ホワイダニット
「にゃーにゃー、パスクール様。ワタシ、ずっと分からないことがあるニャ」
事件を解決しての帰り道でのことだ。
「うん?」
「あのドワールはなんでミスリンさんを殺したのニャ?
恨んでいるようでもなかったのニャ。殺す理由がないのニャ」
「それは、まあブンナゲッタの仕事だな。
尋問であきらかになるとおもうけど。
まあ、想像はできるよ」
「ほー、教えて欲しいニャ」
「ドワールは、清風展に武具を出そうとしていたろう。
金床に作りかけの防具が置いてあった。
あの色合いからみて材質はミスリル銀だと思う。
まあ、清風展だそうってんだから、そりゃ当然なんだけどね。
そこで問題になるのが昨今の神秘金属の高騰だ
「ニャん」
「つまり、ドワールは防具を作りたくとも材料のミスリル銀の調達ができなくなっていたのさ」
「フニャン。そ、それってまさかニャン」
「そう、そのまさか。ドワールは、ミスリンさんが埋葬された後に、掘り出して自分の防具の材料にしようとしていたんだと思う」
「うニャニャニャニャ」
パスクールの言葉にニャミンは絶句する。そして、怖気をふるうようにぶるぶる体を震わせ始めた。
「まあ、あの男からはミスリンさんは、生きているというより、材料が歩いているように見えていたんだろうね。怖い話だ」
「ニャン。そうニャ。怖い話ニャン。
ところでパスクールさん、ワタシ、お腹すいたニャン。晩ご飯食べたいニャン」
「ああ、そうか」
空を見上げると、日はすっかり傾いて、茜色に染め上げていた。
「なにか食べるか。なにが食べたい?」
「豚肉ニャ!」
ニャミンは即答した。
「ほら、ピッガーさんみてたら、なにか無性に豚肉が食べたくなったニャ。ちょうど良い匂いをさせる焼肉屋さんを知っているのニャ。そこ行くニャン」
ニャミンはそう言うと走り出していた。
「彼女にはピッガーさんがどう見えていたんだろうな…… 怖い話だよ」
パスクールは一人つぶやくと、ニャミンを追いかけて夕焼けの下を走り出すのだった。
2023/04/09 初稿




