異世界へ
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幼少期に両親が亡くなったため、しばらくの間妹と一緒に叔父の家で暮らしていたが、僕たちが小学生になると叔父が妹に手を出そうとしたため妹を連れて家を出た。その後、近くの交番に行き、おまわりさんに事情を説明するとおまわりさんは私服に着替えてから叔父の家に向かった。
叔父の家に着くとおまわりさんは小石を窓ガラスにぶつけ始めた。数秒間、それを続けていると叔父が家から出てきて顔を真っ赤にしながらおまわりさんを殴り飛ばした。その直後、おまわりさんがニヤリと笑った。おまわりさんは懐から警察手帳を取り出すと叔父にそれを見せた。それを見た叔父はその場から逃げようとしたが、おまわりさんのスリーパーホールドによりダウンした。その一部始終を少し離れた場所から見ていた僕たちはほっと胸を撫で下ろした。
叔父は公務執行妨害で逮捕され、僕たちはおまわりさんのお姉さんの家に住むことになった。ただし、家事やお姉さんの店の手伝いをするという条件だ。お姉さんの店はそこそこ人気のあるカフェでコーヒーとデカすぎるカツサンドが人気だった。カツがデカすぎてパンからはみ出しているため、手で食べるのは難しいが食べごたえはある。
小学校を卒業するまで妹はいろんな男子に告白されたが全員フッた。そのため女子からは『天使の皮を被った悪魔』と呼ばれていた。
僕たちが中学校に入学してから数日後、妹が芸能事務所にスカウトされた。まあ、僕の妹のかわいさは天使レベルだから当然だ。しかし、いざ現場に行ってみるとなんちゃら号があったため妹が契約書にサインする前にその場から立ち去った。というか、よく考えたらこんなかわいい妹を芸能界デビューさせてしまったら世の中の男全員が妹の虜になってしまうじゃないか。はぁ、僕はなんてバカだったんだ。よし、これからはできるだけ妹を家から出さないようにしよう。妹は中学でもいろんな男子に告白されたが全員フッた。そのため妹は女子から『虚飾女』と呼ばれていた。
僕たちが高校に入学すると妹は学年クラス問わず女子生徒たちにロックオンされてしまった。男子生徒転校も考えたがそうなると満員電車で痴漢に狙われやすくなり、寮があったとしてもそこでも女子生徒たちに嫌がらせをされる可能性があるため護身術を習得することにした。幸い妹は昔から運動が得意だったためその学校のトップになるのに一週間もかからなかった。高校を卒業するまで妹はいろんな男子に告白されたが全員フッた。そのため女子からは『最狂の女神』と呼ばれていた。
ちなみに妹は容姿だけでなく性格もいいため今まで自分につけられた二つ名は全て褒め言葉だと思っている。
「あー、やっと高校生編まで読み終わったー。ねえ、そろそろ本題に入ってもいい?」
「お前は総集編だけ見て満足できるのか?」
「お前って……私一応神様なんだけどなー」
こいつの妹のデータ収集のために資料の作成をお願いしたけど、なんで総集編なのに手を抜かないの。はぁ……これは明らかに重度のシスコンだねー。
「お前が神だろうとなんだろうと僕の最愛の妹を僕の目の前で轢き殺したやつの話なんか聞きたくない」
「だーかーらー、あれは不慮の事故なんだって。というか、轢き殺したの私じゃないし」
「そんなこと知るか。はぁ……明日から妹がいない世界で生きないといけないのかー」
こいつの弱点は間違いなく妹だね。よし、じゃあ、さっそく利用しよう。
「ねえ、もし私が君の妹を生き返らせる方法があるって言ったらどうする?」
「それを先に言え。で? その方法っていったい何なんだ?」
食いつくの早いなー。
「それはねー。コホン……ねえ、そこの君。このプロフィール帳を使って調子に乗ってる転生者を懲らしめてくれないかな?」
「分かった」
「いやいや、もう少し考えて決めていいんだよ?」
「やるよ。それよりお前は僕にやらないという選択肢を与えていないな、なぜだ? というか、今のはなんだ? 定型文か?」
「一つ目の質問の答えは私がそういう性格だからだよ。二つ目の質問の答えは言わないといけないきまりがあるから仕方なく言ってる、だよ」
「なるほど。理解した。で? それはいつから始めればいいんだ?」
「私が君を異世界に転移させた後からだよ」
「分かった。じゃあ、すぐやれ、今やれ」
「君さー。妹以外、全員どうでもいいやつだと思ってない?」
「そんなことはない。ほら、どうした? 早くしないと日が暮れてしまうぞ」
「はいはい。あっ、一人だと色々と大変だろうから天使を一人君に貸すよ」
「は? この世に僕の妹以上にかわいい存在なんているのか?」
そういう意味じゃないんだよなー。
「いたらいいねー。あー、そうそう、その天使、天界で色々とやらかしてる問題児だから気をつけてね。じゃあ、いってらっしゃーい」
「おい! ちょっと待て! 普通問題児なんて選ばないだろ! おーい!!」
大丈夫。天界では問題児だけど君にとっては優等生だから。
「よし、風呂入って寝ようーっと」