表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/204

子供達の罪と罰

 白い世界に少女は連れてこられた。

 戦災で両親を失った、哀れな子供。

 そこには母親のお腹から生まれてこられなかった子供達がいて、彼等は少女を奇異の目で見ていた。

 彼等からすれば、少女は奇妙だったから。

 少女の目に見た、彼等が奇妙であったように。

 少女は人でなければならなかった。何度も何度も実験を繰り返した末に、『それ』は造られた肉体には馴染まなかったから。

 連れてこられたのは少女だけではない。

 綿密なデータを取って、それらを次に生かすために、何度も何度も儀式を強いられ、失敗した子供達は肉片となって飛び散った。

 血の匂いと、子供達の悲鳴が染み込んだ嫌な空間。

『それ』が何処からどうやってやってきたのかは誰にもわからない。

 ただ、大人達は何かにとり憑かれたように、実験を繰り返す。

 仲良くなった子が連れていかれて、そして帰ってこなくなる。

 大人達は顔色一つ変えず、紙にひたすらにメモを溜め込んでいく。

 帰ってこない友達を待ちながら、少女は泣いていた。


「泣いてるの?」


 膝を抱えて蹲る少女に、そう声が掛かる。

 顔を上げると、そこには一人の少年が立っていた。顔立ちは女の子みたいで、辛うじて服装から男の子であることを理解出来た。

 白い部屋の中で、まるで彼だけが色を持っているかのような綺麗な少年だった。


「……友達が、帰ってこない」

「そうなんだ。友達って、仲のいい人の事だよね。一緒に泣いてあげたいけど、僕にはそれがわからないから」

「どうして?」

「生まれたばかりだから、友達がいないんだ。僕じゃない僕には、いたかも知れないけど。それは多分、もう違う人だから」


 少年の言葉の意味を、少女は理解できなかった。


「もし君さえ良ければだけど、僕と友達になってもらえないかな? 大切な人が欲しいんだ。それを護りたいって、誰かが言ってるから」


 少年の言葉の意味はわからない。

 それでも、彼が少女を慰めようとしてくれているのだけは伝わってきた。

 だから、少女は少年の言葉に小さく頷く。


「本当? やった! これで僕はまた、成功に近付けるかも! ……じゃあ、君は僕の最初の友達で大切な人だから、護ってあげるね」

「う、うん……」


 綺麗な彩色の目が、少女を覗き込む。

 それが、少女と少年の最初の出会いだった。

 彼と出会ったことが幸運を呼び寄せたのか、少女の実験は成功した。

 死なずに実験室から出ることができた少女は、己の生を噛みしめ、大人達に観察されながらも少年と同じ時間を過ごした。

 時間が経つにつれて、少年の妙な発言は影を潜めた。そんなことを言っていたことすらも、もう覚えていないようだった。

 少女だけがそれを覚えていることが、なんとなく誇らしかった。

 そして、あの日がやってくる。

 全てが炎に巻かれた火。

 必死で少年の手を掴んでいたけれど、少女は最後の最後で彼を信じきることができなかった。

 力を緩めてしまった。

 二人の手は離れ、もう繋がれることはなくなった。


 これは罰なのだ。

 外の世界で少女は色々なことを知った。

 自分は普通ではない、怪物であることも。

 少女が背負った『その名』が、人の世では忌み嫌われるものであることも。

 それ故に、もう二度と少年と同じ道は歩めない。

 研究所で盗み聞いた話によれば、彼は『英雄』の道を歩むはずだから。


 ――我慢しよう。


 それでもきっと、幸福なのだと自分に言い聞かせよう。

 少なくとも、ここに居場所がある。必要としてくれる人が現れた。

 それはとても幸福なことだ。忌むべき存在である自分には、それだけで充分だ。


 ――しかし、現実は非常過ぎて。


 少女はまた、居場所を失った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ