3‐21
爆音が響く。
炎が上がる。
それも一度や二度ではない、何度も何度も空から飛来した光の弾は、ルクス達がいた場所を纏めて薙ぎ払うように蹂躙しつくした。
「な、にが……?」
隣でエリアスが呻く。
その声を聞いて辛うじて、ルクスは目を覚ますことができた。
全身が痛い、手足の感覚がない。
辺りは濛々と煙が立ち込め、様子をすぐに確認することはできない。
だが、わかっていることが一つある。
音はする。気配がある。
何より放たれる瘴気が消えていない。
魔王はまだ、健在だった。
再度、爆音が鳴り響く。
「空からだ!」
エリアスが叫び、ルクスを庇うように覆いかぶさった。
空から落ちてきた無数の光の砲弾は、ルクス達がいる場所に着弾すると、魔物も魔王も、仲間達ですら構わずに纏めて吹き飛ばしていく。
「何よこれ! なんでこのタイミングで砲撃なんか……何処の馬鹿よ!」
「フィンリーさん!」
立ち上がり怒りの声を放つフィンリーを、アディが触手で捕まえて無理矢理地面に引き倒す。
「あ、危ないです」
「わかってるわよ! 助かったわ!」
ヤケクソ気味にフィンリーが叫んでいた。
「……誰が魔導砲弾なんて使いやがった」
ウィルフリードが限界まで怒りを滲ませた声で、そう呟いた。
流石に彼は戦線復帰も早く、英雄達の次に立ち上がっては再度魔王から生まれてくる魔物達に対処している。
「砲撃……ひょっとして、スコットの……?」
「心当たりがあるのか、てめぇ?」
ウィルフリードがエリアスに詰め寄る。
「た、多分ですけど、昨日スコットに会った時、あいつらなんか機材を運んでたような」
「ちっ、あの役立たず! 殺しておくべきだった!」
なおも砲弾は戦場に着弾する。
ウィルフリードが氷の壁を作ってそれを防ぐが、戦場を覆うには足りていない。
「兵士の大半がやられたな」
辺りに倒れている兵士の数が、先程までの比ではない。
大盾を構えた結界兵達は上空からの爆撃に成す術もなく蹴散らされ、当然歩兵も無事ではすむわけがない。
辛うじて駆動鎧は動いているが、機能に異常をきたしているのが魔物の軍勢を押し留めることすら満足にできていない有り様だった。
今この場でまともに動けるのは、英雄達だけとなっていた。
そしてそんな彼等の猛攻をものともせず、結界から解放された魔王はベオを目指す。
「おい、ルクス! 無事か!」
ベオが自分が危険なことを顧みずに、ルクスを助け起こす。
「回復魔法を掛けるから! 動けるようになったら戦線を離れろ! エリアス、こいつを連れて行けよ!」
仰向けに転がされ、ベオの顔がよく見える。
彼女は自分の手が焼けるのにも関わらず、ルクスに回復魔法を掛けている。
それも一度に大量の魔力を使っているからか、両手が傷ついていく速度がいつもとは比べ物にならないぐらいに早い。
あっという間に肘の辺りにまで焼け付いても、ベオは止まることはない。
それとは反対にルクスの血は止まり、痛みは少しずつ薄れていく。
「もう動けるな? 出血は塞いだから、エリアス!」
「で、でもベオさんは」
「囮になる!」
「そんなの駄目に決まってるじゃないっすか!」
「問答をしているつもりなど……!」
エリアスの息を飲む声。
アディの引き攣るような悲鳴。
ウィルフリードの舌打ち。
それらが同時にルクスの耳を打つ。
結界から解き放たれた魔王の動きは、想像よりも遥かに俊敏だった。
まるで転移したかのように目の前に迫っている。
「……逃げろ……!」
ドンと、身体が強く押された。
突き飛ばされるように、ルクスはその場から数歩分、後ろに下がる。
次の瞬間の出来事だった。
腕のように振り上げられた巨大な泥の塊が、ベオを頭から押し潰した。




