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3‐13

 ルクスのギルドがウィルフリードと別行動を取ってから、三日の時が流れた。

 道中小規模な戦いこそあったものの、その全てに被害を出すことなく勝利し、ルクス達は樹海内に存在している幾つかの村落を回っていた。

 湿った空気、生命力を見せつけるように生い茂る樹木。魔物だけではなく毒を持った生物が闊歩する、まるで人を退けるような樹海。

 その中にある幾つかの村を回ったが、今のところその全てが魔物かもしくは他の原因があるのか、壊滅状態に陥っていた。

 そうやって巡ってきた、この三つ目の集落も同じだった。


「……ひでぇよ、こりゃ」


 エリアスがその場の全員の言葉を代弁する。


「とにかく生き残りを探そう」


 四人はまず手分けして、村の中を捜索する。

 狭い村なので全てを見て回るのにそれほど時間は掛からなかった。

 声を上げても、返ってくることはなく、倒壊しかけた木造の家屋を除いても、無残に破壊された生活の跡が残されているばかりだった。

 一行は捜索をやめて、村の中央に集合する。

 すり鉢状に窪んだその場所は、何かの採掘施設のようだった。


「これって多分、鉱石の採掘所だよな? なんで亜人の村がそんなものを?」


 人間の文化圏では、魔法技術を用いた文明が盛んである。ルクス達も普段の生活の中で、照明や炊事など、様々な場面でそれを利用していた。

 その動力となる魔力を溜め込み伝達させる鉱石の採掘は各地で盛んに行われているが、亜人達はそう言った生活をよしとしていないと一般的には言われている。


「村の施設も古臭いし、魔法技術を使ってる感じでもないよな」

「……多分、そう言うことだと思う」


 ルクスがそう口にする。

 倒れている亜人達の多くには足に枷が嵌められているものがあった。それだけでなく、着ているものも何処かみすぼらしい。

 そして例え魔王の件がなかったとしても、この樹海にある村は絶えず危険に晒されていることだろう。にも関わらず、目立った武器を見つけることもできなかった。精々、発掘に使うつるはしやスコップで立ち向かった形跡があるだけだ。


「この村は亜人達を強制的に労働させるためのものだ。多分だけど、人間の監視がいたんだと思う。だから魔王再誕をいち早く察知することができた」

「じゃあその監視は……」

「逃げたんだろうね」


 一瞬、視線をアディに向ける。

 あの日も、燃える研究所から逃げだしたルクスとアディもそうだった。

 研究者も、ルクス達を見張るためにいた人々も我先にと逃げだした。勿論、彼等が助かることはなかったが。


「……人間にとって、人間でない者達の命なんてその程度のものですよ。アディは沢山、戦場で見てきましたから。最前線でまともな武器も持たされず、使い捨てられる獣人達を」

「でもそれって法律で禁じられてることだろ?」

「戦争の前で法なんて何の役にも立ちません」

「あのウィルフリードという男は、真面目に法に従っているようだ。奴の指揮する軍では志願していない亜人を兵士として徴用することを禁じている。だが、他の場所ではどうなっているかな」


 ベオが採掘所の崖を登ろうとして力尽きた死体を見ながらそう言った。


「敗者の末路だな、これが」

「……敗者?」

「文字の勉強がてら歴史書を呼んだが、この国は元々は亜人達が統治していたのだろう。それを英雄と呼ばれる者達が駆逐し、紆余曲折の末にアルテウルを建国した。数百年も前の話だがな」

「でも、彼等は諦められなかった」


 ルクスはベオに続けてそう口にする。


「だから前回の魔王戦役の時に、僕達人造兵と一緒に挙兵したんだ。魔王の巻き起こす混乱に乗じて、もう一度自分達の居場所を取り戻すために」


 そしてまた負けた。

 今後そんなことが起こらないように人間達は亜人を手厚く保護することを誓ったが、それはあくまでも言葉だけのことだ。

 ルクスは人造兵として、幼いころの旅路でそれをよく知っている。


「こうまでされた亜人達は人を憎むだろう。何かきっかけがあればそれは噴出し、再度人間達に牙を剥く。敗北に敗北を重ねた果てに、最早なりふり構わない形となって」


 ルクスの脳裏に蘇るのは、あの魔獣のことだ。

 彼女こそがまさにそうだった。長年の恨みと、怒りと悲しみを喰わされた人を殺すための獣。


「それって、今回の件がきっかけになるかも知れないってことっすよね?」

「奴等はアルテウルという国家に恨みを抱いている。自分達の土地を奪った簒奪者としてな。そして今回のこの戦い、我々のようなギルドが中心になってことを成せば奴等は知るだろうな、最早王家に力はないと」

「でも英雄がいるじゃないっすか。英雄は、王家の守護者でもあるんですから」

「知らん。だからあくまでも可能性の話だ。奴等が抑止力となって何も起こらない可能性の方が高いだろうよ。……もし」

「もし?」


 ベオの目は何を見ているのだろうか。

 彼女の眼差しの先にある未来を、同じようにルクスが見ることはできない。


「いや、何でもない。それより急がなくていいのか?」

「……そうだね。回れそうな村は一つか二つだし、急ごう」


 急げばその分、無事な人が見つかるかも知れない。

 ルクスはそう信じて先を急ぐ。

 胸中に蟠るベオの言葉を、忘れるように努力しながら。


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