた。

しかし、私は典子と会うことは避けた。原因が常に私にあることを理解していたからだ。典子といつも移動する時通る道、帰り道、教室の中ですら話すことは避けた。

典子は落ち着くと私に事情を聞こうと数回ほど話しかけてくることがあったが、私は走って逃げた。


立ち向かい続けてきた私は、逃げた。逃げるという『行動』をしてしまったのだ。


私は、心から申し訳ないと思っていた。だから、次は間違えないようにしたいと思った。


「お姉ちゃん?また暗い顔してるよ?どうしたのさー」


「…………望、茶化しに来たなら出て行って貰えませんか」


私は、妹にすら冷たい態度になっていたのだ。

もう、自分と関わることが不幸の原因だと思うことしかできなかった。大切な友人一人守れない私に、希望が生まれることは無かった。


「……まぁ、別にいいけどさ。暗い顔ばっかじゃ、幸せもなにも来ないよ?顔を上げてなくちゃ、幸せの神様も見えないって〜!」


「うるさいです!私のなにがわかるんですか!いいから放っておいてください!」


「ーーーわからなくても、家族が暗い顔して見過ごすほど私もバカじゃないよ。それに、お姉ちゃんが当たってる壁にも、向き合って、抗わなきゃいけないこともある」


妹に叫んでしまった私は、自分の行動に一旦冷静になろうと、頭を抱えたがそれ以上に妹は大人だった。

あぁ、私はこんなにも支えられなければ生きていけないんだ。


「ーーーお食事、待ってるからね」


妹が出ていった。

もう、私の心はぐちゃぐちゃだった。

わかってる、向き合わないといけないこと、謝らないといけないこと、典子の笑顔をもう一度見たいこと。

わかっているのに、私は怖い。


「……どうすれば、私は人を不幸にせず行動できるんですか……どうすれば……どうすれば!!!」


私が涙を落とした手に、一つの輝きが生まれた。


「……これは……ガラス……」


生まれて初めて、自分の能力を理解した瞬間でもあり、私の心を表現したような『ガラスの花』であった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ーーーっ!」


「あ……あ、明梨ちゃん?久しぶり……だね」


私が話す勇気ができたのは、あの出来事から3ヶ月後だった。


ガラスの花の生成から、しばらくは私はガラスの花について調べていた。

能力というのは、『人の本心が現世に現れたもの』というのを知ってから、私は気づいていた。

私の心というのは、こんなにも脆く弱いガラスなんだと。


能力を理解した上で、典子にガラスの花を後ろからゆっくりと気づかれないようにポケットへ渡すことが出来た。

これで、もしいじめられても多少の抗いが、できたらという意味もこめて、手紙と共に渡した。


「……気にしてないよ。明梨ちゃんが思ってるほど……私ね、いい事があったの。明梨ちゃんにとっても!それは!ーーー」


「ーーー典子さーん!はやくご飯食べよー!」


ただ、時というのは私を置いていくもので、典子にも変化があった。

後ろから聞こえた声ーーー典子に、友人が増えていた。


「あ、うん!ちょっと待って!私も行くからー!…………でね!明梨ちゃん!私ね!」


元気よく返す典子、その姿は私が見たかった笑顔だった。


ーーーあぁ、私が話していない間に、こんなにも笑顔で話すようになったんだ。


私と居る時より、自然と笑顔が増えている気がした。


「ーーーごめんなさい。典子さんは友人の方々と、お食事を……また、いつかお話した時に聞かせてください」


「え……今言いたくて……って!明梨ちゃん!?」


私は走った。泣いて泣いて、また、逃げた。

私は決めた。もう、手の届く場所だけ手を伸ばそう。私は、届かない場所まで伸ばしてしまえば、不幸にする。


ごめん。ごめんなさい。典子、ごめんなさい。ごめんなさい。許してください。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「……お姉ちゃん?どうしたの?」


私は、数日間勉強も、家事もしなかった。

怒られた。父様に何度も怒られた。

でも、こんなものは典子に比べたら屁でもない。


「…………望、私は……もう……」


「諦めた?なにもかも。全部辞めちゃったの?このまま全部ダメで、終わりのままでいいの?」


ーーー望は、いつも私の痛いところを突いてくる。

鬱になった私は、諦めたい、そんなことをずっと考えていた。


「………望は、どうして……」


「私、お姉ちゃんがほんとに諦めたことはないって知ってるから。どんな時でも、手を伸ばしちゃう人ってこと、人のためとか私のために色々しちゃうこと、知ってるから」


私は今まで、何度も諦めて、何度も失敗して。


「……成功しなくては、意味ないです」


「そう?お姉ちゃんの行動で救われた人、たくさんいると思うけどな。私とか、市場の人とか!」


「…………っ?」


なにもしていないーーーはずなのに。


「お姉ちゃんは、私を自由にしたくて抜け出した。私はそのお陰で外の世界の人と関われた。規制が少しだけ緩くなった。お姉ちゃんのおかげ」


私は、もしかしたら失敗していなかったのかもしれない。

少しだけこの時思えたんだ。


「お姉ちゃん、立って。立ち上がって、諦めないで。いい?私は、お姉ちゃんのおかげでここまで来れた。ありがとう!大好きだよ!心の底から!」


望の笑顔を見て、もう一度立ち上がった自分がいた。許してくれる家族がいて、こんなにも私は涙を流してしまうんだ。

不幸にしていたと思っていた自分を否定してくれる妹が、とても希望に見えた。


「有村 明梨は、幸せを有します!大丈夫だよ!」


「望……ありがとうございます。私も、もう少しだけ……頑張ってみようと思います」


「ふふっ!よかった。あのさ……お姉ちゃん。外の世界って、どんな感じだった?私だったら、生きてけるかな?」


望は、ふと私に聞いてきた。城の部屋の一室、私の部屋の窓の外を眺める望は私に振り返ってきて。


「……えぇ。私を救ってくれたあなたなら、どこまでも行けます。外の世界は、とても綺麗で美しいですよ」


「そっかぁ……楽しみだな、外の世界」


「望なら、行けますよ。どこまでも、望はだってーーー人の希望になれる、人の希望を作れる、どこまでだって進んでいける素晴らしい妹ですから!」


私は、思ったことを伝えた。ただ、月明かりに照らされて夢を見るような表情をしている望は私の言葉を聞くと満面の笑顔になって








一週間後、この城から突如として消えた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ーーーこれから、死ぬんだ。


私はあの言葉を後悔した。

わかっていたはずなのに、起き上がった自分はまたもや、人をどこか遠くに行かせた。

そして、帰ってきた望は冷たく、無惨な姿に変わっていた。


私が頑張ってなにかをすれば、人は不幸になるのに、行動してしまう自分が嫌だ。


違うんです。神無月無唯斗、私は貴方を恨んでいたんじゃない。


ーーー望を行かせた、背中を押した自分を後悔して責めていたんです。


(ーーー人殺し、妹をよくも)


自分を責める意味でもあった。守ってくれればと思うこともあった。でも、その全ては最後には自分に辿り着く。


だからもう人と関わるのはやめていたはずなのに、神無月無唯斗も望のように、私を変えるように振り回す。



「ーーーごめんなさい、みんな、ごめんなさーー」


「諦めんのは、まだはえーよばぁぁぁか!!!」


光に包まれていた望の前に現れた男、腕を光らせて、地面に付けて、


「再盾!戦擊!!!パートつー!!!」


範囲攻撃、魔法陣は爆発するものもあったがそれだけではない。

悪魔の手、王国にあるような武器、浮遊物体、電撃、炎、色々なものが混ざっている。


しかしそれを、一撃で吹き飛ばす男がいた。


「ーーー人生まだまだこれからっすよ!先輩!」


中村 小佑。男は息を荒く、足を震わせながら盾を展開して、一人の皇女を救出した。


長文ご覧いただきありがとうございました!よろしければブックマーク、評価、感想の方よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ